今日もみんな涼しい顔して嘘をつく。
『今日の小テスト難しかったよね!』
───簡単だったのに。
『勉強してなかったから点数悪いと思う〜!』
───してるくせに。
『私も〜!』
───同調して。
一見普通にみえる会話?
───他を蹴落とすための嘘。
あぁ…全て嘘にしか聞こえない……
該当するあの人が話しかけてくる。
もちろん、私は柔和を装う。
そんなことない。
自己採点では満点だ。
意図的に可愛らしく笑う。
愛那の表情がサッと暗くなった。
きっと気に入らないのだろう。
そう言い残して、愛那は離れていく。
優華は、嘘をつかない。
どんなときも、正直に話す。
故に、ターゲットになりやすい。
要は、
彼女は自分を偽らない。
私と真逆。
私もちゃんと接したいのに、過去が私を縛る。
また、嘘をつかれ、ありもしない情報を流され、裏切られ。
それが、どうしようもなく怖い。
だからさざなみさえたてず、穏便に今日も偽る。
助けてほしいなんて今は思えない。
巻き込みたくない。
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編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。