優華は、たっぷりと間をあける。
でも、その表情にはさっきの明るさは無く
言うなれば、
戸惑い。
が、占めているようだった。
そして意を決したか聞いてきた。
え?
私は少し返事に時間を要した。
私の声は優華の声に遮られた。
優華の言っていることは正しい。
『いろはは、どうなりたいの?』
『みんなから恐れられたいの?』
『ねぇ?私はそんなこと思わないよ』
私は………
そうだ……きっと
私はいつからか
歩むべき道を間違えてたんだ。
自分を偽れる嘘に酔っていただけだ。
ぽたりぽたりと、涙が落ちた。
優華は優しい口調で私に話しかける。
『もう、嘘をつくのはやめて。』
私は涙を手で拭った。
でもね…
『ずっと』じゃなくても守るって言ってくれて嬉しいよ。
人生において『ずっと』なんて無理に等しい。
これは、私にとって心を溶かす優しい嘘。
これは、優華にとって最初で最後の優しい嘘。
この世は嘘でまみれている。
でも、優しい嘘もあることを知った。
end
次回あとがき⇢
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。