第4話

新しい担当医
593
2018/04/17 14:13
あの事件から数ヶ月が経ち、私の上半身の怪我はもう治っていた。
何度も治療やリハビリをして以前のように動けるようにはなったものの、下半身は何も進歩せず。私は車椅子で入院生活をしていた。

学校の先生からは何度もお見舞いの品やメッセージが送られてきたけど、それに返事をする余裕も勇気もなかった。…私のせいで先輩達にも迷惑をかけたし混乱させてしまった。そんな私に返す言葉があるのだろうか。
…私にはどうすることもできず、ただ弱音を吐くことしか出来ない。
チャニョルと△△は相変わらずお見舞いに来る。△△は生徒会や家の事で忙しいからなかなか来れないけど、チャニョルは毎日のように来るからさすがにこっちが心配になる。

病院の屋上で私の車椅子を押しながら鼻歌を歌うチャニョルに私は問いかけた。
○○
ねぇ、チャニョル
チャニョル
チャニョル
ん?どうした?
○○
学校の課題とかやらなくていいの?いっつもお見舞い来るし。それにずーーっと居座ってるし。
チャニョル
チャニョル
あ〜。それなら大丈夫!
○○
なにが大丈夫なの…
チャニョル
チャニョル
俺のことより、あなたの事の方が大事だから。俺は本気出せば課題なんて速攻で終わらせられるしね?
○○
…お節介だよ。ほんと。チャニョルはそんな器用じゃないくせに
チャニョル
チャニョル
うるさいなー。お前は黙って俺の言うこと聞いてればいいの
○○
バカ。赤ちゃんじゃないんだよ?
チャニョル
チャニョル
赤ちゃんだよー。
…それに、今のあなたには誰かが傍にいないと。でしょ?
○○
……知らない
チャニョルはいつだって私の考えてることとか理解して行動してくれる。いつもチャニョルに助けられてきた。
でも、こんな年になってまで甘えてられないのに。
…ほんとに情けない。
チャニョル
チャニョル
喉渇かない?なんか買ってこようか?
○○
あ、じゃあ…オレンジジュース
チャニョル
チャニョル
了解〜。ちょっと待っててね
車椅子を隅に止めると、チャニョルは小走りで少し遠くの自動販売機に向かっていった。
私はその姿を眺めたあと、ぼーっと空を見上げた。雲が浮ぶ真っ青な空。屋上の花壇に咲いた花の匂いが鼻に触り、私は目を瞑って深呼吸をした。

心が落ち着くはずなのに。何故か不安になる。私、ちゃんと歩けるようになれるのかな。誰にも迷惑をかけずにいられるのかな。

ふと、手首についているミサンガに視線を落とす。上手くいくようにお守り…か。
ギョンス
ギョンス
君…どこか体調悪いんですか?
○○
……?
急に声をかけられて、びっくりして声のするほうを見上げた。
目の前にたっていたのはまん丸の目でぽってりとした唇のはっきりとした顔立ちの男の人。白衣を着ているから…お医者さんなのかな?
ギョンス
ギョンス
暗い顔してたけど大丈夫ですか?
○○
あ、はい大丈夫です。少し考え事してて
ギョンス
ギョンス
あ、そうだったんですね
男の人は目をキョロキョロさせて、また私を見直した。
ギョンス
ギョンス
その服、ここに入院してるんですか?
○○
はい。だいぶ前から入院してます。あなたは先生ですか?
ギョンス
ギョンス
あ、僕は昨日この病院に来たばっかりなんです。
○○
そうなんですか。
通りで初めて見る先生だと思った。
ギョンス
ギョンス
…僕、ド・ギョンスです。
○○
あ、私はあなたです。
ギョンス
ギョンス
あなたさん…あ。もしかして、302号室の?
○○
え?あ、はい…
ド先生はあー、と一人納得しながらニコッと微笑んだ。
ギョンス
ギョンス
僕、あなたさんの担当医になったんです。
○○
え、そうなんですか!
今までイ先生だったのに変わっちゃうんだ。イ先生から何も言われなかったな……。
しかもやっと仲良くなれた先生なのに変わっちゃうなんて結構戸惑う
ギョンス
ギョンス
これからよろしくお願いします。あなたさん
○○
あ、こちらこそよろしくお願いします…
ド先生に深くお辞儀をされて、私も慌ててお辞儀をし返した。その様子を見てまたド先生は微笑む。その笑った口が、ハートの形をしてて、不思議で思わず見とれる。
ギョンス
ギョンス
…どうしました?
○○
い、いえ、なんでも…
チャニョル
チャニョル
あなた、誰この人?
○○
あ、チャニョル
ジュースを両手に持って戻ってきたチャニョル。キョトンとしながら私に問いかけてきた。
ギョンス
ギョンス
こんにちは。今日からあなたさんの担当医になったド・ギョンスです。
チャニョル
チャニョル
ド・ギョンス先生?
ギョンス
ギョンス
はい。
チャニョル
チャニョル
こんな若い先生が担当医?
ギョンス
ギョンス
あ、若いとちゃんとサポート出来るか不安ですか?
チャニョル
チャニョル
…そういうわけじゃないけど
チャニョルはちょっと不満そうにド先生を見る。確かに、若い。私たちと同い年くらいかな?

チャニョルは私にはジュースを渡すと、車椅子を押しながら言った。
チャニョル
チャニョル
じゃ、僕達もう行きます。また。
ギョンス
ギョンス
あ、はい。また
私とチャニョルはド先生に一礼して、その場を立ち去った。

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