病院でぐだぐだ過ごしてるあいだに、もうすっかり外も暗くなってきた。チャニョルは明日学校だし、課題もまだ終わってないだろうし。ちゃんと帰らせないと。
大丈夫だって心配ないって説得しても帰らない時があるから。私が寝るまでずっと横にいるし、なんなら朝起きたらベッドの横で座って寝てる時だってあった。チャニョルもそれは辛いだろうし無理させたくない。
立ち上がって本当に言いに行こうとするチャニョルを、私は袖を掴んで引き止める。
そう言うと、チャニョルは仕方ないな…と納得のいかない顔で頷いた。荷物をまとめて準備をすると、私の頭をポンッと撫でて笑う。
チャニョルは私の髪をクシャッと撫でると、満面の笑みで手を振りながら病室を出ていった。
…心配しすぎなんだよ、チャニョルは。
チャニョルがいなくなると私の病室は急に静かになって、なんだか寂しくなる。いつも居るんだもん。いなくなったらいなくなったで寂しいものだよね。
ブーッブーッ
iPhoneが鳴って、画面を見てみるとチャニョルからだった。
"俺がいなくて寂しくない?ㅋㅋ"
なんてまたふざけたメール。
▪寂しくないよ😛▪
そう返せばすぐに返ってくる返事。
"あっそ😐俺は寂しいのに〜ㅠㅠ"
お調子者だな、ほんとに。
急に横から声が聞こえて心臓が飛びてるかと思った。見上げればド先生が居て、私と目が合うとにっこりと微笑んだ。
いつもいつも急に現れるから心臓に悪い……
彼氏さん?え?チャニョルのこと?
あ、と目を見開いてド先生は驚いていた。
私が笑顔でそう返すと、ド先生は困ったように眉を下げて笑った。その笑った口がハートの形をしてて、ちょっと不思議。
ド先生はカルテかなにか紙にメモをしながら丁寧にお辞儀をして去っていった。
…礼儀正しくて優しい先生だな。チャニョルが言ってたような心配なんて全然ないじゃん。明日チャニョルに心配ないよってちゃんと言おうっと。
ベッドに横になって布団をかぶり考える。今日休んだ分、明日はリハビリ頑張ろう。
目を瞑ってしばらくすると、私の意識は夢の中へと移った。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!