私は短編小説家だ。
と言っても、あまり私の事を知っている人は居ないが…
…話していると悲しくなってくるな、新作の話をしよう。
新作の題名は、「ワスレモノ」という。
記憶を失くした少女たちが自分の記憶を取り戻そうと奮闘するが、4人のうちの3人が死んでしまい、生き残った1人が世界を作り替えてしまう話。
可笑しい話だが、何を書こうとしたのか自分でもよく分からないよ。
それもそのはず、これはボクの夢の話だからね。
内容は少ししか覚えていないけど、ずっと、ずーっと…
幼い頃から見ている夢。
起きると何故か泣いていて、そしていつも同じ───棺桶の中の死人のような格好をしている。
今でもよく分からない夢だが、私が作家になったのも、こういう夢を見るのも、運命なのではないかと思う。
…話は少し変わるが、この小説を見てもらって、さっき編集社から出てきたんだが…
案の定「訳が分からない」と言われたよ…
「夢の中の話だ」と言ったら引き下がってくれたけどね。
…掲載はされなかったけど。
でもいつか短編集を出す時に、この話を載せてみようと思う。
いつか、ここよりもっと優れた世界にいる皆さんにも読んで欲しいな。
さ、早速仕事をはじめようか。
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編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。