一歩足を踏み入れると、そこは異世界だった。
ヨーロッパの貴族の館を再現したような、シックでゴージャスなインテリア。
真っ白なテーブルクロスには豪華な花が飾られ、そこで六人の女子生徒が優雅にお茶を飲みながら歓談している。
呆然とその様子を見ていると、執事のような黒いベストと白いシャツを着た、背の高い男の人がやってきた。
見上げると、目鼻立ちのはっきりした、彫りの深い顔立ちのイケメンがこちらを見下ろしている。
長い髪を後ろで一つに束ねたその姿は、まるでバーテンダーのようだ。
すると、俺たちの間に小さくて可愛らしい男子生徒が入ってきた。
くりくりとした大きな瞳に見上げられて、ドギマギしてしまう。
同じ黒いベストでも、少年のような風貌の彼が着ると、童話に出てくる幼い王子様のように見える。
すると、彼は申し訳なさそうな顔をして両手を合わせた。
そこに、ひときわキラキラした気品漂う男子生徒がやってきた。
明らかにヨーロッパの血が流れているであろう、異国の顔立ちをしている。
透き通るような白い肌と、色素の薄い瞳。
キャラメルブラウンの柔らかそうな髪は、触れてみたくなるような美しさだ。
きれいなヘイゼルカラーの瞳が、俺をとらえた。
きれいなイケメンに見つめられて、口ごもってしまう。
つられて、俺も自己紹介してしまった。
思わず、バカ正直に答えてしまった。
そもそも俺はコーヒー派で、ほとんど紅茶は飲まない。
そんな俺に、紅茶に対する技能や知識があるはずもない。
あまりにも美しくスマートに案内され、少し離れた所に置かれた小さなテーブルについた。
喫茶部にどんな奴がいるのか見に来ただけなのに、まさかここでお茶を飲むことになろうとは。
紅茶を待つ間に、部屋の中をじっくり観察する。
窓のカーテンはヨーロッパ風の豪華なものに付け替えられているし、わざわざ持ち込んだのか、椅子も教室の備品とは思えないシックなデザインだ。
中央の大きなテーブルには、豪華な花が置かれ、いかにも高級そうな茶器と食器が並んでいる。
さらには、おいしそうなスイーツが三段重ねのお皿に盛り付けられていて、もう女子にとっては夢の世界だろう。
はっとして声のした方を見れば、お盆を持った部長さんが丁寧に一礼した。
彼はスマートな手つきでティーポットのカバーを取ると、カップに琥珀色の紅茶を注いだ。
目の前にティーカップが置かれると、ふわりと紅茶の香りが漂う。
たいした期待もなく、出された紅茶を口にした途端、
俺は驚いて、手元のカップに目をやった。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!