それはとても、衝撃的だった。
花のような香り、心地よい渋みと爽快感。
愕然として、ティーカップに入った紅茶を眺めていると、
顔をしかめた俺を見て、部長さんは少し笑った。
詳しい説明を受けてから飲むと、いっそう紅茶の香りと味を楽しめるようだ。
もう一度メントールの香りを楽しみながら飲んでいると、テーブルにデザートのお皿が運ばれてきた。
さっきの可愛らしい人が、とびきりのスマイルを向けてくれた。
ケーキ屋さんで買ってきたような、プロ顔負けのスイーツに驚く。
あどけない少年のような笑顔を見つめていると、
向こうのテーブルから、女子生徒が声をかけた。
女子に囲まれて、可愛がられているすばる先輩を見ていると、
奥の給湯室から、また違う人が出てきた。
今度は浅黒い肌とエキゾチックな顔立ちをした、他の部員とは違う種類のイケメンが来た。
しかし、その美しい顔立ちには怒りが満ちあふれている。
彼は、俺の持っていたカップを指差して目を見張った。
いきなり怒りの矛先が自分に来て、慌てて持っているカップを見た。
そう言って、まだ紅茶の入っている俺のカップを奪い取った。
言われてみれば、そのカップからアンティークならではの歴史と気品を感じる。
手元のソーサーを手に取ってみせると、
五万円と聞いて、急にこの食器を触るのが怖くなってしまい、そーっとテーブルに戻した。
すると彼は、紅茶の入ったティーカップをソーサーに戻してくれた。
優雅に一礼して、去っていった。
喫茶部の人たちは、単なるイケメンじゃない。
みな、それぞれ素晴らしい教養や特殊な才能を持っている。
平々凡々な俺は、ただ彼らの前にひれ伏すばかりだった。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!
転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。