第3話

第一章 噂の喫茶部③
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2023/01/10 23:00
それはとても、衝撃的だった。
相馬 実希人
相馬 実希人
(こんなに美味しい紅茶は、初めてだ)
花のような香り、心地よい渋みと爽快感。
相馬 実希人
相馬 実希人
(紅茶は、こんなに素晴らしい飲み物だったのか……?)
愕然として、ティーカップに入った紅茶を眺めていると、
紅野 ルイ
紅野 ルイ
気にいってもらえたかな
相馬 実希人
相馬 実希人
あ……、はい。
こんなにおいしい紅茶は初めてで、びっくりしました
紅野 ルイ
紅野 ルイ
それはよかった
相馬 実希人
相馬 実希人
香りもいいし、飲んだ後の渋みもちょうどいいというか
相馬 実希人
相馬 実希人
それに、スーッとしたミントみたいな香りがして……
紅野 ルイ
紅野 ルイ
おや、
ウバの特徴であるメントールの香りに気づいたとは、素晴らしい
相馬 実希人
相馬 実希人
この紅茶は、一体……?
紅野 ルイ
紅野 ルイ
世界三大紅茶の一つ、ウバ
相馬 実希人
相馬 実希人
うば?
顔をしかめた俺を見て、部長さんは少し笑った。
紅野 ルイ
紅野 ルイ
紅茶の茶葉の名前だよ
紅野 ルイ
紅野 ルイ
ウバはスリランカの紅茶で、
バラのような香りと心地よい渋みが特徴だ
紅野 ルイ
紅野 ルイ
最も良質な茶葉が摘まれる時期、いわゆるクオリティーシーズンのウバはメントールの香りが加わって、とても味わい深い
紅野 ルイ
紅野 ルイ
少し癖があるから、飲みにくい人はミルクティーとして飲むのもおすすめなんだ
相馬 実希人
相馬 実希人
へぇ……
紅野 ルイ
紅野 ルイ
ティーポットにもう一杯分あるから、ぜひミルクティーも試してほしい
相馬 実希人
相馬 実希人
はい。ぜひ
詳しい説明を受けてから飲むと、いっそう紅茶の香りと味を楽しめるようだ。
相馬 実希人
相馬 実希人
(ミントのような香りがしたのは、気のせいじゃなかったんだ)
もう一度メントールの香りを楽しみながら飲んでいると、テーブルにデザートのお皿が運ばれてきた。
飴谷 すばる
飴谷 すばる
今日のスイーツだよ
さっきの可愛らしい人が、とびきりのスマイルを向けてくれた。
相馬 実希人
相馬 実希人
いただきます
飴谷 すばる
飴谷 すばる
今日のティーパーティーは、薔薇がテーマなんだ
飴谷 すばる
飴谷 すばる
だからスイーツも、バラジャムのマフィン、バラのクッキー、バラのムースにしてみたよ
相馬 実希人
相馬 実希人
えっ?
これ、手作りなんですか!?
ケーキ屋さんで買ってきたような、プロ顔負けのスイーツに驚く。
飴谷 すばる
飴谷 すばる
そうだよ〜。
可愛いでしょ
相馬 実希人
相馬 実希人
(なんなんだ、この人たち……!)
紅野 ルイ
紅野 ルイ
すばる先輩の家は、洋菓子屋さんだからね。
スイーツ作りの腕は、プロレベルだよ
相馬 実希人
相馬 実希人
それで、このクオリティー……
紅野 ルイ
紅野 ルイ
すばる先輩は家庭科部だったけど、その腕に惚れ込んで、喫茶部にスカウトしたんだ
相馬 実希人
相馬 実希人
そうなんですか……
飴谷 すばる
飴谷 すばる
へへっ
相馬 実希人
相馬 実希人
あれっ?
先輩って……、
もしかして三年生なんですか!?
飴谷 すばる
飴谷 すばる
そぉだよー
相馬 実希人
相馬 実希人
え……
相馬 実希人
相馬 実希人
(どう見ても、年上には見えない……)
あどけない少年のような笑顔を見つめていると、
女子生徒 1
すばるくーん!
こっちに来て〜
女子生徒2
早く、一緒にスイーツ食べよっ!
向こうのテーブルから、女子生徒が声をかけた。
飴谷 すばる
飴谷 すばる
はーい。
今行くね!
相馬 実希人
相馬 実希人
(こんな可愛いイケメンがおいしいスイーツを作ったりしたら、女子なんてイチコロだろ……)
女子に囲まれて、可愛がられているすばる先輩を見ていると、
朝村 秀真
朝村 秀真
ルイ!
俺のお気に入りのカップがないぞ!
奥の給湯室から、また違う人が出てきた。
相馬 実希人
相馬 実希人
!?
相馬 実希人
相馬 実希人
(またもや、イケメンが!)
今度は浅黒い肌とエキゾチックな顔立ちをした、他の部員とは違う種類のイケメンが来た。
相馬 実希人
相馬 実希人
(この部は入部するのに、顔審査でもあるのか!?)
しかし、その美しい顔立ちには怒りが満ちあふれている。
朝村 秀真
朝村 秀真
一体、どこにある?
朝村 秀真
朝村 秀真
今日のティーパーティーには、ベネツィアのバラの柄のカップを出したはず……、
ああっ!
彼は、俺の持っていたカップを指差して目を見張った。
朝村 秀真
朝村 秀真
おい!
お前、なんで俺のとっておきのカップを使っている!?
相馬 実希人
相馬 実希人
は、はい!?
いきなり怒りの矛先が自分に来て、慌てて持っているカップを見た。
相馬 実希人
相馬 実希人
(もしかして、このティーカップのことか?)
相馬 実希人
相馬 実希人
なんでって言われても、出されたので……
紅野 ルイ
紅野 ルイ
ごめんごめん!
ウバのオレンジの水色すいしょくにピッタリだなと思って、使わせてもらった
朝村 秀真
朝村 秀真
なんだって!?
朝村 秀真
朝村 秀真
軽々しく使うんじゃない!
これは、吉祥寺のアンティークショップでやっと見つけた、レアものなんだ
そう言って、まだ紅茶の入っている俺のカップを奪い取った。
相馬 実希人
相馬 実希人
あっ!?
朝村 秀真
朝村 秀真
この側面の美しい紋章を見ろ!
これは当時の貴族が特別に発注した証で、かなり貴重なものなんだぞ!
相馬 実希人
相馬 実希人
そうなんですか……
言われてみれば、そのカップからアンティークならではの歴史と気品を感じる。
相馬 実希人
相馬 実希人
じゃあ、このお皿もすごいんですか?
手元のソーサーを手に取ってみせると、
朝村 秀真
朝村 秀真
おい、もっと丁寧に扱え!
いくらすると思ってるんだ!
相馬 実希人
相馬 実希人
えっ?
一万円くらい……?
朝村 秀真
朝村 秀真
その五倍はする
相馬 実希人
相馬 実希人
五万円!?
たかがティーカップで!?
朝村 秀真
朝村 秀真
アンティークとはそういうものだ
相馬 実希人
相馬 実希人
すみません、全然知らなくて……
五万円と聞いて、急にこの食器を触るのが怖くなってしまい、そーっとテーブルに戻した。
朝村 秀真
朝村 秀真
わかればいい
すると彼は、紅茶の入ったティーカップをソーサーに戻してくれた。
女子生徒2
ルイくん!
さっきの紅茶のお話、もっと聞かせて
紅野 ルイ
紅野 ルイ
そうだったね。
すぐに行くよ
紅野 ルイ
紅野 ルイ
……それでは、ゆっくりと紅茶を楽しんで
優雅に一礼して、去っていった。
相馬 実希人
相馬 実希人
(……これは、完璧に負けたな)
喫茶部の人たちは、単なるイケメンじゃない。

みな、それぞれ素晴らしい教養や特殊な才能を持っている。

平々凡々な俺は、ただ彼らの前にひれ伏すばかりだった。

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