第4話

第一章 噂の喫茶部④
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2023/01/17 23:00
一人になり、おいしい紅茶を飲んでいると、
朝村 秀真
朝村 秀真
俺も、ここで飲むとしよう
食器に詳しい彼がやってきて、自分のカップをテーブルに置いた。
相馬 実希人
相馬 実希人
どうぞ
俺はスイーツ皿を引き寄せて、テーブルのスペースをあけた。
朝村 秀真
朝村 秀真
そういえば、君はどうしてここで飲んでいる?
ゲストではないのか?
相馬 実希人
相馬 実希人
喫茶部の見学に来たら、お茶をご馳走してくれると言われて……
朝村 秀真
朝村 秀真
ああ、入部希望者か
相馬 実希人
相馬 実希人
(だから、違うって!)
心の中でつっこんだが、もう今さらどうでもいい。
相馬 実希人
相馬 実希人
……それにしても喫茶部のティーパーティーって、すごく豪華なんですね
相馬 実希人
相馬 実希人
インテリアやお花にもお金がかかってそうだし……
朝村 秀真
朝村 秀真
いや、見た目よりお金はかけていない
相馬 実希人
相馬 実希人
え?
朝村 秀真
朝村 秀真
まず、あの豪華な花は、たつき先輩が調達して活けてくれている
相馬 実希人
相馬 実希人
樹先輩?
タイミングよく、バーテンダーのような彼が、薔薇の入った小さな一輪挿しを俺の前に置いてくれた。
相馬 実希人
相馬 実希人
あ……
一輪の花が、テーブルに華やぎを与えてくれる。

思わず彼を見上げると、
木間 樹
木間 樹
自分、家業が花屋なので
相馬 実希人
相馬 実希人
……花屋!?
俺の言葉に、彼は黙ってうなずいた。
相馬 実希人
相馬 実希人
(バーテンダーにしか見えなかった……)
大人な雰囲気の漂う彼が、花に囲まれて生活しているなんて、結構なギャップだ。
木間 樹
木間 樹
売り物にならない花や、廃棄寸前のものを利用してアレンジしているから、お金はかかっていない
相馬 実希人
相馬 実希人
こんなに綺麗なのに?
テーブルに置いてある、華やかなフラワーアレンジメントを見て、驚きが隠せない。
朝村 秀真
朝村 秀真
食器や茶器は、俺がコツコツと集めたコレクションを使っているし、インテリアのカーテンや椅子なども、アンティークショップで手ごろな値段のものを揃えた
相馬 実希人
相馬 実希人
へぇ……
朝村 秀真
朝村 秀真
一番の出費は、茶葉代だ
朝村 秀真
朝村 秀真
ルイが予算を無視して、高級な茶葉を次々と買ってくるからな。
会計の俺は、いい迷惑だ
朝村 秀真
朝村 秀真
俺が必死で部費をやりくりしているというのに、あいつは……
彼は向こうにいる部長さんをジロっと睨んだ。
相馬 実希人
相馬 実希人
(なんだか、必死で家計をやりくりしている母親みたいだな)
こっそり笑ってしまった。

ふと女子生徒が集まっているテーブルを見ると、浮かない顔をして紅茶を飲んでいる二人の女の子が目に入った。
相馬 実希人
相馬 実希人
(あの二人、楽しくないのかな)
周りは喫茶部のティーパーティーを心から楽しんでいるというのに、二人は黙ったまま暗い表情をしているので、少し浮いていた。
相馬 実希人
相馬 実希人
(ケンカでもしたのかな……)
しかも、奥に座っている女の子の前には紅茶が置かれていない。

それどころか、よく見ると彼女が着ているのはうちの学校の制服ではなく、私服らしいワンピースだ。

生徒以外もゲストとして招待されることがあるのだろうか。
相馬 実希人
相馬 実希人
……あの、どうしてあの人には紅茶を出さないんですか?
朝村 秀真
朝村 秀真
あの人?
相馬 実希人
相馬 実希人
ほら、一番奥に座っている彼女だけ紅茶がないので……
木間 樹
木間 樹
何のことだ?
ゲストには皆、紅茶が行き渡っているだろう
その言葉に、はっとなる。
相馬 実希人
相馬 実希人
(しまった!)
相馬 実希人
相馬 実希人
(……あれは幽霊か!)
自分にしては、珍しい。

あまりにその姿がはっきり見えていたからか、はたまたおいしい紅茶を飲んで気が緩んでいたのか。
朝村 秀真
朝村 秀真
おい、何のことだ?
相馬 実希人
相馬 実希人
あっ、その、
変なこと言ってすみません!
ただの見間違いでした
朝村 秀真
朝村 秀真
見間違い……?
相馬 実希人
相馬 実希人
ホントだ、みんな紅茶ありますね!
メガネの度があっていないのかな?
あはは……
木間 樹
木間 樹
……
二人の疑わしい目線が痛い。

俺は、残った紅茶を一気に飲みほすと、
相馬 実希人
相馬 実希人
ご馳走様でした!
じゃ、俺はこれで
慌ただしく席を立つ。

急いで出口へ向かおうとすると、樹先輩にガシッと腕をつかまれた。
木間 樹
木間 樹
待て。
何を慌てている
相馬 実希人
相馬 実希人
ええっと、
これ以上お邪魔するのも悪いなー、なんて……
木間 樹
木間 樹
もうすぐティーパーティーが終わる。
少し話を聞かせてもらおう
相馬 実希人
相馬 実希人
いや、特にお話しするようなことは……
朝村 秀真
朝村 秀真
そうだな。
俺もなんとなく気になる
相馬 実希人
相馬 実希人
う……
木間 樹
木間 樹
……
見上げると、有無を言わせぬ迫力で圧をかけられる。
相馬 実希人
相馬 実希人
……わかりましたよ
観念した俺を見て、ようやく樹先輩はつかんでいた腕を離してくれた。

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