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第1話

第一章 噂の喫茶部①
2,344
2022/12/27 23:00
木下さん
相馬くんは、とてもいい人だと思うけど……
木下さん
ごめんなさい
木下きのしたさんは、申し訳なさそうに頭を下げた。
相馬 実希人
相馬 実希人
あ……、
木下さんは悪くないよ
相馬 実希人
相馬 実希人
こっちこそ、いきなりごめん
相馬 実希人そうば   み き と青論せいろん高校一年生。

たった今、人生初の告白をして、
見事にフラれたところだ。
相馬 実希人
相馬 実希人
(やっぱり、そんなにうまくはいかないよな……)
勉強、運動、容姿、どれをとっても平均点の俺は、たいした特技もなく地味に生きてきた。

そんな俺が、隣の席の木下さんに心惹かれ、一生分の勇気をかき集めて、本日告白したのだが。
木下さん
私、彼氏はいないけど、
気になる人がいて……
相馬 実希人
相馬 実希人
気になる人……?
未練がましく聞くと、木下さんは顔を赤らめて小さくつぶやいた。
木下さん
……喫茶部の、紅野こうの先輩
相馬 実希人
相馬 実希人
喫茶部?
木下さん
喫茶部のティーパーティーに招待されてから、紅野先輩のことが忘れられなくて……
木下さん
あっ、でもね、
私が勝手に憧れてるだけだから!
彼女は我に返って、赤く染まった頬を押さえた。
木下さん
それじゃあ、またね!
相馬 実希人
相馬 実希人
え?
あ、ああ……
走り去っていく彼女を見送って、そばにあったフェンスにもたれかかった。
相馬 実希人
相馬 実希人
……喫茶部、か
喫茶部のことは、噂で聞いたことがある。

なんでもイケメンぞろいの部員たちが、女子生徒を招いてティーパーティーを開いているとか、なんとか。

しかし、そのティーパーティーが大人気で、抽選で当たらないと行けないらしく、一年越しで待っている人もいるという。

我が校では、プラチナチケット並の扱いだ。
相馬 実希人
相馬 実希人
(フン、イケメンが紅茶やお菓子でもてなし、女子心をつかもうってか?)
地味な俺にとって、イケメンやキラキラ男子は天敵だ。

立ってるだけで女子から崇められるイケメンなんて、憎らしいことこの上ない。
相馬 実希人
相馬 実希人
(まあ、ただの妬みだけどな……)
ため息をついて顔を上げると、少し離れた所に、着物姿の小さな女の子が立っている。
相馬 実希人
相馬 実希人
ぼんやりとしたシルエット、
古びた着物と時代に合わないおかっぱ頭は、到底令和の少女とは思えない。
相馬 実希人
相馬 実希人
(幽霊……、か)
何の特技もない俺だが、唯一、幽霊が見えてしまうところは普通の人と違った。
相馬 実希人
相馬 実希人
(まぁ、あんまり自慢できる特技じゃないけどな……)
おかっぱの少女は、心配そうに俺を見ている。
相馬 実希人
相馬 実希人
(……幽霊にまで同情されてるのか)
フラれたとはいえ、自分はそんなにみじめな顔をしていただろうか。

苦笑すると、少女はフッと姿を消した。
相馬 実希人
相馬 実希人
(どうして、こんな力が身に付いたんだか)
生まれて初めて幽霊を見たのは、小学校一年生の時。

大好きだったじいちゃんが亡くなって、お葬式から一週間が経ったころ。
相馬 実希人
相馬 実希人
お母さん、じいちゃんがお仏壇の前に座ってるよ
実希人の母
え……?
見たままを伝えただけなのに、お母さんはすごく変な顔をして俺を見た。
実希人の母
実希人、
……おじいちゃんはもう、死んじゃったのよ
相馬 実希人
相馬 実希人
知ってるよ。
でも、そこにいるんだよ
実希人の母
実希人……
それからも、じいちゃんを見る度に母に報告していたら、夜遅くに父と母が話す声が聞こえた。
実希人の母
実希人が、何度もおじいちゃんを見たって言うのよ
実希人の父
実希人はお義父さんのことが大好きだったからな……。
まだ、死を受け入れられないのかもしれない
実希人の母
心配だわ。
病院に連れて行った方がいいのかしら
実希人の父
しばらく様子を見て、続くようなら連れて行こう
実希人の母
そうね……
二人の深刻な声色に、子どもながらに幽霊が見えることは言わない方がいいのだと悟った。

しかし、じいちゃんのことをきっかけに、俺は他の幽霊も見えるようになってしまった。

誰にも言えず、一人で悩んだ時期もあったが、次第に見えることにも慣れていき、それなりに生きてきた。

けれど、いまだに幽霊が集まりやすいところや、人が大勢集まるところは苦手だ。
相馬 実希人
相馬 実希人
……もう、戻るか
しかたなく歩き出すと、木の影から白いワンピースを着た若い女の幽霊が、俺を見てクスクスと笑っているのが見えた。
相馬 実希人
相馬 実希人
……おい、笑うなよ
ちっ、と舌打ちしてつぶやくと、白いワンピースの女はフッと俺の目の前から姿を消した。
相馬 実希人
相馬 実希人
(クソッ!
幽霊にまでバカにされて、やってられるか!)
さっき幽霊が顔を出した木を、思い切り蹴とばしてやると、
相馬 実希人
相馬 実希人
いってぇ!
打ち所が悪く、足の甲にジーンと痛みが走る。
相馬 実希人
相馬 実希人
さんざんだな……
鈍い痛みを引きずりながら、俺は教室へと戻っていった。

* * *

教室に戻り、自分の席につくと、
クラスの女子1
聞いて!
私、喫茶部のティーパーティーに当たったの!
クラスの女子1
見て、これが招待状だよ。
さっき紅野先輩から直接渡されたんだ!
クラスの女子2
ウソ!?
うらやましい〜!
紅野先輩、かっこよかった?
クラスの女子1
もう、本当にイケメンで、まぶしすぎた!
クラスの女子2
マジで!?
私も見たかったぁ
相馬 実希人
相馬 実希人
(また喫茶部か!)
その会話を聞いているだけで、腹立たしくなる。
相馬 実希人
相馬 実希人
(なんだよ、みんなして喫茶部、喫茶部って!)
相馬 実希人
相馬 実希人
(……そこまで言うなら、どれほどの奴らか見てやろうじゃないか!)
やけっぱちになった俺は、喫茶部に乗り込んでやろうと決意した。

* * *

南校舎の三階、第一特別活動室。

ここが喫茶部の活動場所らしい。
相馬 実希人
相馬 実希人
失礼しまーす
俺は勢いよくドアを開くと、
相馬 実希人
相馬 実希人
……なんだ、これは!?
目の前に飛び込んできた光景に、思わず言葉を失った。

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