四郎は、今電車に乗っている。
四郎が向かっているのはヨコハマだ。
左馬刻と話をしにいくところだった。
紮生達と解散したのが、11時半。
家に帰り、昼ごはんを食べると、四郎はまた家を出ようとしていた。
すると、玄関で一郎に呼び止められたのだ。
一郎の目がギッと鋭くなった。
四郎は、目を逸らして答えた。
知り合いというのは嘘ではないが、買い物は嘘だった。
一郎は、少し四郎を見ていたが、ため息をつき『行ってこい』と言った。
一郎は、四郎と左馬刻が仲良いのを知らない。
そのことに感謝し、四郎は家を出た。
昔のようにノックもせず、舎弟の奴らを気にせずに、左馬刻の事務所に入った四郎は、中を見て絶句した。
左馬刻はイライラしながら、煙草を吸っている。
きっと何かあったんだろう。
いや、これは確実にあった。
左馬刻は元々キレやすい性格だけど、根は優しい。
昔から四郎と仲が良かったから、四郎も左馬刻を信用していた。
いきなり、部屋の真ん中のソファーの方から声がした。
きちっとした髪型に制服。
なんでこんな人がヤクザの事務所にいるのか、四郎には理解出来なかった。
そして、もう一人、軍人の服を来た男がいる。
どう見てもヤクザには見えない格好だ。
いつもの王子様スマイルをした四郎の心の中は、クエスチョンマークでいっぱいだ。
銃兎は、びっくりした顔をして四郎をまじまじと見た。
そうして、銃兎と理鶯が事務所から出ると、四郎は王子様スマイルをやめた。
四郎は、ソファーに座り、無愛想に言う。
いきなり四郎が来た時よりは、左馬刻の機嫌が少し良くなっている。
話していて気が紛れたのだろう。
すぐに本題に入るのではなく、昔の話をして左馬刻の反応を窺った。
四郎は、それには答えなかった。
だが、左馬刻は四郎が答えなくてもわかっている。
左馬刻は、いつもの態度でいつもの表情だ。
動揺したり変に反応したりしていない。
これはもしかして、シロだったりする?
四郎は、慎重に言葉を選び、本題に入ろうと決めた。
四郎の言葉を聞いて、左馬刻は何の反応も示さなかった。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。