しばらく歩いて、細い道を抜けたところが四郎達の集まり場。

いつもそこに集まって、四人で話し合いなどをしている。

だが、今日は何かが違った。

そんなことを思いながら、集まり場に向かうと、そこには、ある人物が横たわっている。

四郎の頭は混乱していた。

横たわっているのは、知り合いである、綾部（あやべ） 翠（みどり）だった。

翠は酷い姿になっていた。

服が爪痕のように破られ、血が大量に流れている。

頭や身体など様々なところから血が出ていて、地面も赤黒く染まっている。

ふと、視線を逸らすと、翠の横に男が立っていた。

その男は、顔や服に血が飛んだ跡があり、マイクを手に握りしめている。

だが、そんなことよりも、四郎は男の姿を見て吐き気がした。

すぐさま、その場を離れ、家に帰る。

家に着いたと思ったら、玄関で四郎は吐いてしまった。

四郎は、ベッドの上で汗をかいていた。

いつもなら朝風呂をしないが、汗をかいて気持ち悪いから風呂に向かった。

四郎はシャワーを浴びていた。

四郎の泣きそうな歪んだ表情は、誰も見ていなかった。

風呂から上がると、丁度三郎が起きてきたところだった。

昨日、二郎と一緒に家に帰ったあと、四郎は三郎に話をしていた。

言い訳したわけではないが、ちゃんと事情を説明した。

情報なんか渡していないこと、兄弟のラップバトルに口出しする気はなかったこと、左馬刻とは昔知り合いだっただけだということ。

一部、嘘も混じっている。

左馬刻とは、昔知り合いだっただけではないが、それも事実なのでその部分だけを伝えた。

最初は、納得できない様子だった三郎だが、途中で納得して仲直りが無事成功した。

二郎の言う通り、三郎は『ちゃんと話を聞けばよかった』と反省していたようだ。

目覚めが悪く、イライラしている四郎はいつもより一層、兄弟に冷たかった。

この後の展開など、誰もが予想できる。

三郎が乱暴に二郎を起こし、二郎が怒って三郎と喧嘩する。

それを、一郎が止めに行く。

今日も、それで朝の一大イベントが終わった。

四郎が口を開いたのが驚いたのか、二郎と三郎は目を丸くして四郎を見ている。

二郎と三郎は、感動したような目で四郎を見た。

その、四郎の発言に、二郎と三郎はイラッとしていた、

一郎は、大満足の笑顔だ。

いつにましても機嫌がいい一郎を、二郎と三郎は怒らすことはしたくないと思った。

無表情でそれだけ言うと、四郎はご飯を食べ出した。