第11話

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2019/03/23 11:11
山田 一郎
山田 一郎
四郎?どうした?
一郎は、うつ向いて何も言わない四郎を見た。

四郎は今、脳をフル回転して言い訳を考えている。

三郎の誤解をどうやって解くか、一郎に何を言えば怪しまれずに済むか。
山田 四郎
山田 四郎
......
四郎が何も言わずに黙っていると、三郎がゆっくり口を開いた。
山田 四郎
山田 四郎
(やばい......バラされる......?)
山田 三郎
山田 三郎
......何でもありませんよ、いち兄
山田 四郎
山田 四郎
えっ......
山田 一郎
山田 一郎
そうなのか?
さっき三郎、何か言ってたじゃねぇか
山田 三郎
山田 三郎
あぁ、少し驚いたことがあって、言ってしまっただけです
問題はありません
三郎は、いつもの笑顔で一郎に話した。
山田 四郎
山田 四郎
(三郎......いち兄ちゃんに言わないつもり?)
四郎は、三郎の思考が理解出来なくて困っている。

すると、一郎が納得したように笑顔を作った。
山田 一郎
山田 一郎
そうか!
喧嘩じゃないんならいいんだ!
太陽の様な一郎の笑顔は、さっき見た三郎の冷たい目とは、全くの真逆だった。
さっき、三郎が冷たい目をしたとき、四郎は『三郎もあんな目出来たんだ』と、少し呑気に考えていた。
山田 三郎
山田 三郎
ではいち兄、朝食にしましょう
山田 一郎
山田 一郎
あぁ、そうだな
三郎は一郎の手を引いてリビングに入っていく。

その時、三郎は四郎に一度も目を向けなかった。
山田 四郎
山田 四郎
(誤解......解けてないんだけど)
三郎と一郎がリビングに入り、ドアが閉められた。
大体、四郎は兄弟のラップバトルに口出ししないと決めてるんだ。

一度でも口出ししてしまうと、昔を思い出すから。

だから、口出しなんかしたくない。

三郎が心配するようなことは絶対にない。
山田 四郎
山田 四郎
まぁ......いっか......
四郎は、半ば諦めの心でリビングに入っていった。



紮生と海頼に電話をすると、二人とも左馬刻が犯人じゃないと知って安堵していた。

やっぱり、二人も左馬刻を信用している。
すると、いきなり家のインターホンが鳴った。

一郎がドアを開けると、そこには玲也が立っていた。
山田 一郎
山田 一郎
あれ、君は......
西城戸 玲也
西城戸 玲也
西城戸です
四郎に用事があって来ました
山田 四郎
山田 四郎
玲也、話なら電話で......
西城戸 玲也
西城戸 玲也
ビッグニュース
四郎の言葉を遮るようにずばっと言った。

四郎の心は今あまり踊らないが、それでも、そのビッグニュースが気になり、玲也を部屋にあげた。
西城戸 玲也
西城戸 玲也
四郎、原稿は進んでんのか?
山田 四郎
山田 四郎
それより俺はビッグニュースが知りたい
不機嫌な四郎の声に、玲也はふっと笑った。
西城戸 玲也
西城戸 玲也
そう焦るなよ
山田 四郎
山田 四郎
それなりには進んだけど
このままいけば、締め切りに間に合うから
西城戸 玲也
西城戸 玲也
毎度毎度、お前は締め切り守ってくれるから助かるぜ
山田 四郎
山田 四郎
それはよかった
で?ビッグニュースは?
四郎はビッグニュースが聞きたくて仕方ない様子だ。
玲也も、四郎が信頼している人だから、王子様スマイルでなく、無愛想な対応をしている。
西城戸 玲也
西城戸 玲也
なんと、この前の『獣の涙』が重版かかったぞ!
山田 四郎
山田 四郎
そっかぁ
四郎は、嬉しさで少し気分が晴れていた。

『獣の涙』は、シブヤに行く前に出した新作だ。

正直、四郎自身でも自信があるものだったから、安堵していた。
西城戸 玲也
西城戸 玲也
それで、サイン会とかやってほしいって言われてるんだけど
山田 四郎
山田 四郎
そんな暇ないし、顔見せたくない
西城戸 玲也
西城戸 玲也
でもさぁ、いくら見せたくなくても、読者がサイン会してほしいって言ってるんだぞ?
山田 四郎
山田 四郎
もし、そのサイン会に知り合いがいたらどうするの?
西城戸 玲也
西城戸 玲也
どうするって......
山田 四郎
山田 四郎
絶対、何か言われるに決まってる
それに、面白がって学校中にバラすかも
四郎は、バラされた時のことを思い浮かべて、顔を青白くした。
西城戸 玲也
西城戸 玲也
お前......いつもいつも考えすぎ
四郎の本を待ってる奴はいっぱいいるんだぞ
もっと自信持てよ
山田 四郎
山田 四郎
今回の本は自信あったけど?
西城戸 玲也
西城戸 玲也
わかってる
だから、もっと胸張って良いんだって
山田 四郎
山田 四郎
だって俺......目立つの嫌
西城戸 玲也
西城戸 玲也
なっ......!
四郎らしくない言葉に、玲也は絶句した。

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