第17話

🎤17
1,212
2019/03/30 14:49
四郎は、一番大きな病院に来た。

有名な先生がいる、シンジュクの病院だ。
山田 四郎
山田 四郎
あの......
看護師
はい
山田 四郎
山田 四郎
あ、綾部翠ってどこの部屋ですか?
看護師
少々お待ち下さい
看護師は、少しの間奥に行くと、またすぐに戻ってきた。
看護師
四階の204の部屋が、綾部さんの病室になります
失礼ですが、綾部さんとのご関係は?
看護師からの質問に、少し言葉に詰まった。
山田 四郎
山田 四郎
ゆ、友人、です......
看護師
ありがとうございます
では、どうぞ
そう言って、四郎はエレベーターに向かった。
看護師から教えてもらった、翠の病室の前に着いた。
山田 四郎
山田 四郎
......
四郎は、部屋の前で少し立ち止まった。

息を一つ吐くと、意を決してドアを開ける。

中には、予想通りに、翠がベッドの上で寝ていた。
翠は、三年前にあの事件があってからシンジュクのこの病院に運び込まれ、命に別状は無いものの、ずっと目を覚まさないのである。

翠の周りに機械などがある。
ベッドの側に行くと、四郎は翠の顔を見た。
山田 四郎
山田 四郎
翠......
おや、あなたは?
いきなり、四郎の後ろから低い声が聞こえた。
山田 四郎
山田 四郎
あっ......お、お見舞いで......
そうですか
後ろにいたのは、白衣を着た、高身長の男の先生だった。
神宮寺 寂雷
神宮寺 寂雷
私は、神宮寺寂雷です
綾部さんの担当をしています
山田 四郎
山田 四郎
山田四郎です
みど......あ、綾部とは友人で......
神宮寺 寂雷
神宮寺 寂雷
綾部さん、三年前から目を覚ましていませんが、体調は悪くなっていませんよ
寂雷は、にっこりと四郎に笑顔を見せた。
山田 四郎
山田 四郎
でも......目を覚まさなかったら、意味ないし......
神宮寺 寂雷
神宮寺 寂雷
命に別状は無いんです
後は、目が覚めるのを祈るしかありません
山田 四郎
山田 四郎
......あの時、もっと早く来ていればこんなことには......
神宮寺 寂雷
神宮寺 寂雷
あの時?
寂雷は、四郎に問いただした。
山田 四郎
山田 四郎
あ、いや......
それより、神宮寺先生って、元The Dirty Dawgのメンバーですよね?
神宮寺 寂雷
神宮寺 寂雷
えぇ、まぁ、そうですね
ご存じなんですか?
山田 四郎
山田 四郎
他の人より知ってるつもりですよ
うちの兄が元The Dirty Dawgのメンバーだし
神宮寺 寂雷
神宮寺 寂雷
えっ......?
まさか、一郎くんの?
山田 四郎
山田 四郎
はい、山田一郎の弟です
俺、末っ子なんですよ
神宮寺 寂雷
神宮寺 寂雷
そうなんですか
二郎くんと三郎くんは知っていたのですが......
山田 四郎
山田 四郎
三郎とは双子で、俺が弟です
神宮寺 寂雷
神宮寺 寂雷
なるほど
一郎くんも毎日楽しいのでしょうね
山田 四郎
山田 四郎
それはわからないですけど......
四郎は、そう言うと、また翠に視線を落とした。
山田 四郎
山田 四郎
翠......いつ目覚めるかわかりますか?
神宮寺 寂雷
神宮寺 寂雷
それは、まだ......
山田 四郎
山田 四郎
ですよね
諦めたように、四郎は言った。
山田 四郎
山田 四郎
(ここに来ても、なんの罪滅ぼしにもならないのに......)
四郎は、夢に出てきたあの日の事件を、いつまでも後悔していた。

後悔しても、今さらどうにも出来ないのは知っている。

翠のお見舞いに来たからと言って、あの事件が解決する訳じゃないのも、知っている。
四郎は、今にも嫌悪感で埋め尽くされそうな自分の心を、必死に冷静に戻して、寂雷を見た。
山田 四郎
山田 四郎
神宮寺先生、Little Tigersというラップチームをご存じですか?
神宮寺 寂雷
神宮寺 寂雷
えぇ、もちろん
四人でチームを組んでいて、三年前に解散しています
仮面をしていたので、年齢や名前などはわかりませんが、五年連続チャンピオンでしたね
それが、どうかしたのですか?
山田 四郎
山田 四郎
いえ、ありがとうございます
他に知っていることは?
神宮寺 寂雷
神宮寺 寂雷
それ以外の情報はありません
寂雷は、あまり昔の話をしたくないのか、淡々と話していた。
山田 四郎
山田 四郎
今度、麻天狼の他のメンバーにもお会いしたいのですが......
神宮寺 寂雷
神宮寺 寂雷
そうですね、独歩くんも一二三くんも仕事が忙しいだろうから、予定を聞いておきます
休みがわかったら、連絡しますね
山田 四郎
山田 四郎
はい、ありがとうございます
そう言って、四郎と寂雷は連絡先を交換した。
その後は、四郎も病院を出て家に向かった。




その時、四郎とはすれ違いで、もう一人翠のお見舞いに来ている人がいたのだ。
神宮寺 寂雷
神宮寺 寂雷
綾部さんのお見舞いかい?
有谷 柳
有谷 柳
あぁ
ヨコハマに住み、今は四郎達と全く連絡をとっていない柳だ。

連絡はとっていないし、ヤクザっぽくなったが、翠のお見舞いだけは、毎日来ていた。

そのため、寂雷とも知り合いなのだ。
有谷 柳
有谷 柳
翠の状態、変わってないのか?
神宮寺 寂雷
神宮寺 寂雷
変わっていないよ
まだ、目を覚ます気配はないけれど
有谷 柳
有谷 柳
そうか......
神宮寺 寂雷
神宮寺 寂雷
そういえば、さっき綾部さんのお見舞いに来た子がいたよ
有谷 柳
有谷 柳
えっ......誰?
神宮寺 寂雷
神宮寺 寂雷
山田四郎くんと言う、私の友人の弟くんさ
有谷 柳
有谷 柳
山田、四郎......!?
あいつ......!
いきなりの名前に、柳は驚きを隠せなかった。
神宮寺 寂雷
神宮寺 寂雷
おや、知り合いなのかい?
有谷 柳
有谷 柳
ちげぇよ!
あいつは......翠をこんな風にした張本人だ!
神宮寺 寂雷
神宮寺 寂雷
四郎くんが?
寂雷は、不思議に思い、少し首を傾げた。

プリ小説オーディオドラマ