「先輩…顔真っ赤。」
『テヒョンくんだって、』
そう言いながらお酒が入った瓶を手に取って新しくグラスに注ごうとしている。
「もう終わりにしましょ。」
『いや…』
「だめです」
『私が買ってきたお酒なんだから勝手にしてもいいでしょ…』
「僕ん家、汚されても困ります」
グラスを手に持てば、ごくりと喉を鳴らしながら 勢いよく飲み干す。そんな先輩の姿はあまりにも無防備すぎて、今 隣にいる人が男だということに自覚がないのだろうかと不安になる。
『テヒョンくんだから優しく招いてくれると思ったのにさ…』
“男だから”、ではなくて “テヒョンくんだから”、無防備でいられるらしい。その事実に悲しく感じた自分がいて否定したくなる。
「そうですね、誕生日に大好きな彼氏に振られて涙流しながらここまで来ましたもんね。」
『…私が泣くって分かってて何で言うの。』
真っ赤な頬を膨らませるのと同時に、目には涙が浮かんでいる。
“大好きな彼氏” 自分からその言葉を突きつけておいて、勝手に苦しくなっている。
そうだ、先輩はどこの誰よりも大好きで堪らなかった たったひとりの男に振られた先輩なんだ。
「時間が解決してくれますよ」
そんな先輩を見るのが嫌で嫌で、目線を床に置き換えた
『そーやって簡単に言うけど…テヒョンくんは誰かを好きになったことがないから分からないだけ。』
「…」
そう言われてカチンときた。やっぱり先輩は俺に興味なんか一欠片もなくて、俺のことを何も知らない。
「そうですかね……。絶賛片想い中ですけど、」
「その相手こそ、鈍感なのか、ただの馬鹿なのか…他に好きな人がいるのか、…考えたくもないですけど、気づいてくれなくて辛いです。」
俺の言葉に何の意図もない、自分に関係もない、そう思えているのが先輩の表情から窺えた。
ほら、そういうところだよ。ほんと鈍感。
いや…俺に興味が湧いていなきゃ、気づかないのも当たり前か…。
勝手に自分で傷ついてる。
「時間が解決してくれる日なんて…永遠に来なさそうです。」
『…とか言って、数日後、数週間後には超絶かっわいい彼女つくってるんでしょ?テヒョンくんまで私のことひとりにして…ぇ…。みんな消えちゃえ』
再びグラスを強く握ると ぎゅっと目を瞑って一気飲み。先程から胸元のボタンが開いているのも気になる。やっぱり先輩は、俺の事をお酒に付き合ってくれる後輩としか思っていない。
「じゃあ…先輩がその超絶かっわいい彼女とやらになってくれるんですか?」
『なりませんーー。どー考えたってテヒョンくんと私じゃ釣り合うわけがないでしょ。失恋したおばさんをからかってるの?』
しっかりと位置が定まらない人差し指は俺の顔を指している。
テーブルに自分の腕を枕にして顔をうつ伏せた。このままだと眠ってしまいそうだ。
『ただの慰めでもいいから…誰かしら触れてくれないのかな…。』
腕の中で小さく呟く先輩の声を聞き逃さなかった。
「…します?」
『…』
馬鹿なことを言った、そう思った頃にはもう遅かった様な気がする。
『おばさん、からかうな』
「全然おばさんなんかじゃない。キス、しませんか?」
ここまでいけばもう全てなくしてしまえ
そう思えた頃には歯止めなんてもの脳内にはない。
「ねぇ、してもいい?キス。」
『…だめ。新しい彼女の為に取っておくんだよ。』
そう言いながら俺の唇に指を持ってきてボタンを押す感覚で触れた。
その手首を掴むと、驚いた顔をする先輩。眠たさで重たくなっていた瞼もしっかりと俺を捉えている。
「新しい彼女は、先輩がいいです。」
そこで初めて、先輩にキスをした。
『テヒョンく、…』
胸板を軽く抑えられたけれど、キスを続けた。先輩の両手首とも掴んでただ俺からのキスに応じてくれるように。唇だけだと決めていたけれど、それは初めから小さな決め事にしか過ぎなくて、舌をねじ込ませた。
顔を離してしっかりと目を合わせれば、先輩の瞳が潤んでいる。
「嫌ですか…?」
“嫌だ”、そう言われたらどうしようかと思うと心臓が音を立てる。
『…私、最低な人になっちゃう。…だって、彼氏と別れて直ぐに他の人とキスしたり、』
"他の人" 先輩の言葉ひとつひとつに苛立ってしまう。
「嫌?」
それだけ答えて、と目線で訴える。どう返事をしようか迷ってるみたい
『これでテヒョンくんを好きになったりしたら……』
「なればいいじゃん。」
『…へ、』
「俺を好きになって、俺だけを見てればいい。」
本心だった。
ぽっかりと薄く開いた口に、顔を近づけて舌を入れ込む。くちゅくちゅと鳴る音も先輩と自分の元から鳴っていると思うと、それだけで満足だった。
俺にとって先輩とキスだなんて、贅沢すぎるから。
『ん、っ…くるし…』
キスはやめずに、先輩のことを抱きかかえてベッドに移動し、後頭部を支えながらシーツに寝かせた。艶(ツヤ)のあるこの髪も今は自分だけのもの。口内が火傷しそうなくらい、熱かった。
ワイシャツのボタンを外す前に自分の顔を下へ下へと移動させて、先輩の脚を掴む。
『…、』
恥ずかしそうな顔を向けて首を振る先輩に笑みを浮かべて、タイトスカートを脱がした。先輩が着るタイトスカートは周りの女性よりも遥かに えろく見えてしまう傾向がある。
腰に手を持ってきて下着の端を掴む。脱がすときに、少し湿っているのが見えてしまった。嬉しい。そう思った。
先輩は片脚に下着をぶら下げた状態で顔を隠している。
包むように腰を掴み、顔を秘部に近づけて、舌を出す。ヌルッとした感触と共に中が広がるのを感じた。
『ぁはっ、…は…てひょ…ん』
こんな風に感じるんだ
こんな風に喘ぐんだ
こんな風に名前を呼んでくれるんだ
その全てに嬉しさを感じて舌を小さな穴に差し込むと、中がきゅうっと狭まる。
ちろちろと焦らすように先端を使って舐めると中からはとろとろの液が出てくる。
剥き出しになりかけの蕾を口内に含んで、思い切り強く吸えば自分の頭に手を置く先輩の手で髪の毛をくしゃっと崩された。
更にそこに緩急を入れると、より弱いことが分かる。
『もっ…だめ、…。ぁ、』
声も腰もココも…色んなところをひくひくとさせて、俺に訴えかけてくる。
熱を持った自分のモノはこれ以上の我慢が限界そうで物欲しそうに主張を始めていた。
避妊具を着けて十分(じゅうぶん)に濡れた先輩のソコに当てる。先端を使って中を広げて、奥へ奥へとゆっくり進めていった。
先輩の中での締め方が尋常じゃなくて、きっと長い間、大好きな彼に触れられていなかったのだと予想が着いた。
奥まで入れば、形をとる為に周りを擦った。
『ぁッ、…』
苦しそう…でも気持ち良さそうな声をあげる先輩の顔を見ながら自分の腰で円を描く。
そんな間にも先輩とキスをして舌を絡めた。
体中が熱いけれど、特に下には力が入っていて。そろそろだと思って腰を揺らし始める。すると先輩は俺の腕を強く掴んで痛さを堪えている様だった。
「…直ぐに気持ちよくなれるから、っ」
既に自分は先輩の中でドロドロに溶けまくっていて、余裕がない。
腰に力を入れてズッズッと奥に深めた。
先輩のとろっとした液が繋がった部分から垂れているのが何となく分かった。
キスで痛さを和らげて腰の動きは止めずに、体全体で先輩を感じる。
『テヒョ、ン…くん』
俺の名前を呼びながら涙を浮かべる先輩は、今 何を考えているだろうか。
先輩が大好きな元彼だけはあってほしくない。
『すき、…どうしよ…っ』
それは俺に対して言ってくれた“すき”だと認識してもいいのだろうか。
こんな好きの愛し方でも、どうか許してほしい。
そう願った。
END.
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。