第13話

猫みたいに気まぐれな人
せめて、私も夜は友達と合流する約束をしておくんだった。


そう後悔した。


今日が何時から何時まで裏方に入るのかは、直前まで調整がなされていて分からなかったのだ。
真弓 朋果
真弓 朋果
(丈春さんは、いつの間に誰と約束をしたんだろう……。相手、どんな人かな……)

心ここにあらずで、その場に突っ立って考えている間に、丈春さんの友達たちは去っていった。


彼女はいないと言った日の後に、実は彼女ができたのかもしれない。


もしかすると、前から気になっていた人がいて、声を掛けたのかもしれない。


その逆で、私よりも先に告白に成功して、付き合うことになった人がいるのかもしれない。


想像すればするほどに、嫉妬で悲しくなってしまう。
真弓 朋果
真弓 朋果
(でもそれだったら、猫カフェにだって、私と行ってる場合じゃないのに……。はっ! 私、単なる猫友達だと思われてる!?)

恋愛に関しては全く経験がないので、そういう可能性は考えていなかった。
蓮井 丈春
蓮井 丈春
おーい、朋果ちゃん?
真弓 朋果
真弓 朋果
……え
蓮井 丈春
蓮井 丈春
すごい百面相してるけど、大丈夫?
真弓 朋果
真弓 朋果
だ、大丈夫です……。
どうしました?

無意識に表情に出ていたらしい。


丈春さんから現実に呼び戻されて、しゅんと肩を落としながら用件を聞く。
蓮井 丈春
蓮井 丈春
あのさ……。
確認してなかったんだけど、これが終わった後って誰かと約束してる?

丈春さんは頭を掻きながら、少し横に視線を外して聞いてきた。


恥ずかしがっているようなそんな表情に、私の脳内は混乱する。


彼の質問の意図が、分からない。
真弓 朋果
真弓 朋果
え……。
してない……です?

どう返事をしたらいいか狼狽うろたえた結果、語尾が疑問形になった。
蓮井 丈春
蓮井 丈春
あはは、俺に聞き返さないで。
誰とも約束はしてないんだね?
真弓 朋果
真弓 朋果
……! はい!

心臓が跳ねた。


妙に胸がざわついて、これから彼に言われることを期待してしまう。
蓮井 丈春
蓮井 丈春
じゃあさ、今日の余った時間は俺と祭りを回ろう。
まあ、俺は高校生とは違うけど、ちょっとした青春だと思って
真弓 朋果
真弓 朋果
…………はい

突然の誘いに驚いて、ぼんやりしながら承諾した。


そして、じわじわと現状を理解していく。
真弓 朋果
真弓 朋果
あれっ? えっ!?
先約は!?
蓮井 丈春
蓮井 丈春
うん。
だから、朋果ちゃんが先約。
確認の順番がちょっと前後したけどな

丈春さんは悪戯いたずらっ子のような笑みを浮かべて言った。


さっき彼らに言った先約とは、私のことだったのだ。


嬉しくてたまらなくて、顔が真っ赤になる。
真弓 朋果
真弓 朋果
ありがとうございます。
でも、猫みたいに気まぐれにならないでください……。
心臓に悪い……
蓮井 丈春
蓮井 丈春
おっ。
最高の褒め言葉だ
真弓 朋果
真弓 朋果
褒めてないです!
蓮井 丈春
蓮井 丈春
あはは

丈春さんは上機嫌になり、冷やしておいたジュースを手に取ると、私の頬に優しく押しつけてきた。


【第14話へつづく】