ここのベンチは日陰になって風通りもいいけれど、それでも真夏の暑さは感じる。
にもかかわらず、私の膝の上でくつろいでいるごまは、暑くないのだろうか。
ごろごろと喉を鳴らしながら甘えている様子を見て、私は思いきってその背中に触れた。
背骨にそってゆっくりと撫でてみる。
昔を思い出すような猫の感触に少しほっとしつつも、引っかかれたり威嚇されたりしないかは、まだ不安があった。
そんな気持ちも知らずに、ごまは「もっと撫でて」とでも言いたげに、私の手に頭をすり寄せる。
たどたどしくも、ごまの耳の後ろや顎をくすぐると、彼は気持ちよさそうに鳴き声を上げる。
地面から私たちの様子を見ていただいふくも、ぴょんと飛んでベンチの上に乗ってきた。
私の膝に前足の片方を置いて、じっとごまを見つめている。
この調子なら、猫に対する苦手意識も、いずれ克服できるかもしれない。
そうすれば、丈春さんとももっと一緒にいられる。
そんなことを考えて、口元が緩んでしまう。
頷きながら、控えめに待っているだいふくにも、下から手を伸ばしてみる。
だいふくはすんすんと鼻を動かして私の手のにおいを嗅いだ後、目を閉じて頭を撫でさせてくれた。
今のところ、ごまとだいふくに関しては、恐怖は薄れてきた。
だけど、まだまだ他の猫に慣れるのには、時間がかかるだろう。
唐突に猫カフェの話が出て首を傾げていると、実に微笑ましい光景の話が聞こえてきた。
思わず吹き出してしまいそうになり、私は必死で耐えた。
女性側の気持ちも分かってしまうのでフォローしておいたが、丈春さんの言葉に追い打ちをかけられてしまった。
突然の誘いに、頬がかあっと熱くなるのを感じた。
【第7話へつづく】
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。