子どもたちも、彼女に気付いてはいるようだ。
話を聞いてみることにした。
私が子どもたちの立場ならどうするか。
それを考えて提案してみたけれど、子どもたちは顔を見合わせて気まずそうな表情をする。
口々に自分たちの正当性を主張する子どもたちに、私はどうしたらいいか分からなくなってしまった。
保護者でもなければ、先生でも、家族でもない――ただの近所のお姉ちゃん。
そんな人が、子どもたちの事情にどこまで介入していいのか。
黙ってじっくりと考えた末に、このままではいけないと私は口を開くことにした。
そう提案したところ、子どもたちはしばらく考え、「どうする?」と話し合いだした。
子どもたちがそう結論づけた直後、丈春さんが女の子を連れてこちらへやってきた。
女の子の気持ちにも、進展があったようだ。
女の子は何かを言いたげなのだが、次の言葉が出てこない。
かなり、引っ込み思案な子らしい。
丈春さんが、彼女の一歩後ろから優しく励ますように声を掛ける。
子どもたちも、女の子の言葉をじっと待った。
消え入るような声だったけれど、子どもたちには届いていたようだ。
先頭にいた子が、笑って彼女の手を引いた。
明るく招き入れる彼らを見ていると、胸がぽかぽかと温かくなってくる気がする。
後は子どもたちだけに任せても、問題ないだろう。
彼らを見守る私の隣に、丈春さんがやってくる。
ボランティア活動ひとつとっても、こんなに大変だとは思わなかった。
でも、やりがいというのだろうか――心が満たされるのを感じる。
丈春さんは同意するように深く頷いた。
目の前にお茶の入った水筒を差し出された。
労いと褒め言葉が嬉しくて、自然とにこにこしながらそれを受け取る。
こうして、一泊二日のキャンプは無事に終了した。
【第10話へつづく】
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。