動物病院でだいふくの検査結果を待っている間に、丈春さんも到着した。
私と母と、丈春さんの三人で、検査結果を聞くことになる。
私も丈春さんも、助けてほしいのは山々なのに、即答できなかった。
こればかりは、私たちの判断でどうにでもなるものではない。
そんな中、母は昔の飼い猫を思い出したのか、涙目で訴えた。
こうして、だいふくは手術をしてもらえることになった。
***
手術の間は待つことしかできないので、私たちは一度それぞれの家に戻った。
父も仕事から帰ってきて、三人でこれからのことを相談する。
父は、私が猫を苦手なままだと思っていたので、心底驚いていた。
談笑はここまでだ。
今は手術の成功を祈りながらも、他に話し合うことがある。
だいふくとごまは、ほぼ間違いなく兄弟で、ずっと一緒に過ごしてきている。
今回のことも、ごまが鳴いて知らせなかったら、私は気付かなかったのだ。
できることなら、これから先も一緒にいさせてやりたいという思いが強い。
でも、それには両親の許可がいる。
進路も決まっていない身でお願いをするなんておこがましいと思うけれど、これだけは譲れなかった。
深く頭を下げて、両親に頼み込む。
父は一切反対せず、穏やかに笑って頷いた。
両親が認めてくれたのは、猫たちを迎えることだけではなかった。
私のことも、既に認めてくれていたのだ。
人生で初めて、泣きながら笑った。
***
だいふくの手術は無事に成功したと、連絡があった。
「だいふくが心配だから」と再び合流した丈春さんも、今は一緒に獣医さんの説明を聞いている。
もし、だいふくの異常に気付いていなかったら。
英文の中に、猫についての表記が出てこなかったら。
私は彼らを探しに外に出ていないだろう。
私の偶然の行動が、誰かを救うこともあるのだと知って、安堵すると同時に体が震えた。
ようやく、心の底からほっとする。
慌ただしい一日が、こうして幕を閉じた。
【第17話へつづく】
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。