私と三歳しか変わらないのに、丈春さんは随分と大人だ。
憧れている気持ちもあるけれど、こういう見返りを求めない優しさが、とても好ましいと思う。
それと、もうひとつ――。
率直に、丈春さんからは、人生の先輩というよりも学校の先生に近い雰囲気を感じる。
それを聞いた彼は、これまでにないほど嬉しそうな反応を見せた。
驚きはなかった。
丈春さんにぴったりの職業だ。
彼もまた、夢をしっかりと持っているタイプの人なのだろう。
三年前、丈春さんは夏休み中にいくつものボランティア活動に参加したとのこと。
その際、小中学生に勉強を教えることがあり、その経験を経て教師を目指すようになったらしい。
先ほどの言葉にも説得力があって、私は彼の話に聞き入ってしまった。
思わぬ誘いに、私は息を呑んだ。
丈春さんが夢を見つけるきっかけとなったボランティア活動がどのようなものか、私も参加してみれば、新しい発見があるかもしれない。
そして、丈春さんと同じ時間を過ごすこともできるという、一石二鳥だ。
気付いた時には、勢いよく即答していた。
こうなったきっかけは、猫たちが私に寄ってきてくれたからだ。
少しは感謝しなければと思ったのも束の間、近くでくつろいでいたごまが、急に私の膝に飛び乗ってきた。
ごまは軽い挨拶のような鳴き声を上げて、そのまま私の膝の上で寝そべった。
怖くて震えながら、隣にいる丈春さんをゆっくり振り返る。
彼は笑っていて、それは私を試してみたくてうずうずしているようなものだった。
普段はほんわかしている彼の、初めて見る表情だ。
私が眉を下げて困惑していると、丈春さんは更に笑った。
膝の上に猫が乗っているというのに、不覚にもときめいてしまうものだ。
【第6話へつづく】
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!