「お前はこんなこともできないのか❗❗」
手首にはリストバンド。
膝には青いアザ。
部屋中に充満するアルコールの臭い。
少女を殴る大きな男。
顔をクシャクシャにしながら泣いている1人の少女。
「ごめんなさい!ごめんなさい!叩かないで...」
謝り、叫ぶ少女をよそに、男は少女を殴り続ける。
少女の名前は師屋良・葵(シヤラ アオイ)、16才。
幼少の頃、親に捨てられ、男に引き取られた。孤児院に来たときは、爽やかで人当たりが良く、とても優しそうな男性だったが、家に帰るとその性格は豹変し、少女を殴りつけた。男は少女をサンドバックのようにあつかっていた。当然、毎日のように少女を殴っていたので殴る力も強くなり、とても抵抗のしようがない。
「イチイチ泣いてんじゃねーよ❗
それだからお前は捨てられたんだよ❗❗」
捨てられたと言われるともっと悲しくなる。堪えられない涙は怒りと悲しみと同時に流れ落ちてくる。
「はー...たくっっ。
そこ片付けておけよ。片付いてなかったらぶち殺すからな。」
三十分にもおよぶ暴力がおわり、少女はカッターを取り出した。
腕につける一本の線から、赤黒い液体が流れ出てくる。
「もうこれで何本目?」
泣いてはまた男がやってくる。
少女は流れる涙をこらえながら、掃除へと取り掛かった。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!