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第2話

食人回 弐章
46
2018/05/25 12:16
「葵~、おはよー!」


短くて綺麗な焦げ茶色
雪のような白い肌
パッチリとした目
透き通るような声
この実写板白雪姫のような少女の名は愁井美花(アワイ ミカ)。
クラスの人気者で女子にも男子にもモテる美少女だ。


「おはよう、美花ちゃん。」


家にいるのは気が重いが、学校は好きだ。
こんなに優しいクラスメートと一緒にいられて、私は幸せだと思っている。


「こんなクソ暑いのにまだ夏服なの?」


美花が大きな目を二回パチクリさせる。
相変わらず可愛い。しかし、身長が私よりでかいのが少し引っ掛かる。
こんなに可愛いのに身長のでかさは学校一だ。女性日本人の平均身長を超している。しかし、そこまででかいということはなく、せいぜい166センチくらいだ。


「茄妃和、おはよー。」


「あ、はよー。」


こいつの名前は茄妃和百合。(ナカキワ ユリ)
バカで...バカで...バカっ、バ...バカだ。史上最強のバカだ。
チビでボブヘアーのロリだ。顔だけは。
朝のテンションはこうだが、一時間も過ぎると正体を現す。
しかし、朝のテンションは本当に低く、学年主任が心配するほどだ。
実際にエピソードもある。


『茄妃和さん、元気ないけどどうしたんですか?』


『あ...大丈夫です...』


1時間後...


『あっおっうぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!
今日も俺の右手が漆黒のダークマターによってうずいている...』


まあ、こんな感じだ。
その頃茄妃和は


「もうオワッタ...
俺の人生オワッタ...
明日には暗黒のダークホースの遮りによって俺はいにしえへと導かれているのであろう...。バンデットアイマスク...」


ん?...バンデットアイマスク?
茄妃和がまた良くわからない単語を生み出した。
これは中二病とは言えない、本当のバカだ。
でも私はこのバカが好きだ。こいつはバカだから人を嫌いにはならない。
どんなヤツにも優しく接する、いわゆるオヒトヨシってヤツだ。


「茄妃和、起きろ。
いつものお前は何処に行った?」


机に顔をうずめる茄妃和に話しかける。この光景は日常茶飯だが、今日はセルフサービスだ。


「今俺は暗黒のダークホースの導きにより、いにしえへと旅立っている。強敵バンデットアイマスクを倒すまで俺はこの世に戻れない...。」


「超絶眠いです。私は今眠気と戦っています。」


「一般語でいうとそうなるな。」


良くわからない茄妃和語だが、通訳はできる。
いつもこいつが朝このテンションなのは眠いからだ。


ガラガラガラガラガ。


「ホームルーム始めるぞー。席つけー。」


担任の時瓜弥生(トキカ ヤヨイ)が教室に入って来た。
しゃべり方はこうだが、女だ。
ストレートに長く、黒い髪
スラッと高い背
鋭い目
薄い唇
美人だ。クール系女子ってところだ。


「茄妃和、目を開け。」


「先生、俺は今、暗黒のダークホースの導きによっていにしえへと旅立ってい...」


「起きろ。」


「あい!」


今日もまた、新しい1日が始まる。
また、夜が来てほしくない1日が始まる。
このままずっと、時が止まっていればいいのに。












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