ジェルがすぐ近くにあった引き出しから出したのはカッター
頬に刃を当ててシャっと引くと
真っ白な肌に赤いものが伝った。
すると次は腕を切りつける
痛がるあなたを見て不覚にもジェルを怖いと感じた
俺一人で少しでもまともになった
コイツを止められるのか……?
不安になってほしくって出来る事やろうって思った
玄関の方に行ってスマホを取り出す
グループLINEで電話をかける
ジェルが大変だって言ったらすぐに来るって。
俺が帰ってくるとジェルが
あなたの血だらけの手を見て硬直していた
よく見るとカッターが床に落ちている
でもまたすぐに周りが見えなくなって……
今度はあなたの首元に噛み付いた
背中に手を回してその手にも本気の力が入っていて、
あなたの細い身体が折れるんじゃないかって思った
でも……でも、
本当にあなたを離したくないんだって考えると……
何だか胸に仕えるものがあった…。
ピーンポーン
チャイムが鳴って、
俺は転がるように階段を降りてドアを開けた。
ガチャッ
4人があの部屋に入ると……
「「「「っ!?」」」」
4人を隣の部屋に連れて行く
無理矢理座らせるけれどやはり落ち着かないよう
なんとか絞り出したような声をしながら
莉犬が1枚の壁の向こうを指す
俺が声を荒らげると隣から小さな声が聞こえた
急いで扉を開けて二人を見ると、
ジェルが飛び込んできた俺達を戸惑いの目で見る
それからあなたをその目に映すと小さく震え始めた
そう言ってとびきりの笑顔。
するとジェルは悶え始めて朦朧としながら
おもむろにあなたの首をグッと掴んだ。
声をかけると手を小さくピースにしてみせた
……何でそんな強くならんの…?
あなたside
そうだよあなた。
今一番混乱しているのも怖いのも尚人くんなんだから。
さとみside
ジェルが少し手の力を強めてあなたの表情を見る
まるで、信用していいのか試すように
戸惑いながらもゆっくりと体重をかけていく
上手く息が出来ていないみたいで、
本気で苦しそうなあなた。
でも一生懸命に笑っている。
それを見て俺達は胸に痛烈な痛みを感じた。
ジェルが急に声を張り上げて、
あなたの虚ろになってきた目に焦りを覚えた。
ジェル腕が首から離れて俺は皆に声をかけた
そう言うと我に帰った4人もあなたとジェルに飛びつく
俺となーくんとるぅとがジェルを抑えて
ころんと莉犬があなたに駆け寄った。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。