第3話

傷つける事しか知らない。
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2019/05/08 03:39
大人になってから尚人くんは


“すとろべりーぷりんす”


という歌い手ユニットに入った。

5人のメンバーさん達は良い方ばかりみたいで


笑顔で話してくれる尚人くんに少し安心した。
かなり有名人になっちゃって……


ネットの中だけど“ジェル”として支えてくれる人も増えた
たけどやっぱり有名になると


当然というかアンチさんも増えた。
それがストレスとなったのか……


それとも他が原因なのか、



彼は情緒不安定というか感情がまとまらなくなってしまった
すとぷりで頑張って気を張ったあとなんかは特に
メンバーの皆さんも私のことは知っている

ライブ時は私が直前まで一緒にいないと


不安で出れないらしい。
だから怪我を包帯で隠して

そんなイベントの時だけ会った


今はななもり。さんこと森田さんの家にお呼ばれしている


そろそろ帰ってくると思うのだが……
ガチャッ
噂をすればというのか尚人くんが帰ってきた
フラフラとした足取りで私の側まで来て


それから倒れるようにハグをしてきた。



強くて強くて骨がギシッというのが分かった。
✞*゜
お帰り尚人くん
jl
一度リスナーさんに見つかって話しかけられた後に

帰ってきたことがあった。


その時は本当に怖かったらしくって、

鼻をグズグズいわせながらの


あまりにも強いハグで数日骨が傷んだこともあった。
✞*゜
どうだった?森田さんの所
jl
……あなたは元気かって
✞*゜
なんて言ったの?
jl
元気って…
✞*゜
うんうん
jl
なぁあなたなーくんの所行かんよな……?
俺の側にずっとおってくれるよな……?
✞*゜
うん 一緒にいるよ
jl
こんなに酷い事ばっかしとんのに……?
震えてる……
✞*゜
酷い事なんかじゃないから、
尚人くんは私のこといっぱい大好きなんだよね
jl
うん…
✞*゜
ありがとう
jl
何で?嫌いって言ってや…
✞*゜
大好きだよ
この人は私に嫌われようとする


でも私だけはこの人にいくら頼まれたって、

突き放されたって側に居てあげなくちゃいけないんだ
✞*゜
……っ
首元を噛まれる


首に歯が刺さる。本気で噛んでいるからめり込む。

尚人くんは八重歯だから牙みたいで特に痛い。
噛みやすい場所があるみたいで、

何度も噛まれた所はもう消えないくらい深い跡もある
✞*゜
……ぐ……っ……
しばらくすると口を離してくれた
jl
……あなた……
深いキスをされる


舌が奥深くまで入ってきて息ができない
今日は珍しく早めにやめてくれた
jl
あなた
✞*゜
何?
jl
あなた…
✞*゜
うんうん
虚ろな目でポツポツと私の名前を零していく
jl
あのな、あなた
✞*゜
どうしたの?
すると尚人くんはおもむろに手錠を外した


首輪の紐の分だけ尚人くんに近づけて、

俯いてしまった彼に私からハグをした。
優しい優しいハグを
✞*゜
外してくれてありがとう
jl
何で?普通はこんなのせんのに
外してくれてありがとうって言ってくれるん?
✞*゜
尚人くんが何も悪くないからだよ
jl
俺悪いよ
✞*゜
悪くない悪くない
jl
だって、るぅとがあなたのこと話しとった…
どうやら森田さんの家に井関さんもいたみたいだ
✞*゜
何て?
jl
会う度いつも怪我してるって
jl
首の跡とか首輪か首絞めじゃないかって
jl
それで……それってさ、
DVじゃないかって……
✞*゜
うん
jl
俺がやってることってDVなん……?
正直そうだ。

でも1番しんどいのは私じゃなくて尚人くんだから。
縋るような彼の目を見たら自然と言葉は出てきた
✞*゜
DVじゃないからね、
辛いのは尚人くんなんだから
jl
…うん……
✞*゜
一緒に夕御飯作ろっか
jl
うん…!
可愛い笑顔…

この幸せそうな顔が“普通”になる日まで私は頑張る

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