しばらくの沈黙。
先に口を開いたのは彼だった。
桜岡「多分、もう学校はいけないと思う。」
彼の口から出てきたのは、余計に私を困惑させた。
「・・・どう・・して?」
やっとのことで絞り出した声。
その声は、とてつもなくか細くて自分の声じゃないみたいだった。
桜岡「さっきも言ったけど、最近調子が悪いんだ。急に動機がしたり、呼吸が苦しくなったり・・・。僕の心臓の寿命が来たみたい。」
そう悲しそうに笑う桜岡君。
泣きたいのは桜岡君だってわかっているのに、先に涙が出るのは私だった。
「・・・ごめっ・・・」
次々と溢れ出る涙は、床を濡らしていった。
桜岡「こっちに来て。」
桜岡君は私に手招きをした。
少しだけ離れていた私は、桜岡君に近寄る。
ふわっと頭に暖かいものが置かれる。
それが桜岡君の手だって気づくのに時間はいらなかった。
桜岡「僕は大丈夫。だから、泣かないで?」
ふわふわと優しくなでられる頭。
余計に涙が出てくる。
桜岡「僕はね、多分卒業式まで生きられない。だから、僕の分までちゃんと卒業してね。」
彼の温かい声が胸に溶け込むように入っていく。
でも・・・でも・・・
「いやだ。」
その答えに驚いたのか、桜岡君の手が止まった。
桜岡「どうして?」
私は、手で涙をぬぐう。
そして、彼の目を見てこう言った。
「一緒に卒業しよ!それまで、死んじゃダメ!!」
と言って、笑った。
ぎこちなくて、固い笑顔だけど、笑った。
すると、何がおかしかったのか急に笑い出した桜岡君。
私がきょとんとしていると、
桜岡「わかったwwそれまで頑張って生きるよ!」
と言って、クスクスと笑った。
「約束・・・だからね!!!」
私は彼に小指を突き出す。
その小指に彼の少しだけ大きい小指が絡まった。
少し大人な指切りをした。
嘘ついたら呪ってやろう。
桜岡「あなた!!」
帰ろうとしたとき、急に名前で呼ばれで驚いて振り向く。
桜岡「侑介って呼んで!あなたって呼ぶからさ!!」
胸がトクンと高鳴る。
「うん!!!」
彼にそう告げて部屋を出た。
・・・私の心の中で決心がついた。
彼への告白は、卒業式だと・・・
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。