第6話

指切り
56
2018/03/02 10:27
しばらくの沈黙。

先に口を開いたのは彼だった。

桜岡「多分、もう学校はいけないと思う。」

彼の口から出てきたのは、余計に私を困惑させた。

「・・・どう・・して?」

やっとのことで絞り出した声。

その声は、とてつもなくか細くて自分の声じゃないみたいだった。

桜岡「さっきも言ったけど、最近調子が悪いんだ。急に動機がしたり、呼吸が苦しくなったり・・・。僕の心臓の寿命が来たみたい。」

そう悲しそうに笑う桜岡君。

泣きたいのは桜岡君だってわかっているのに、先に涙が出るのは私だった。

「・・・ごめっ・・・」

次々と溢れ出る涙は、床を濡らしていった。

桜岡「こっちに来て。」

桜岡君は私に手招きをした。

少しだけ離れていた私は、桜岡君に近寄る。

ふわっと頭に暖かいものが置かれる。

それが桜岡君の手だって気づくのに時間はいらなかった。

桜岡「僕は大丈夫。だから、泣かないで?」

ふわふわと優しくなでられる頭。

余計に涙が出てくる。

桜岡「僕はね、多分卒業式まで生きられない。だから、僕の分までちゃんと卒業してね。」

彼の温かい声が胸に溶け込むように入っていく。

でも・・・でも・・・

「いやだ。」

その答えに驚いたのか、桜岡君の手が止まった。

桜岡「どうして?」

私は、手で涙をぬぐう。

そして、彼の目を見てこう言った。

「一緒に卒業しよ!それまで、死んじゃダメ!!」

と言って、笑った。

ぎこちなくて、固い笑顔だけど、笑った。

すると、何がおかしかったのか急に笑い出した桜岡君。

私がきょとんとしていると、

桜岡「わかったwwそれまで頑張って生きるよ!」

と言って、クスクスと笑った。

「約束・・・だからね!!!」

私は彼に小指を突き出す。

その小指に彼の少しだけ大きい小指が絡まった。

少し大人な指切りをした。

嘘ついたら呪ってやろう。

桜岡「あなた!!」

帰ろうとしたとき、急に名前で呼ばれで驚いて振り向く。

桜岡「侑介って呼んで!あなたって呼ぶからさ!!」

胸がトクンと高鳴る。

「うん!!!」

彼にそう告げて部屋を出た。

・・・私の心の中で決心がついた。

彼への告白は、卒業式だと・・・

プリ小説オーディオドラマ