第4話

彼の秘密
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2018/03/01 12:22
・・・月日は流れる。

蒸し暑かった夏が過ぎ、季節はすっかり秋となる。

制服が二度目の移行期間に差し掛かった。

冬服だと暑くて汗をかくが、夏服だと少し肌寒い。

この調節が難しい時期。

桜岡君はぱたりと学校に来なくなった。

もともと、学校を休みがちだった。

一週間に一度程度しか来なくて、最高週二回。

しかも、それは始業式と次の日だけだった。

・・・でも、もう一か月くらい来ていない。

みんな、さほど気にしていないのか、何も言わなかった。

紗江すら、桜岡君について何も言わない。

まるで、存在がないみたいにポツンと机だけがある。

ずっと座っていない机は、とても冷たかった。

彼がなぜ学校に来ないのか。

それが分かったのは、先生がやっと彼の話題に触れた時だった。

先生「桜岡は、入院している。みんな知っている通り、病気でだ。」

”病気””入院”

その言葉が、私の頭を埋めつくす。

私は知らなかった。

彼が病気だということ。

週に一日だけしか来ないのは、体が悪いから。

先生が教室を出た後に、紗江の席まで走った。

たった、数センチの距離だけど、ちょっとの時間も無駄にしたくなくて。

「紗江!!病気って何?紗江は知ってたの?」

私があまりにも大声で叫ぶものだから、みんなの視線が集まるのを感じた。

でも、そんなのどうでもいい。

紗江「うん・・・知ってたよ。」

少しうつむきがちにそう言った。

みんな、知ってた。

みんな知ってたから、何も言わなかった。

存在がないみたいだったのは、みんな知っていたから。

彼に興味を持っていた私は、そんな一番大事な事実を知らなかった。

「・・・彼の病院ってどこ?」

低くて、教室に響く声に紗江は驚いた顔をする。

紗江「並木中央病院だと思う・・・」

紗江の言った病院は結構大きい病院。

私たちの地域では、一番大きい病院だ。

私は、ほとんど何も入っていないカバンを乱雑に持ち、病院まで走った。

お土産なんて何もない。

それでも、彼に会いたくて必死に走った。

運動が大の苦手の私が、全力疾走で。

風を切って。

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