「推薦。中学までずっとダンスしててさ、いろんな大会で優勝したりしてて。高校進学するか迷ってたときにこの推薦の話が来て、受けた。それだけ」
『でも今部活してないよね?』
「この高校って進学校だろ?部活ったって本気でなんかやってねえじゃん。その中でガチでダンスやってんの俺だけでさ。大会だって出ないし、やってる意味ねえなって思って辞めた。」
『...。』
「でもさ、俺からダンス取ったら何にもないんだよな。お前みたいに学年トップ層の成績取ってるわけでもないしさ?ほんっとに何もねえの。夢があるわけでもないし
なにすればいいかも分かんない」
『ねえ』
「ん?」
『本当にないの?夢』
「...。」
『夢ない人なんていないと思うよ?私は』
「...。」
『なんか...ない?』
「自衛隊員」
『え?』
「ちっちゃいころ、憧れてた。けど?」
『今は?』
「憧れてない...わけじゃないけど...」
『なれるとおもうけどな。平野くんなら』
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!