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第1話

日本一のお節介
37
2022/08/20 15:24
とある日の皆が寝静まった頃
一輝は静かに外へ出た
今の季節は、夜でも蒸している
そんな夜道をただひたすらに歩き続ける
バイス
一輝、いきなり外に出てどうしたんだよ

内から見ていたバイスが話しかけてくる
一輝
ちょっと寝れなくてさ、、
無駄な抵抗ってやつかな

急に下がった声のトーンにバイスは
出してくれと頼み外へ出た
一輝
俺、明日が来ることが怖いんだ
街灯に照らされ時折、見える一輝の表情は
どこか悲しみに覆われた様だった
バイス
明日が怖いってど言うこと?
一輝
俺たち、ギフは倒せたけどまだ残りがいるだろ?
ギフを、倒した今でもほぼ毎日戦いで、、
家が銭湯って事も一時分からなくなった。
今思えばその内、大二やさくら
父ちゃん、母ちゃんの事も思い出せなくなるんじゃないかって
バイス
っ、、

一輝のその言葉に、バイスは何もフォロー出来る言葉をかけてあげられず悔しかった
一輝
ごめんなバイス。こんな話して
バイス
えっ、いや一輝は悪くない
一輝
こんな事考えるのって
ダメな兄ちゃんだよな
バイス
一輝は、ダメなんかじゃない!
俺っち、一輝が子供の頃から中にいるけど、大二にさくらの面倒もパパさんとママさんの手伝いだって出来てた!
だからダメなんかじゃない!
バイスのいきなりの言葉にちょっとビックリした一輝だが
すぐに微笑んだ
一輝
ありがとうバイス。
たまにはいいこと言ってくれるじゃん
バイス
一輝もう!一言多い
一輝
ごめんごめん。そろそろ戻ろう
そう言う、一輝とバイスは来た道を戻りしあわせ湯へと向かう
着いた頃にはいつの間にか夜が明けかかっている
一輝
随分、遠くまで行ってたみたいだな
バイス
もう、このまま起きてちゃおうぜ一輝
一輝
だな
中へ入り一度二階へ行きいつも通りの支度を済ませる
幸実
あら、一輝。今日は珍しく早いわね
一輝
母ちゃん、何か手伝うよ
幸実
ありがとう一輝。
それじゃ、、いつもと同じで浴場の掃除お願い
一輝
うん。バイスも行くぞ
バイス
なぁなぁ一輝
掃除終わったら1番初めに入れてくれよ
一輝
ダメだ。バイスが入ったら洗った意味
無いじゃん
バイス
一輝のケチー!!
一輝
今回はダメだ

一番風呂に入りたいバイスとそれを止める一輝の
声が浴場へと消えていく
一輝
バイス、そっち側よろしく
バイス
アイアイサー!

一輝からブラシを受け取り逆側を掃除し始める
すると浴場に顔を覗かせる者が2人、、
カゲ
よぉお兄様
大二
兄ちゃんおはよう
一輝
お、大二とカゲロウか
おはよう
大二
俺たちも手伝うよ
一輝
おう
大二達は、脱衣場のモップがけを行う
大二
兄ちゃんって
一輝
ん?
大二
元々家を手伝うって決めてたの?
サッカーは駄目だったけど他にやりたい事って
一輝
サッカーがダメって分かってからは
大二とさくらに自分の決めた道を進んで欲しいって気持ちしかなかったな
カゲ
本当にお節介なやつだぜ
4人で分担をし掃除を手早く終え
湯船にお湯を入れ始め開店準備も整える
全て終えリビングへ向かうと、さくらも合流し
いつもの様に食卓を囲もうとした時
ガンデフォンに警告通知が
大二
繭の出現、、
一輝
行こう!
さくら
うん!
大二
ああ!

一輝とバイス、大二、さくらは
しあわせ湯を飛び出した



街では、繭から放たれた3体のギフテリアンが人々を襲っていた

大二
丁度3体、、
手分けしよう
一輝
ああ
さくら
うん!
「「「変身!」」」
イジ
っ、、なんか前より強い気がするんですけど!
ラブ
ラブ〜さくら守る!
カゲ
大二、お前1人にはキツくないか〜?
変わってやろうか?笑
エラ
うるさい
集中しろ
アバ
一輝ちょっと強くない!?
アリ
だな、、
いくら3体とはいえ以前より強くなっているのか
追い込まれる状況だった
追い込まれつつ戦略を考えていると一輝は
インビンシブルジャンヌとエビリティライブがほぼ同じ場にいる事に気がつく
アリ
大二!さくら!その場であと少し耐えられるか?
イジ
っ、、一輝兄何か策でも!?
アリ
この3体を1箇所に集めて3方向から
一斉に攻撃する
エラ
分かった!
アリ
行くぞバイス!
アバ
アイアイサー!
「『はっ!』」

アルティメットバイスとアルティメットリバイは
同時攻撃で
ギフテリアンを3体を同じ場所に集め
瞬時に3方向を囲う

「『バリボルローリングサンダーゲイル!』」

「『エビリティパーフェクトフィニッシュ』」

「『キングコブラスタンピングスマッシュ』」

今回、街を襲っていたギフテリアンは
4人がかりでだが倒す事が出来た
大二
よし、、
一旦戻るか
さくら
うん

そう言うと大二とさくらは先に歩き出した
が、一輝がついて来ていない事に気づき振り返る
一輝は、何かを考えるかのように
その場に立ち尽くしたままだった
大二
兄ちゃん
さくら
一輝兄
一輝
えっ、あっ、、
大二
戻ろう
一輝
ごめん。先に戻ってて
さくら
えっ?
一輝
俺もすぐに帰るから
早く帰って来てよ。
そう言い残して大二達は先にしあわせ湯の方向へ
足を向けた歩き出す
一輝は2人の背を見送ってから近くの階段へと腰を下ろす
さくら
大ちゃん
大二
ん?
さくら
今日って、用事ある?
大二
いや、、
特にないけどなんで?
さくら
カゲちゃんの服
選びたいなって

大二は一瞬考えたがすぐ納得した表情になる
大二
確かに
カゲ
おい、なに納得してんだよ
大二
だってカゲロウの服暑そうだし
カゲ
別に暑くねぇよ
さくら
素直になりなよカゲちゃん
さくらの問いかけにカゲロウは、出すこと求めて来たため
これ以上、騒がれても面倒なので出すことに
カゲ
その呼び方やめろよ
妹様よ
さくら
だったらそっちこそ
その呼び方やめてよね
カゲ
あぁ?誰がやめるかよ
さくら
はぁ?!
だったらこっちだってこのままだからね!
カゲちゃん
出かける話していたはずが
いつの間にか呼び方の喧嘩になっており
大二は止める気が起きず
数歩後ろから見守ることに
カゲ
こいつ弱いのに意地だけは強い女だ
その一言にその場の空気は一変した
そして慌てて大二はカゲロウの口を塞ぎ
苦笑を浮かべつつ距離を取る
大二
おいカゲロウ
それはやばいぞ
カゲ
あぁ?
なんだ大二ビビってんのか
大二
そうじゃない
、、さくらが怒ったら、、
さくら
大ちゃん、、?
カゲロウ、、?
背後から聞こえるトーンの低い殺気のこもった声に
2人の背筋は静かに伸びる
大二
さ、さくら落ち着け、、
カゲ
そ、そうだ
あんまり怒るとシワが出来るぞ
大二
っ、、カゲロウ、!
さくら
カゲロウー!!
あんたはいつも!ひと言余分!!
カゲ
追いかけてくるなー!
このクソ女ー!!
さくら
待てー!!
この悪魔ー!!!
最後に放った一言が完全に怒りに火をつけ
しあわせ湯に逃げ込んだカゲロウを
さくらは、すごい剣幕で追いかけていった
それを途切れ途切れの苦笑をしながら見送り少し時間差で
中へ入る大二
大二
ただいま
幸実
あらおかえり大二
元太
大二、カゲロウとさくら
何かあったのか
大二
あ、あぁ、、
さくらがカゲロウに涼しげな服を選びたいって話してたら
カゲロウが出てきて呼び方をやめろとかになって、、
後は見ての通り

さくら
ついて来てくれたら
カレー。作ってあげるから
カゲ
ん?カレー?!
さくら
いてっ、、
ちょっと急に止まらないでよ!!

その頃一輝とバイスはまだ先ほどの場所にいた
バイス
一輝、、さっき、
一輝
あぁ、、
瞬時に思い出せなかった、、
バイス
それで名前も、
一輝
あぁ
それに、、
バイス
っ、、もしかして
一輝
そのもしかしてだ

先ほどの戦いでまた
何かを忘れ何かを忘れかけてしまった一輝は
それを整理したいために1人残ったのだ
バイス
あんまり気にしなくも大丈夫じゃないか?
一輝
それはそうなんだけど、、
先ほどより一気に声のトーンが下がる
一輝
なあバイス
バイス
一輝
俺が家を出るって言ったら
バイス
!?
家を出る!?
またなんでよ
一輝
このまま戦えば
きっと家族の事を忘れて行く気がするんだ
だから、、家で暮らしてるまま忘れたくない
バイス
だから家を出るって、、

一輝の口から発せられた事にバイスは驚きを隠せずにいた
バイス
でも、出るって言ったって
どこに行くんだよ一輝
一輝
ウィークエンド、、
正確には元ウィークエンドかな
バイス
あそこって立ち入り禁止じゃなかったっけ?
それに鍵もかかってるし
一輝
だから良いんだよ
あそこならきっと大二達も来ない
バイス
まあ確かに、。、、一輝、本当に出るのか?
一輝
いつかね。
今すぐには無理だけど当てがついたら、、
でも忘れる前には出たいかな
バイス
大二達になんて言うだよ
記憶の事
一輝
直接は言わない
そうだな、、
俺が少しずつ隠してる写真を段ボールに入れて
その上に手紙を軽く止めてヒロミさんに渡してもらうとか

そんな事を言いながら一輝は立ち上がりバイスの振り返る
一輝
バイス、俺が出て行く時
バイスはついて来てくれるか?
バイス
フハハハッ!俺っちは一輝の悪魔なんだからどこにでもつい行くに決まってるでしょうよ!
一輝
ありがとうなバイス!

この時はまだ、いつもより多くの記憶が消えている事に
どちらも気づいてないなかった




一輝
ただいま
幸実
あら
遅かったわね一輝
一輝
あれ?大二達は?
幸実
なんかカゲロウの服を見に行くとかいって出かけたわよ

一瞬、ん?と思ったがカゲロウの姿を思い浮かべて
納得したように小さく頷く
そして朝ごはんをレンジで温め食べ始める
一輝
でも、良くついて行ったよなカゲロウ
良く、さくらと喧嘩してたのに
幸実
カレーにつられたのよ
バイス
カレーね、、
カゲちゃんらしい
一輝
だな

そんな会話をしながら一輝は食べ終わった後の
食器を洗い、バイスはそれを拭き元に戻す
その後は何も考えずガンデフォンとは別のスマホを開く
しばらく時事ニュースを見ていると大二から着信が
一輝
どうした大二?
大二【電話口】
いや、あの後全然帰ってこないから
兄ちゃん帰ってるか気になって
一輝
帰ってるよ、、ん?
なんかカゲロウ騒がしいな
大二【電話口】
あ〜あ
さくらと揉めてるよ
誰が良いかって
一輝
やっぱり、、笑
大二【電話口】
兄ちゃんもくる?
出かけ先に誘われたが少し考えた結果
やる事がある。そう答え電話を切った
そしてバイスを連れて2階へ行く


一輝
バイス、あの話誰にも言うなよ
バイス
分かってるって
バイスの返答を聞き一輝は笑いながら財布を取り
ボディーバックに放り込み
大二の部屋から自転車の鍵を取り
外へ出る
バイス
なぁ一輝
どこに行くんだ
一輝
手紙用の便箋と後は、、
お揃いのキーホルダー作ろうかなって
バイス
もう、、準備
一輝
うん。いつでも出られる様にかな

自転車を漕ぎバイスと話しながら目的のお店へ向かう
一輝
なぁバイス
カゲロウと大二って何色だと思う?
バイス
ん〜?、、大二は、、白と黒だな。
カゲロウは、、黒と緑?
一輝
やっぱりバイスもそう思うか
じゃあ、さくらとラブコフは?
バイス
あの2人は、、さくらがオレンジと青で、、
ラブコフが黄色と青だな
バイスの助言を聞き家族それぞれの色とアルファベットのビーズ
をかごに放り込む
するとバイスが何かを見つけたらしく手招きをした
そこには平仮名のチャームの部品
一輝
これをどうするんだよ
バイス
これで一輝の名前を作るんだよ
一輝
俺の名前?
バイス
家族揃ったら名前が完成する。
揃ってなくても、これから先
一輝が覚えてなくても家族ってな
そっか。と納得をし

【いがらしいっき】

この7文字分の部品を手に取りカゴへ
そして必要な買い物も済ませて
しあわせ湯へと向かう


晩御飯後、一輝は一足先に部屋へ行き
それぞれの名前と自分の名前の一文字が入った
チャームを作っていく



その日の夜が深まりみんなが寝静まった時間
一輝は静かにリビングへと向かう
そして飾ってある、一つ一つの写真を見ていき
自身の消えたものがあればそっと回収をして部屋に戻る
バイス
一輝、、
一輝
あぁ分かってる。、、
一度に消える記憶の量が前よりかは増えてる、、、
それに最近のまで、、
バイス
一輝、、
もうこれ以上、、
一輝
バイス。分かってるだろ
俺は日本一のお節介だから誰かに任せるなんて出来ない
そう言いながら一輝は押し入れの襖を開け奥にある段ボールを引っ張り出しその中へ回収した
写真を入れ定位置へ戻す
そして、机の電気をつけ買ってきた便箋を取り出し
家族へ宛てた手紙を書く
ふと、バイスが手元に視線を落としてみると
所々の文字が滲んでいた
確か一輝は、滲むほどのペンを使ってないはず
と思い
チラッと一輝の顔を見ると
頬を伝う物が、、
バイス
一輝、、
一輝
ん?なんだよバイス
バイス
、、っ
言いづらいんだけど、、涙、
一輝
えっ?
一輝はちょっと驚きながら自分の頬に触れてみると
確かに涙が伝った跡が
椅子から立ち上がった
一輝
バイス、ちょっと外に出ててくれ

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