第2話

やっぱり死ねなかったんだ。
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2019/12/23 13:53
目を覚ますと、白い天井が視界に映る。やっぱり、死ねなかったんだ。また、こんな地獄のような日々の繰り返しなんだと思うと、さらに体が重くなった。体を起こして辺りを見回してみると、隣のベッドに少女が寝ているのに気がついた。かわいい…。思わず思ってしまった。茶色い髪、目は二重で痩せている。
「わぁ…。こんなにかわいい子居たんだ。…ラッキーだな…」
自分にしか聞こえないような小さな声で呟く。すると、少女が急に体を起こしてじっとこちらを見つめてきた。
「…ねぇ。」
え?今、俺に話しかけたのか?俺しかいないよな…?
「なに?」
ぶっきらぼうに答えると、少しだけ声のトーンを下げて言った。
「名前は?」
「…上風…雪斗ユキト。」
答える必要はないと思ったが、答えてしまった。少女は、「ふぅん。」と言うと愛想笑いを浮かべて言った。
「私は、春川…萌奈モナ。」
その笑顔になぜか親近感を持った。俺に似てるのか…?でも…なんで?考え込んでいると、萌奈はふっと息をついた。
「雪斗って、不老不死なんだよね。…あのね、雪斗。私余命一年なんだ。」
「え?」
思わず情けない声が出る。萌奈がどうして俺に似てるのか、分かった気がした。
「…私、もっといきたいよ…。やりたいことだって、いっぱいあるのに…。皆、気を使ってさ…ちゃんと話してくれないんだ。私は、14歳で死んじゃう…んだもん。」
萌奈がぽろぽろと涙をこぼし始めた。”生きたい”今までこんな事を思った事はなかった。”死にたい”だけだったから。でも…
今、萌奈の為に…あと一年しか生きることの出来ないかもしれない持ったの為だけに生きたかった。
「…俺も、生きたい。」
「雪斗は、不老不死でしょ?死なないじゃん…。」
「違う。俺は、萌奈の為に生きたい。萌奈を幸せにしたい。」
小さく、だけど力強く言うと萌奈が心からの笑みをこぼした。
「なにそれ。あったばっかの私の為だけに生きたいって…バカみたい。」
その笑顔を見ていたら、俺も思わず笑みをこぼす。俺と萌奈は、日が暮れるまで二人で笑いあった。これまでの人生の中でこんなに笑ったのは初めてだった。萌奈の横顔は、夕日に照らされてピカピカに輝いていた。

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