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第1話

どうして僕は死ねないの?
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2019/12/22 14:58
どうして僕は不老不死なんだろう。不老不死に憧れている人も居るだろうが、少なくとも僕はならない方がいいと思う。何億年も前に生まれ、数々の場面に直面してきた。恐竜にやられたこともあったし、戦争に巻き込まれた事もあった。不老不死は、痛みを感じる。どんなに辛くても、痛くても、死にたくても死ねない。一度だけ、首を吊った事もある。だけどただ苦しいだけで、全然死ねなかった。周りの知っている人が皆居なくなって、気がついたら一人ぼっちになってた。
不老不死ってだけで、誰にも受け入れられない。有るとしたら、研究の材料として。
「死にてぇよ…」
ぼそっと呟く。今だってそうだ。研究所の人に追われている。
「雪斗くん!おいで!僕達が君を引き取るよ!」
街中で人の目が有るにも関わらず、遠慮なしに叫んでいる。おかげで、ここらで俺を知らない奴は居ない。ちょっとした有名人だ。
「雪斗くん!早く!きてごらん!」
”きてごらん!”だって?少なくとも俺は年は億行ってる。もう何年生きてるかなんて忘れてしまった。ただ、見た目が中学生で止まってしまっているから年下でように扱われる。
俺は、一気に走り出した。何度も角右に曲がったり、左に曲がったりしているうちに研究所の人はいなくなっていた。
「まけたかな…。」
肩で息をしていると、40は越えていそうなおばさん達がこっちをじろりと見た。
「やだ~!雪斗くんじゃない?」
「あぁ。あの…不老不死の?」
「へぇ。初めてみたわ。」
「やっぱり、愛想悪いのね。」
「そうよ。早くあっち行きましょ。」
「そうね。気味悪いわ。」
スタスタと早足で俺の視界から消えていった。ああいうおばさん達は本当にめんどくさい。まだ、キャピキャピしている若いギャルの方が増しになるレベルだ。
ピロリン
スマホがなる。数少ない友達のカズからだった。
『なー!雪斗!さっき夏目ちゃんに告白したらさ~、いいよって!彼女出来た!』
『おー、おめでとう。』
夏目ちゃん、というのはカズの憧れの女子だ。カズに彼女が出来たのはとても嬉しかったが、いつか目の前から居なくなると考えたら心臓がズキズキ痛んだ。
そのとき、急に立ちくらみが起こる。勢いよく地面に崩れ落ちた。だんだん視界が白くなっていく。
俺は…死ねるのか?やっと…。長かった…な…
そこで、意識はぷつりと途切れてしまった。

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