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第3話

死ぬまでにやりたいこと
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2019/12/24 03:44
窓からふわりと花の香りがする。すがすがしい朝。
「朝…か。ちょっとだるいな。」
俺はゆっくりと体を起こす。ぼんやりとする頭を振るとようやく昨日の事を思い出す。

『ふーん…。そっか。雪斗は優しいね。ちょっとバカだけど。』
『バカは余計だろ。』
『いいの。バカだもん…と、私…雪斗にお願いがあるの。」
『お願い?なに?俺に出来ることならするつもりだけど。』
『…私ね。死ぬまでにやりたいことがあってね?それを全部叶えて欲しいの。…どう?やってくれる?』
『面白そうじゃん。…やるよ。萌奈のやりたいことを全部叶える。』
『やったぁ!雪斗やっさしぃ!』
そう言って萌奈は笑った。…どうして笑っていられるの?怖くないの?1年後にはもう…死んでしまうかもしれないのに。

ふと、隣のベッドを見てみる。そこには誰も居なかった。俺の病室だけがしんと静まりかえっていた。
「萌奈…。」
呟くと、扉から萌奈がぴょこっと頭を覗かせた。ニヤリと笑って「なぁに?」と言っている。呑気に笑う萌奈を見て、再び疑問が湧き出てきた。怖くないの?ただそれだけだった。
「はい。」
目の前に差し出される封筒。萌奈は「死ぬまでにやりたいこと。」と言うと、再び封筒を押し付けてきた。受け取り、中を覗き込む。何枚もの紙が入っていた。は?こんなに願いあるのかよ。そんな俺の考えを読み取ったのか、
「まだ途中だよ。」
とだけ言い放った。

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