第26話

 2人の再開
203
2021/10/08 11:21
コトリ
コトリ
もう月刊連載ってことに
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……最悪だ。
俺は今日もまた懲りずに海に来ていた。
夜の海は、暗いから好きだ。
誰も必要としない、誰も求めない完璧な黒。
……なのに、今夜も水面鏡はここにある。
「また、お前かよ。」
いつもなら優等生らしく
真面目に会話するけれどこいつとは
そんな会話をする気もない。
会話が通じないから真面目ぶるのも馬鹿らしいし、 
何よりこいつには偽りは通じない。
その声で慌てて振り返ったように睨む赤波。
目を逸らされないだけ、ちったぁ成長したのか。
「びっくりした。」
「そうか。」
俺は当たり前のように隣に座る。
実はかなりドキドキしてるけどこいつに
悟らせたくないから。
「……お前、なんでこんなとこいんの。」
「私は、透明人間だから。」
「そっか。」
「父親はいない。母親は私を見ない。
義姉は大切にしない。義父は止めない。
クラスメイトは私を人と考えない。
先生は面倒事に関わらない。
私はどこにも味方がいない。」
……水面鏡が、初めて揺れた気がする。
水が張られただけの深い湖は少しな風でも崩れる。
「……でもお前を見てる、俺はいる。」
混乱か同情か、共感か。
そんな揺れた気持ちは俺にもあって
それを言うのが精一杯だった。
「……初めて、そんなこと言われた。」
そりゃ、多分日常じゃ使わないだろ
あんな恥ずかしい台詞。
……だけど大人びて完璧に見える赤波なのに
今隣にいて戸惑ったような感情を微かに浮かべた
迷子の子供みたいに見える。
子供なはずなのに、大人に
ならなくちゃいけなかったから。
足元がグラグラで、それを支えてくれる
人がいないんだと気づいた。
俺は何となく手を上に上げて、赤波を撫でる。
そんな気分だったから、
ここに気にすべき人目はないから。
赤波は世界の終わりみたいな百面相を
してこちらを見つめる。
なんで。どうして。
こいつは、俺たちは、「撫でてもらう」なんて
当たり前で簡単な行為を、愛を
受けられないのだろう。

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