「さいしょはグー、じゃんけんぽん!」
こいつが出したのはグー
私は…パー
「うへぇ…」
「じゃあ、私からの質問ね
どうして私の嘘がわかったの?」
その質問に
薄い茅色の瞳が揺れた、気がした。
「俺は、嘘をつく人間のことをよく知ってるから」
そう笑って口を閉ざした。
最後の笑みに圧を含ませて。
まるで、これ以上は探らないでほしい
と言うように、
気まずさからなのか
私達は同時に手を出した。
「じゃんけん、ぽん」
今度の勝敗は_
「やったね!」
悔しくも彼の勝利だ。
ゆっくりとゆっくりと彼の唇が言葉を紡ぐ。
まだ、誰も来ない夏の早朝
忙しいセミの声を聞きながら
私達の時間は、ただゆっくりと流れていった。
「えー、
じゃあさ、君はなんで嘘を付くの?」
ドクン、
カクシゴトがばれた子どものように
私の心臓は大きく波うつ。
きっと、彼は私が1番聞かれたくないことを知ってて、それでいて聞いてきたんだ。
「えぇ
なんでっていわれてもなー笑」
あぁ、私は弱い。
だから、私のために嘘を付く。
傷つかないように仮面を被って嘘を付く。
彼と会ってから忙しすぎて忘れていただけで
これが「私」という人間だ。
「ねぇ、__
俺はさ、′′君′′に聞いてるんだよ」
「___という人間に聞いてるの。」
「だから、
いらない。そういうの」
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。