第25話

 透明人間の苦悩
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2021/09/16 07:00
なんだったんだ、あいつは。
昨日散々考えたけど分からなくて
朝起きて考えたけれど分からない。
朝の5時、冷蔵庫から
昨日の夜ご飯を引っ張り出す。
適当にささっと詰め込んだら静かに家を出る。
バレたらきっと、言葉のナイフが私を刺すから。
もちろん蹴るとか殴るとかも痛くて嫌だ。
階段から突き落とされるのは嫌だったし
数少ない物を捨てられたことも沢山ある。
それでも1番痛いのは、
世界ここに私はいないという不在証明を貼られること。
私が何をしようと親は私を人形としか見ない。
努力は認められないし祈りは報われない。
自分が今ここにいない、必要ない
それが私は1番、怖くて痛い。
というかみんなそれは同じで。
だからみんな、
親友だとか恋人だとか先輩、後輩、
姉、兄、母、父、なんて肩書きに
必死にすがって自分を証明する。
だから、意地の悪い人たちは
名前を呼ばないし、嫌な言葉で呼ぶ。
そうすることでその子から居場所を奪う。
その子をみんなの世界からはじく。
私には、それは錆び付いた鉄の鎖に見える。
でもそれは世界で生き抜くために必要で
それがどれだけ嫌なものでも重たくても
手放してしまえば世界の透明人間になってしまう。
親子の鎖があれば学校が辛くても平気。
友達の鎖があれば家庭が辛くても平気。
ネットの鎖があればリアルが辛くても平気。
じゃあ、全てがなくて命の鎖があったら?
答えは簡単だ。
「透明人間でも平気。」
そうなって人は今の辛さを誤魔化して
幸せのハードルを下げていく。
学校が辛くてもいいと、
家が辛くてもいいと、
リアルが辛くてもいいと、

世界から見られなくても、大丈夫だと。
だから私みたいな透明人間の居場所は
命という鎖の幻想にしかない。

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