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第3話

心霊ちゃん(3)「話しときたいこと」



翌朝。



目が覚めたカホは、
いつの間にか眠りについていたことに気がついた。

眠い目をこすりつつ、ゆっくり体を起こす。
梓山 カホ
梓山 カホ
……ん?
私、なんで学校の制服着たまま
寝ちゃってたんだろ?

えーっと……


起き上がったカホが感じたのは、

ちょっとした違和感・・・



起き抜けでぼんやりする頭を
あくびまじりに働かせはじめた直後、
梓山 カホ
梓山 カホ
!!!!

カホに残っていた眠気が綺麗に吹っ飛んだ。



思いだしたのだ。

昨日の出来事の全て・・・・・・・・・を。




……いや、
あんなおかしなこと、
普通に考えて起きるわけがない。

あれは夢に違いない。

夢であってほしい。
全部悪い夢だったんだ、きっとそう

たぶん夢だと……思いたい。





    *****




梓山 カホ
梓山 カホ
(え……鈴野さん……
 学校に来てないの……?!)


登校したカホを待ち受けていたのは、
この日、鈴野サナが学校に来ていない
という事実であった。

高校2年生の春に
同じクラスになってからこれまでの
およそ3ヶ月の間、
サナが学校を休んだなんてカホの記憶にはない。

すなわち彼女の欠席により
昨日の出来事・・・・・・が、夢ではなく現実・・だったという
残酷な証明がなされてしまったのに等しいのだ。



なお朝のHRでは、
担任教師より生徒たちへ
「鈴野サナが事故に遭って大怪我をした。
 命に別条はないものの、
 しばらくM市立病院に入院が必要な状況で
 その間は学校を欠席することになる」
という旨の連絡事項が簡単に伝えられた。

サナは、生きている。

彼女が命を落としてしまうという
最悪の事態だけは避けられたようだと知り、
カホは、ほっと胸をなでおろした。


だからといってもちろん、
依然としてカホの心が不安まみれであることに
変わりはないわけなのだが。





    *****





HR終了直後、
真っ青な顔で窓際の自分の席に座っていたカホに
こそっと話しかけてくる人物がいた。

塚橋 ユリエ
……おはよう、梓山さん

塚橋ユリエ。

彼女の真顔に、
カホは思わず後ろめたさを感じてしまう。



ユリエは昨日の事件のもう1人の当事者だ。
そして他でもないサナの1番の親友でもある。

目の前で事故に遭った親友サナを見捨てて
逃げ帰った自分カホに対し、
彼女が怒りを覚えたって不思議ではない……


……そんなことを考えながらも、
梓山 カホ
梓山 カホ
お、おはよう……

とりあえずカホも挨拶を返しておく。

塚橋 ユリエ
…………あのさ、
話しときたいことがあるんだけど……

……まぁ
人に聞かせる話じゃないから
改めてお昼にってことでいい?
梓山 カホ
梓山 カホ
……うん





    *****




梓山 カホ
梓山 カホ
あ、あのッ!!
本当にごめんなさいッ!!!


数時間後の昼休み。

指定された空き教室を訪れたカホは、
入口ドアを開けるや否や、
目の前のユリエに精一杯の謝罪をぶつけた。


午前の授業中に勉強そっちのけで
「自分はどうすべきか?」
を考えた結果、
「やはり謝罪すべきだ」
という結論しか浮かばなかったのだ。


塚橋 ユリエ
ちょっといきなり何なの――
梓山 カホ
梓山 カホ
そりゃ謝って済む問題じゃない
ってことぐらい、
私だって十分わかってるよ!!

それでもまずは
謝らなくちゃいけないと思うから――
塚橋 ユリエ
待っていったん落ち着いて!

別に謝ってほしくて
呼んだわけじゃないって――
梓山 カホ
梓山 カホ
でもっ!!
塚橋さんがこうやって呼び出したのも
私のこと怒ってるからだよねっ?!
それならやっぱりッ――
塚橋 ユリエ
違う違うっ!

あたし全然怒ってないってば!!
梓山 カホ
梓山 カホ
え?
塚橋 ユリエ
ったく……

カホがようやく静かになったのを確認し、
ユリエがブツブツ独り愚痴をこぼし始めた。
塚橋 ユリエ
……思い込みが激しいのは
サナだけで十分
おなかいっぱいだってのよ……

……なんで世の中
こんなのばっかなんだか……
梓山 カホ
梓山 カホ
ぁ……

あのぅ……

おそるおそるカホがたずねる。

塚橋 ユリエ
なに?
梓山 カホ
梓山 カホ
ほ、本当に……

……怒ってない?
塚橋 ユリエ
だから怒ってないって
言ってるじゃん
梓山 カホ
梓山 カホ
でも今日の塚橋さん
いつもの穏やかな感じとは
雰囲気違うっていうか……

なんか……その、
機嫌が悪そうっていうか――
塚橋 ユリエ
そりゃそうでしょ!

結局昨日はあのあと
救急車に同乗して病院に行ったり、

いろんな人に
状況説明しなきゃいけなかったり、

サナのママとかに
連絡して来てもらったりとか……

……まぁそんな感じで
なんやかんや大変で、
精神的にも肉体的にも
どっと疲れちゃったんだもん、
愛想ふりまく余裕なんかないって
梓山 カホ
梓山 カホ
だけど……私、
2人のこと置き去りにして
自分だけ逃げ帰っちゃったし……

あとで考えたら
本当に申し訳ないことしたと思うし、
塚橋さんが怒っても当然で――
塚橋 ユリエ
なんか誤解してるよ?

ていうかあたしは
今回の件に関しては怒るどころか
むしろ、梓山さんに
同情しちゃってる派なんだけど
梓山 カホ
梓山 カホ
同情?

な、なんで?
塚橋 ユリエ
だって昨日の色々はさ、
「サナの自業自得」じゃん

梓山さんも、あたしと同じで
運悪くサナの暴走に
巻き込まれただけだと思うんだよね
梓山 カホ
梓山 カホ
どういうこと?
塚橋 ユリエ
ていうか……

……そもそも昨日の放課後、
突然あたしらに
遊びに誘われたことについて、

梓山さんにも
なんか思うところ・・・・・あったでしょ?
梓山 カホ
梓山 カホ
うん、まぁ……
梓山 カホ
梓山 カホ
その……


誘ってもらったこと自体はね、
すごく……嬉しかった!
塚橋 ユリエ
ぁ゛?!


呆れたような表情に変わるユリエ。

塚橋 ユリエ
……別に今は
そういう笑えない冗談
無理にかまさなくていいから!

んで、
実際のとこどうなのよ?
梓山 カホ
梓山 カホ
嘘じゃないよっ

私、友達とかいないし
ああいう風に学校帰りに
遊びに誘ってもらうなんて経験
今までなかったし……

だから本当に
遊ぼうって言ってもらえて
実際、嬉しかったんだ!
塚橋 ユリエ
……それ
まじで言ってんの?
梓山 カホ
梓山 カホ
うんっ
塚橋 ユリエ
…………


ユリエは一瞬だけやや厳しい顔を見せたあと、
意を決したように口を開いた。

塚橋 ユリエ
あのね、
せっかく喜んでるところに
水差しちゃうみたいで
ちょっと言いにくいんだけど……


……梓山さんのためにも

あえて・・・率直に言わせてもらう
塚橋 ユリエ
普通に考えて
ただ同じクラスだってだけで
仲良くも無いのに
遊びに誘う訳ないじゃん!

いきなり馴れ馴れしくしてくるとか
なんか理由があるに決まってるし、

そういう状況になったら
「何故コイツはあたしを誘うんだ?」
って裏の理由を疑ってかかんなきゃ
駄目でしょうがッ?!
梓山 カホ
梓山 カホ
……へ?


ユリエの予想外の発言に面食らい、
口をぽかんと開け言葉を失ってしまうカホ。

塚橋 ユリエ
そんな反応するってことは
やっぱ梓山さん、
あたしらが誘ったことについて
ほんとに微塵みじんも疑ってなかったんだ?
梓山 カホ
梓山 カホ
うん……
塚橋 ユリエ
ちょっとぐらい
違和感とか無かったの?
梓山 カホ
梓山 カホ
無かったけど……
塚橋 ユリエ
どんだけ素直なのよ?!
今時そんな高校生ありえないって!
梓山 カホ
梓山 カホ
ご、ごめん――
塚橋 ユリエ
だからっ!
謝ってほしいわけじゃ
ないんだってば!

あたしが言うのもなんだけど
梓山さんは普段から
もっとこう――
塚橋 ユリエ
……まぁいいや

別に説教したくて
呼び出したわけじゃないし


ユリエが落ち着いた口調で仕切り直す。

塚橋 ユリエ
なんで呼ばれたかぐらい
分かってるよね?
梓山 カホ
梓山 カホ
えっと……


ユリエいわく呼び出した理由は
「話しときたいことがある」とのことだった。

ならばカホには心当たりが1つしかない。

梓山 カホ
梓山 カホ
……昨日のことについて?
塚橋 ユリエ
そういうこと

要するに
「なんでああなったか」っていう
昨日の背景説明ってやつよ
梓山 カホ
梓山 カホ
背景説明?
塚橋 ユリエ
HRで先生が言ってたとおり
確かにサナは
一命をとりとめたわけだけどさ……

……あんな現場に居合わせた以上
このままの状態じゃ
梓山さんもスッキリしないでしょ?
梓山 カホ
梓山 カホ
うん、まぁ……
塚橋 ユリエ
昨日の件に関しては
不本意とはいえ、あたしも
サナの暴走のきっかけを作った部分が
多少あるのは否めないし……

……少なくとも
巻き込まれちゃった梓山さんにだけは
あたしが知ってることを
話すべきだなと思ったわけ


もちろん聞くかどうかは
最終的に梓山さんの判断で
決めるべきだろうけど……
塚橋 ユリエ
……どう? 

詳しく知りたい?
それとも知りたくない?
梓山 カホ
梓山 カホ
…………


カホはためらった。


昨日の出来事は、
正直いってとても恐ろしかった。

思い出すだけで体が震えそうになってしまう。


だが。

このまま
何も知らないままで、
果たして本当に良いのだろうか?

梓山 カホ
梓山 カホ
(……ううん、良い訳ない!)


そう思った瞬間、カホは決意した。


梓山 カホ
梓山 カホ
ちゃんと知りたい、
聞かせて!
塚橋 ユリエ
了解!

はっきりと返事を返すカホに、
ユリエが軽く微笑んだ。

塚橋 ユリエ
じゃあ……最初から話すね

ことのはじまりは、
サナが好きな人に告白したことだった
梓山 カホ
梓山 カホ
コッ、コクハク?!


それだけで思わず裏返った声を出すあたり
さすがは「彼氏いない歴=年齢」といったところ。

塚橋 ユリエ
……どうかした?
梓山 カホ
梓山 カホ
あ、ううん、
なんでもない!

それで?
塚橋 ユリエ
うん……告白相手は
違うクラスの男子だったんだけど……

……サナったら
フラれちゃったんだよ
梓山 カホ
梓山 カホ
え?

鈴野さんって
あんなに美人なのに
フラれるなんてあり得るの?
塚橋 ユリエ
確かにルックスのレベルだけは
すっごく高いってのは認める

でも性格ちょっとワガママじゃん?

だからひとめ惚れだけは
しょっちゅうされる割に、
実際に話した時に
ほぼ幻滅されて終わるっていうか……
塚橋 ユリエ
……まぁつまり

実はサナってモテない・・・・わけ
塚橋 ユリエ
ただし彼氏彼女とかみたいに
深い付き合いじゃなくて、

知り合いの延長ぐらいな感じの
軽い付き合いの友達としてとかなら
むしろ結構好かれるから、
浅い交友関係は広いんだけどね
梓山 カホ
梓山 カホ
なんか……意外かも
塚橋 ユリエ
それなのに
やたらと惚れっぽいんだよ……

だから定期的に
好きな人を作っては
告白してフラれてを繰り返してて、

そのたびに
幼なじみのあたしが
あの子の気が済むまで
愚痴を聞くのが定番でさ……
塚橋 ユリエ
……で、おとといもまた
「フラれたぁ~~!!」って
サナがうるさく騒ぐから

学校帰りに
ハンバーガーセットおごってやって、

さらに!
聞きたくもない愚痴を
延々と聞かされ続ける羽目に
なっちゃったのよ

ほんとやんなる……はぁ……
塚橋 ユリエ
……しょうがないから
こっちはうんうんうなずきながら
サナの話聞いてたんだけど

なんか今回、
あの子の話がとんでもない方向に
飛躍し始めちゃってね……
梓山 カホ
梓山 カホ
とんでもないってどんな方向?
塚橋 ユリエ
端的にいえば、逆恨さかうら
梓山 カホ
梓山 カホ
そ、それは
穏やかじゃないね……
塚橋 ユリエ
なにいってんの、
他人事じゃないよ?

だって
サナに逆恨みされた相手ってば

ほかでもない梓山さん・・・・なんだから
梓山 カホ
梓山 カホ
えッ私?!
塚橋 ユリエ
ほら、昨日サナも言ってたじゃん

「自分の胸に手を当てて考えろ」
みたいなこと
梓山 カホ
梓山 カホ
……そういや
そんなこと言ってた気はする……

でも私、
恨まれるような心当たりなんて
全く何も無いんだけど――
塚橋 ユリエ
そりゃそうでしょ

だから “逆恨み・・・”、
つまり筋違いな恨みってこと
梓山 カホ
梓山 カホ
どういうこと……?
塚橋 ユリエ
あたしも聞いただけだから
ざっくりとしか知らないけど、

サナがこの間フラれた時、
「なんでよ?!」って
相手に直接フラれた理由を
しつこく詰め寄ったらしいの

正直、馬鹿だよね……

そんなことしちゃったら
好きになってもらうどころか
相手に嫌われるのがオチじゃん……
塚橋 ユリエ
……で、
相手の男子が渋々
「俺、おしとやかな子が好みなんだ
 例えば そうだな……
 窓際で静かに読書してるような子」
って答えたんだって

そんでサナは
「彼の好きな人=梓山さん」
だと思いこんじゃったみたい
梓山 カホ
梓山 カホ
ちょっと待って?!

確認だけど……その男子が
私の名前出したわけじゃないよね?
塚橋 ユリエ
そうだよ
梓山 カホ
梓山 カホ
な、なのになんで
相手が私ってことに??
塚橋 ユリエ
そこんとこが
サナ独自の謎理論なわけよ!

あの子ってば昔から
ちょっとばかり
思い込み激しい傾向だったけど、

恋愛が絡むと
それがさらにひどくなってさ……
塚橋 ユリエ
今回だって
あたしはさんざん言ったよ?
「それはあくまで好みのタイプの話で
 梓山さんだとは限らない」って

でもサナってば
全然聞いてくんないんだもん……


……しょうがないから

いつもの手・・・・・を使うことにしたってわけ
梓山 カホ
梓山 カホ
いつもの手って?
塚橋 ユリエ
あのね、
まずはとにかくサナに
喋りたいだけ喋らせておくでしょ

で、喋るのにちょと
飽きてきたっぽい頃を見計らって
全く関係ないテーマに
するっと話題を切り替えちゃうの

うまく気分転換に成功すると
サナの機嫌がよくなるんだよねぇ!
塚橋 ユリエ
あの子って割と単純だから、
なんかに夢中になると
その前に考えてた内容への興味が
なくなっちゃうみたいなのよ

熱しやすく冷めやすいってやつ?
塚橋 ユリエ
ってなわけで早速
たまたま耳にしたばっかの
“心霊ちゃん” の噂話、
つまり
「一緒に撮影したら
 幽霊に憑りつかれる」
ってやつをサナに教えたら、

なんかあの子
噂話を真に受けて
梓山アイツに幽霊を憑りつかせてやる!」
とか暴走しだして、
昨日に繋がっちゃったのよねぇ……
梓山 カホ
梓山 カホ
え……?

じゃあもしかして
昨日のあれが起きたのは
塚橋さんが教えたからなんじゃ――
塚橋 ユリエ
違うからッ!!
あたしそんなつもりなかったし!

ユリエが即答で否定。
塚橋 ユリエ
サナのことだって
あたしすっごく必死に止めたよ?!

でも止めれば止めるほど
暴走がどんどんひどくなって
どうしようもなくなっちゃって……


……しょうがないから
渋々サナに付き合うことにしたの
塚橋 ユリエ
“心霊ちゃん” の噂話って
うさんくさい典型的創作話だし、
普通に考えたら
大事になるわけないじゃん?


だからあたしとしては、
“心霊ちゃん” で遊ぶってなったら
ある程度サナの好きにさせて、
ほどほどに気が済んだところで

タイミング見ていつも通り
気分転換させちゃえば
OKだよねって感じだったわけ!
塚橋 ユリエ
……とまぁ
そんな風に気楽に考えてたから、

まさか、その……


……あんなこと・・・・・になるなんて
思いもしなかったわけだけど……
梓山 カホ
梓山 カホ
…………


突然、重苦しくなる空気。




無理もないだろう。


この2人はごくごく普通の
どこにでもいるような高校生に過ぎない。

それにも関わらず、
顔見知りのクラスメイトが車にねられるのを
至近距離にて目撃するという
衝撃的な体験をしてしまったばかりなのだから。






しばしの沈黙のあと。


梓山 カホ
梓山 カホ
あ、あの
ひとつだけ聞いてもいい?

ちょっと気になってることがあって

カホがゆっくりと口を開いた。

塚橋 ユリエ
なになに?
梓山 カホ
梓山 カホ
……“幽霊・・” って
本当にいると思う?
塚橋 ユリエ
?!

ユリエの顔色が変わる。

塚橋 ユリエ
なっ……何言ってんの?
幽霊なんているわけないでしょ
梓山 カホ
梓山 カホ
そうなんだけど、
もしかしたら――
塚橋 ユリエ
ありえないって!

そんな非科学的なもん
今時信じるわけないじゃん?
梓山 カホ
梓山 カホ
でも昨日、
“心霊ちゃん” で撮影したあとの
鈴野さんの様子って
どう考えてもおかしかったし……

「鈴野さんには本当に
 幽霊が憑りついちゃった」
以外に納得できる説明ってできる?
塚橋 ユリエ
知らないってばあんなヤツ!
梓山 カホ
梓山 カホ
ちょ、ちょっと友達でしょ?

さすがに “あんな奴”
呼ばわりはひどいんじゃ――
塚橋 ユリエ
他人のあんたに
何が分かんのよッ?!
梓山 カホ
梓山 カホ
え?

ユリエの叫びに、カホは思わず固まる。

塚橋 ユリエ
サナとあたしは
家が近所で幼なじみで、
そのせいであたしは昔から
あいつに振り回されてばっかりで……


自分は愚痴ばっか言うクセに、
あたしが愚痴りたくても
ちっとも聞いてくれないし

しょっちゅう問題起こしては
尻ぬぐいを全部
あたしに押し付けるクセに
感謝の言葉ひとつ言わないし……
塚橋 ユリエ
……今回だってそう

サナが自分勝手で突っ走って暴走して
自業自得で自爆したクセに

結局あたしが
色んなところを走り回って
手配して、説明して、責められては
頭下げまくる羽目になって……
塚橋 ユリエ
……もうッ!
いい加減うんざりなのよ!
塚橋 ユリエ
だから決めたの!
あたし、これを機に

サナと距離を置くからッ!!
梓山 カホ
梓山 カホ
……
塚橋 ユリエ
 !
塚橋 ユリエ
……ごめん

梓山さんには
関係ない話だったよね……


珍しく感情を爆発させたユリエだったが、
戸惑いを浮かべるカホの表情を見て
正気に戻ったようだ。

塚橋 ユリエ
……用件も終わったし、
あたしはこれで
梓山 カホ
梓山 カホ
あ、うん……


気まずそうに空き教室を出ていくユリエ。

その後ろ姿を、
カホはただ呆然ぼうぜんと見送っていた。