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第9話

心霊ちゃん(9)「犯人の本拠地へ」



翌朝、
「ちょっとぶらぶらしてくるっ」
というメイリと別れ、
カホはいつも通り学校へ。

放課後になる頃、
北高まで迎えにきたメイリとカホは再び合流。
揃って目的地へと向かう。




カホはちょっとドキドキしていた。

昨夜の就寝直前、メイリにいわれたことを
思い出してしまったのだ。

梓山 カホ
梓山 カホ
(……いい感じ・・・・、かぁ……)


メイリいわく、
昨日のハルオミとカホとは
「いい感じ」に見えたらしい。

カホとしてはそんな意図は全くなかったのだが、
あらためて思い返してみると
はたから見ればそうだったのかも……
……なんて思えてきてしまう。




もちろん彼女だって
今の自分達はそんな浮かれたことを
考えている場合じゃないことぐらいわかっている。

何たって、これから
“心霊ちゃん” 騒動の犯人の元へ
直接乗り込む予定なのだから。


だがカホの脳内は
考えないようにしようとすればするほど、
“いい感じ” との言葉から広がる妄想が
あふれだして止まらなくなってしまうのだ。

梓山 カホ
梓山 カホ
(あぁもう……!

 私、こんな状態じゃ、
 ちゃんとお兄さんの顔を見れる気が
 しないよ……どうしよう……)


悩むカホなどお構いなしに、
約束の時間と場所とは
徐々に徐々に近づいてきて……




……そしてとうとう、着いてしまった。

待ち合わせ場所には
先にハルオミが到着していたのだが……

メイリ/霊体
メイリ/霊体
 ……
梓山 カホ
梓山 カホ
……

彼の姿を見た瞬間、2人は難しい顔になった。


同時に、
カホの妄想&心配事も
きれいさっぱり消え去ったようで
何より(?)である。

メイリ/霊体
メイリ/霊体
……あれ・・、何?
梓山 カホ
梓山 カホ
えっと、何だろうねぇ……




そんなことなどつゆ知らずなハルオミは
現在、タブレット端末での作業に夢中であり、
カホ達の到着にすら気づいた様子はない。

梓山 カホ
梓山 カホ
……お兄さん、
お待たせしました

とりあえずカホが声をかけると、
ハルオミはひょいっと顔をあげた。

式峯ハルオミ
式峯ハルオミ
お、梓山さんか

メイリは一緒かい?
梓山 カホ
梓山 カホ
ええまぁ、一緒ですけど……
メイリ/霊体
メイリ/霊体
ハルオミ兄ちゃんっ!!

そのすんごい大荷物・・・・・・・どーしたの?!



ハルオミの荷物は
背中に背負っているリュックサック1つのみ。


だがそれが
とてつもなく大きい・・・のだ。
しゃがんだ大人1人ぐらいなら
余裕で入ってしまいそうなサイズである。

しかもリュックはパンパンに膨らんでいる模様。
中にはぎっしり物が詰まっているに違いない。


梓山 カホ
梓山 カホ
……メイリちゃんが
「その凄い大荷物はどうしたの?」
って聞いてます

現在、霊体状態のメイリの姿を
認識できないハルオミのために、
昨日に続き伝達係を任されているカホは、
慣れた様子で、メイリの発言を要約し伝える。

式峯ハルオミ
式峯ハルオミ
ああ、これか

犯人との対決において
必要となる可能性があると
思われるアイテムを、
出来得る限り揃えてきたのさ
メイリ/霊体
メイリ/霊体
何考えてんのよっ?!

そんなありえない大荷物持った状態で
ちゃんと動けるわけ?!
いらない物は置いてきなさいよ!
梓山 カホ
梓山 カホ
「そんなにたくさん
 荷物を持った状態で
 ちゃんと動けるのか?
 いらない物は置いてきたら」
と言ってます
式峯ハルオミ
式峯ハルオミ
何を言う、
いらない物など1つもないぞ

これより対決する犯人に関する情報は
ある程度メイリが調べてくれたが、
正直なところ、
未知の部分ばかりである点は否めない

また、実際に対峙たいじするのが
初めてとなることからも
対決の行方も予測不能となるのは明白

よって
準備は念入りにしておくに
越したことはないだろうと考えれば
この量でもかなり絞り込んだほうだが
メイリ/霊体
メイリ/霊体
そーかもしんないけどさー、
だいたいそんなに詰め込んでたら
「いざ必要!」ってなった時に
必要な物が出せないでしょ?
梓山 カホ
梓山 カホ
メイリちゃん、
「荷物を詰め込み過ぎてるから、
 いざ必要な時に
 必要な物が出せないんじゃないか」
って心配してるみたいです
式峯ハルオミ
式峯ハルオミ
これを見てくれ!


ハルオミは答えるかわりに
持っているタブレット端末をササッと操作し、
カホのほうへと画面を向けた。

画面の中には何やら
デジタルな立体のようなものが展開されている。

メイリ/霊体
メイリ/霊体
 ??
梓山 カホ
梓山 カホ
……なんですか?
この……立体的な何かは?
式峯ハルオミ
式峯ハルオミ
そもそも対決に持参するバッグとして
このリュックサックを購入したのは、
ポケット位置等の構造が
機能的に計算しつくされており、
そのような心配が必要ないからである


当然ながらリュックのどこに
何を詰めるかという点についても、
アイテムの取り出し方についても、

模擬実験シミュレーションを何度も重ね
完璧に組み上げ済みであり

その結果がこの立体図面3Dデータなのだ!


だから安心しろ!!
俺の準備に抜かりはない!!
メイリ/霊体
メイリ/霊体
なんでそんなに
自信たっぷりなままで
いられんのよっ、
バカみたいに大きなリュックを
背負ってる状態のクセに!

っていうか
兄ちゃんの頭がいいっぽいのは
なんとなくわかるけど、
肝心の頭の使い方が
わけわかんないんだって……
メイリ/霊体
メイリ/霊体
……ったくもう、勝手にすればっ
梓山 カホ
梓山 カホ
ええっと……

……納得したみたいです、
メイリちゃん……たぶん……
式峯ハルオミ
式峯ハルオミ
そうか、分かってくれたか!

ならば早速
犯人の本拠地へ乗り込む事にしよう!





    *****





犯人が根城としているらしい小さな廃ビルは、
街はずれにある工業団地の中に建っていた。

見渡す限り立ち並ぶのは古めかしく
さびれた感じの工場等の建物ばかりであるものの、
実際にそのあたりに近づいてみれば
温かみや生活感であふれていて
「ここは人が暮らす町なのだな」と
なんとなく安心感のようなものを覚える。




だが、この廃ビルを含む一角は別だ。


周辺とは打って変わって
廃ビル近辺には人の気配が全くない。

これだけで既に異質・・


しかも夕方とはいえまだ明るい時間の上
今日は7月も半ばのはずなのに、
なぜか廃ビルのあたりだけは肌寒く感じるのだ。


梓山 カホ
梓山 カホ
(……今の天候が
 くもり気味ってことふまえても、
 ちょっと妙な感じだよね……)

廃ビルを見上げ、カホはごくりとつばをのみこむ。


式峯ハルオミ
式峯ハルオミ
大丈夫か?
メイリ/霊体
メイリ/霊体
だいじょーぶ?

彼女の緊張感を感じ取ったらしい
式峯兄妹が声をかけた。


梓山 カホ
梓山 カホ
……大丈夫です

いつでもいけます!



 ――いまさら引き返したりなんかしない、
   覚悟なら……とうに決めている!


そんな決意がこもったカホの瞳に、
もう迷いの色はなかった。




廃ビルの入口には一応、鍵がかかっていた。

メイリ/霊体
メイリ/霊体
……おっし!
カギ開いたよー♪


だが、 “壁すり抜け” など
人間離れした裏技が使える
霊体状態のメイリの手にかかれば、
簡単な開錠など朝飯前。

法律的に言えば
色々まずいのかもしれないが、
今はそんなことなど言ってはいられない。


メイリを先頭に、カホ、ハルオミの順で
薄暗い廃ビルの中へと慎重に歩を進めていく。





    *****





ハルオミの調べによれば、
かつてはこのビルには
いくつものオフィスが入居していたものの
ここ何年かは全く使われておらず、
適切な管理業務も行われていないことから
荒れ放題となってしまっているらしい。

装飾やインテリアもほぼなくガランとしている上、
あちこちのガラスやら壁やらドアやらが
ひび割れたり壊れたりしていて、

まさに「廃墟はいきょ」と呼ぶのがふさわしい場所だ。



電気も通っておらず、
窓から漏れ出てくる光もわずかであるため、
ハルオミが持ってきた懐中電灯が
彼らの明かりのメインとなっている。

当然、エレベーターも動くはずが無い。

周囲に気をくばりながら
ほこりまみれの階段をのぼっていく。



式峯ハルオミ
式峯ハルオミ
……!
メイリ/霊体
メイリ/霊体
……!
梓山 カホ
梓山 カホ
……!


4階まで上ったあたりで、

一同は一斉に異変・・に気づいた。



明らかに空気がおかしいのだ。

どことなくよどんでいて、重苦しくて……
……なんだか寒気が止まらない。





奥へ進めば進むほど、
異変はどんどん濃くなっていく。




4階フロアにいくつかあるうちの
ひとつのドアの前に到着したところで。

梓山 カホ
梓山 カホ
(……間違いない、ここだ)


そう思ったカホが横を見ると、
2人揃って同じく確信を持った顔をしていた。


無言でうなずき合う一同。

そして……

メイリ/霊体
メイリ/霊体
(むぅっ!)




 ――バンッ!




気合いを入れたメイリが
思いっきりドアを押し開け室内へ入り、
その後ろにカホも続く。


怨霊
怨霊
ッ?!
梓山 カホ
梓山 カホ
あっ……!


部屋の中に入った瞬間、カホは思わず息をのんだ。



おどろおどろしい空気が渦巻く中心に……



……いた・・のだ、
“心霊ちゃん” 事件の犯人である “怨霊おんりょう” が。

それは、
突然入ってきたカホ達をにらみつけるように
ワナワナと震えていた。



そして怨霊の後ろに無造作に置かれているのは、
青白く光る古めのデスクトップPC。

その画面には、
“心霊ちゃん” 関連の画像などが
多数表示されているようだ。


式峯ハルオミ
式峯ハルオミ
うぉあッ?!

1歩遅れて室内に飛び込んできたハルオミが、
怨霊を目にして驚きの声を上げた。

メイリ/霊体
メイリ/霊体
あれ?

カホさんやハルオミ兄ちゃんにも
怨霊が見えてるみたいだね!
式峯ハルオミ
式峯ハルオミ
ぶぉえッ?!?!

さっきより激しく驚くハルオミ。

式峯ハルオミ
式峯ハルオミ
メ、メイリが……

うちのメイリが宙に浮いてる?!
梓山 カホ
梓山 カホ
え?
メイリ/霊体
メイリ/霊体
兄ちゃん、
驚くポイントはそこかい?

そりゃ今は霊体だから
空に浮かぶぐらいヨユーだって♪
式峯ハルオミ
式峯ハルオミ
そ、そういうもんなのか……?
梓山 カホ
梓山 カホ
……もしかしてお兄さんも
メイリちゃんが見えるように
なったんですか?
式峯ハルオミ
式峯ハルオミ
ああ……

……本当だったんだな――
怨霊
怨霊
グォアァアァァーーッ!!
梓山 カホ
梓山 カホ
 ! 
メイリ/霊体
メイリ/霊体
 !
式峯ハルオミ
式峯ハルオミ
 !

ハルオミの言葉をさえぎるように怨霊が吠えた。

その叫びから発生するあまりの圧力に、
固まってしまう一同……




……と思ったら、
怨霊
怨霊
ガァッ!!

カホをめがけて、
一直線に怨霊が襲い掛かってくる!!

梓山 カホ
梓山 カホ
ひッ?!

思わずカホがぎゅっと目をつぶり、




 ――ダメだやられるっ……!




そう思った次の瞬間……


メイリ/霊体
メイリ/霊体
待って、マユコさんッ・・・・・・!!

よく通るメイリの声が響いた。





 しーんと静まり返る室内。





何も起きないことを疑問に思ったカホが
おそるおそる目を開けると、
そこには呆然とする怨霊の姿があった。

怨霊(マユコ)
怨霊(マユコ)
マユコ……ドウシテ……

……ドウシテ…………
私ノ名前……知ッテイル……
メイリ/霊体
メイリ/霊体
知ってるの、
名前だけじゃないよ!

マユコさんは
M市立東高等学校に
通っていたんだよね?

楽器を……クラリネットを
演奏するのが好きで
中学も高校も吹奏楽部だったでしょ?
怨霊(マユコ)
怨霊(マユコ)
…………クラりネット……
……間違イナイ……
…………吹奏楽部……ブカツ……
……楽シカッ……




…………?!


メイリの言葉をきっかけに
昔を懐かしむようにしていた怨霊だったが、
急に表情がこわばった。

そのうつろな瞳は、ただ1点・・・・を見つめている。

梓山 カホ
梓山 カホ
(ん? なんだろう……?)

不思議に思ったカホが、

怨霊の視点をたどってみると……


梓山 カホ
梓山 カホ
?!
メイリ/霊体
メイリ/霊体
 ?!


驚愕したのはカホとメイリ同時だった。



なぜなら、
彼女達の少し後ろにて
真面目な顔で身構えているハルオミの手には、

「某・有名な “消臭スプレー・・・・・・”」が
握られていたからだ。

しかも右手と左手に1つずつ……合計2つも。


梓山 カホ
梓山 カホ
お、お兄さん?!
なんで消臭スプレーなんか
持ってるんですか?!
式峯ハルオミ
式峯ハルオミ
除霊のためだ!!
梓山 カホ
梓山 カホ
え?
メイリ/霊体
メイリ/霊体
 は?
式峯ハルオミ
式峯ハルオミ
知らないのか?

消臭スプレーには
除霊効果があるらしいぞ!

もっとも
「何故、効果があるのか?」
という点に関しては諸説あるが――
メイリ/霊体
メイリ/霊体
んなわけあるかいっ!
式峯ハルオミ
式峯ハルオミ
いや本当だ!

詳しくは後ほど
【除霊 消臭スプレー】で
ネット検索してみるがいい、
様々な記事が出てくるからな
梓山 カホ
梓山 カホ
ネットの情報を
鵜呑うのみにしちゃったんですか?
式峯ハルオミ
式峯ハルオミ
そんなはずないだろ、
ちゃんと半信半疑で留めているぞ

そのかわり
ネット上のサイトや
様々な文献で除霊について調べ

除霊効果の可能性があるアイテムは、
全て調達し持参したのさ!
梓山 カホ
梓山 カホ
全部そろえた?!
メイリ/霊体
メイリ/霊体
だから兄ちゃん、
やたら荷物が多かったのか……
式峯ハルオミ
式峯ハルオミ
そうだ!

だから例え仮に
消臭スプレーに除霊効果がなくとも
次のアイテムを試せばいいだけ!

これだけ大量にあれば
確率論的にも
おそらくどれかは効果があるはず……


……だから安心して

幽霊退治・・・・は俺に任せておけ!
怨霊(マユコ)
怨霊(マユコ)
……幽霊タイジ……

…………退治ダトッ?!


オ前ラモ……私ヲ……
…………痛メツケヨウト……!

ハルオミの「幽霊退治」という言葉に反応し、
怨霊が再びヒートアップし始めた

梓山 カホ
梓山 カホ
?!
メイリ/霊体
メイリ/霊体
違うからっ!

マユコさん落ち着いて!

うちのバカ兄貴が勝手に
なんか間違えてるだけだからっ
式峯ハルオミ
式峯ハルオミ
おいメイリ!
兄に向かって「バカ」とはなんだ――
メイリ/霊体
メイリ/霊体
(ふんッ!)
式峯ハルオミ
式峯ハルオミ
(……?!)

説教をはじめそうになるハルオミだったが、
メイリが気合い&得意の金縛りをかけた途端、
パタッと動かなくなってしまった。

梓山 カホ
梓山 カホ
あ……
怨霊(マユコ)
怨霊(マユコ)
ッ……

あっけにとられるカホと怨霊。

メイリ/霊体
メイリ/霊体
……兄ちゃんはちょっと黙ってて、
話がややこしくなるから!


話が通じない相手とかなら
ともかくさー

話せる相手と話し合いもせず

いきなり物理的暴力強制除霊とか
イマドキありえないっての!!

そうハルオミに言い放ってから、
メイリは怨霊のほうに向きなおって頭を下げる。

メイリ/霊体
メイリ/霊体
ほんっっっとにごめんねっ!

あのバカには
あたしからよ~~~く言っとくから
今日のとこは勘弁してやって!!
怨霊(マユコ)
怨霊(マユコ)
ァ……アア……

よく分からないメイリの勢いに押され
思わずうなずいてしまう怨霊。


怨霊(マユコ)
怨霊(マユコ)
……ソレヨリ……目的……

オ前ラノ、目的ハ……何ナンダ……
……何ノタメニ……ココへ、来タ?
梓山 カホ
梓山 カホ
えっと……



(……私たちの目的は
 “心霊ちゃん” の事件を
 どうにかすることで……

 でもそれは結局
 このマユコさんって怨霊を
 どうにかしなきゃいけなくて……)


カホが何と答えるべきか迷っていると。

メイリ/霊体
メイリ/霊体
あたしたちはね、
あなた……マユコさんと話に来たのっ

さらっとメイリが答えた。
梓山 カホ
梓山 カホ
(……え?
 そんな答えでいいの……?)

カホはちょっと不安になる。

怨霊(マユコ)
怨霊(マユコ)
……私ト……話ニ?
メイリ/霊体
メイリ/霊体
うんっ

その前に
自己紹介させてね!

あたしはメイリ、
そんでこっちがカホさん♪
梓山 カホ
梓山 カホ
あ、梓山カホです!
怨霊(マユコ)
怨霊(マユコ)
……メイリ……
…………カホ……
メイリ/霊体
メイリ/霊体
それからそこで
突っ立ってるのが
あたしの兄ちゃん


兄ちゃんはね、
仕事でアプリ作ってて、

1番最近作ったのは
カメラアプリで……

…… “心霊ちゃん” っていうんだよね
怨霊(マユコ)
怨霊(マユコ)
ハッ……!

……アノ男……アノ時ノ……!
梓山 カホ
梓山 カホ
マユコさん、
お兄さんのこと知ってるの?
メイリ/霊体
メイリ/霊体
そりゃそーだって!

だって “心霊ちゃん” のデータが
会社のPCから無くなった夜、
ハルオミ兄ちゃんは
会社に泊まり込んでたんだよ

あんな狭い会社だもん、
寝るならPCとかの前しかないよね
怨霊(マユコ)
怨霊(マユコ)
ソウダ……

私……死ンデ……


……気付イタラ……白イ部屋

パそコン…… “心霊ちゃん・・・・・” ……

……モらッタ・・・・……


……アノ時……
…………アノ男……

ソファ……寝テイタ……
梓山 カホ
梓山 カホ
確かに
お兄さんの会社のオフィスって
部屋の内装は白でまとまってたし、
応接スペースにソファもあったよね?
メイリ/霊体
メイリ/霊体
うんっ

ハルオミ兄ちゃん、
会社に泊まり込む時はだいたい
ソファでぐーすか寝てるんだ

だからたぶん
その日もそーだと思う!
メイリ/霊体
メイリ/霊体
……で、マユコさんは
どうして “心霊ちゃん” を
持って行っちゃったの?
怨霊(マユコ)
怨霊(マユコ)
…………ソレハ……
メイリ/霊体
メイリ/霊体
……「復讐のため・・・・・」かな?
怨霊(マユコ)
怨霊(マユコ)
 !!!

怨霊から漏れ出る怨念のようなものが
瞬間的にもわっと強さを増した。

梓山 カホ
梓山 カホ
?!

カホは思わず怖気づいてしまう。

メイリ/霊体
メイリ/霊体
だいじょぶだいじょぶ、
責めてるわけじゃないから!

今回あたしなりに色々調べたけど、
調べれば調べるほど
マユコさんが
復讐したくなる気持ちも
分かるなぁ、って思っちゃったの
怨霊(マユコ)
怨霊(マユコ)
…………

メイリの言葉に反応するように、
怨霊が悲しそうな顔を見せた。


梓山 カホ
梓山 カホ
……どういうこと?

訳が分からずつぶやくカホ。

メイリ/霊体
メイリ/霊体
あれっ?
カホさんは知らないんだっけ?
梓山 カホ
梓山 カホ
だって私が聞いたのって
すごくざっくりとした内容だけだよ

ほんとに文字通り
「“心霊ちゃん” を
 持って行っちゃったのは怨霊」
ということと、
「怨霊がこの廃ビルにいる」
ということぐらいで、
細かいことは全然聞いてないんだけど
メイリ/霊体
メイリ/霊体
そーいやそーだったかも……



……マユコさん、
カホさんに話してもいいかな?
怨霊(マユコ)
怨霊(マユコ)
…………アア……
メイリ/霊体
メイリ/霊体
ありがと♪

にこっと怨霊へ笑いかけてから、
メイリはカホのほうへと向き直った。

メイリ/霊体
メイリ/霊体
じゃー話すねっ
梓山 カホ
梓山 カホ
うん……
メイリ/霊体
メイリ/霊体
あたしが兄ちゃんの話を聞いて
まず調べようと思ったのが、

「 “心霊ちゃん” の被害者は
 どこの誰なのか?」
ってことだったの
メイリ/霊体
メイリ/霊体
ただし噂の内容が
あたしたちの住むM市限定じゃん?

だからM市内でたどってけば
絶対わかるはずと思ったんだよねっ

途中で色々・・あって
この霊体になってからは
色んなとこに
もぐりこめるようになったから
調査が割とスムーズだったよ♪
メイリ/霊体
メイリ/霊体
で、そーこーしてるうちに
“心霊ちゃん” の被害者を
たぶん全員見つけたんだよね

被害者は全部で8人……

……あ、昨日の被害者(カホさん)入れたら9人か


でもここで不思議なこと・・・・・・に気づいたの
梓山 カホ
梓山 カホ
不思議なこと?
メイリ/霊体
メイリ/霊体
1人目と2人目の被害者は
だいたい半年前ぐらいに
幽霊に憑りつかれたらしいの

でもね、
3人目以降の被害者が出たのは
それよりかなり経ってからなんだ
梓山 カホ
梓山 カホ
それって不思議なの?
メイリ/霊体
メイリ/霊体
不思議なのはここから!

1人目と2人目の被害者は、
同じ高校の同じクラスの女の子の
仲良し2人組だったらしいんだけど

調べていくうちに
その2人がいじめをしていた
って話が出てきたわけ
梓山 カホ
梓山 カホ
いじめ?!
メイリ/霊体
メイリ/霊体
しかもそれが結構悪質で、

幼稚園から高校まで2人して
同じ女の子をず~っとネチネチ
いじめ続けてたらしくて……


……それで、
いじめられてた女の子は
それを苦にして
自殺しちゃったんだって……
梓山 カホ
梓山 カホ
……
メイリ/霊体
メイリ/霊体
……自殺があったのはね、
1人目と2人目の被害者が
幽霊に憑りつかれる1週間前のこと

しかも、その日はなんと……
メイリ/霊体
メイリ/霊体
……兄ちゃんの会社から
“心霊ちゃん” が消えたのと

ちょうど同じ日でもあってさ
梓山 カホ
梓山 カホ
メイリ/霊体
メイリ/霊体
ね? 不思議でしょ?
梓山 カホ
梓山 カホ
う、うん……
メイリ/霊体
メイリ/霊体
ここまで偶然が重なるのは
おかしいって思って、
あたしはその周辺だけに絞って
徹底的に調べたんだよね

そして、結果
“心霊ちゃん” を持って行った “犯人” を
見事に突き止めたってわけ!
メイリ/霊体
メイリ/霊体
……ここまで言えば、
どーいうことか分かるよね、
カホさん?
梓山 カホ
梓山 カホ
その……

いじめられて
自殺してしまった女の子が……

……マユコさん、なんだよね?
怨霊(マユコ)
怨霊(マユコ)
…………

怨霊がこくりとうなずいた。

メイリ/霊体
メイリ/霊体
そしてさっき言ってた
「復讐」ってのは
まさに1人目と2人目の被害者に
対してのものだったわけだね

……まぁ
復讐するのが正しいかどうか……
って話し出すと
割り切れない部分があるし、

そこについては今は触れないよ!
メイリ/霊体
メイリ/霊体
ちなみにマユコさんは
なんでわざわざ “心霊ちゃん” を
復讐の道具に使ったわけ?

他にもやり方は色々あったでしょ?
怨霊(マユコ)
怨霊(マユコ)
……アイツラ……
イツモ、撮リマクッテタ……


……写真……スマホ……


…………カメラ……アプリ……
怨霊(マユコ)
怨霊(マユコ)
……私ノ写真…………勝手ニ撮ッタ

…………イジメナガラ……撮リマクル


酷イ加工、シテ……笑ッテタ……



…………壊……シタ……アイツラ……


……クラリネット……私ノ……

 壊シテ……撮影、シヤガッタ……





…………許セナイ…………

……写真…………アイツラ……
梓山 カホ
梓山 カホ
ひどい……

その子たち、
スマホのカメラアプリも使って
マユコさんのこといじめてたんだ……
メイリ/霊体
メイリ/霊体
“心霊ちゃん” も
ジャンルはカメラアプリだし、
復讐の道具としては
ぴったりだったってわけかぁ……
メイリ/霊体
メイリ/霊体
……でも分かんないのがさ、
3人目以降の被害者なんだよね!


調べてみたけど
3人目以降の被害者は

はっきりいって
マユコさんと
面識ありそーな子いなかったよ?
メイリ/霊体
メイリ/霊体
なんであの子たちまで
巻き込んだわけ?

復讐は
2人目までで終わったんじゃ――
怨霊(マユコ)
怨霊(マユコ)
マダダ…………マダ……



……マダ、何モ……

…………終ワッテ等イナイ…………


いったんおとなしくなっていたはずの怨霊が
再び徐々に怒りのオーラをまといはじめた。

怨霊(マユコ)
怨霊(マユコ)
カメラアプリ……あンナ物……

……使ウ奴……悪イ奴、バカリ……


…………悪イ……イジメル奴……!



カメらアプリ、使ウ……許セナイ……

……許セナイ…………許セナイ……


 許セナイ……復讐スル……!


……復讐……復讐……復讐……復讐……復讐……復シゅウ……復讐……復讐……復讐……復讐……復讐……復讐……復讐……復讐……復シュう……復讐……フク讐……復讐……復、讐……復讐……復讐……復讐……復しュウ……復讐……復讐……復讐……復讐……復讐……復讐……復讐…………復讐……復讐……復讐……復讐……復讐……復シゅウ……復讐……復讐……復シュう……復讐……復讐……復讐……復讐……復讐……復讐……復讐……フク讐……復讐……復、讐……復讐……復讐……復讐……復しュウ……復讐……復讐……復讐……ふク讐……復讐……復讐……復讐……
梓山 カホ
梓山 カホ
…………つらかったね、

 マユコさん……
怨霊(マユコ)
怨霊(マユコ)
エ……


ぽつんと発したカホのひとことに、
怨霊が戸惑いの表情を浮かべた。

梓山 カホ
梓山 カホ
……私もね、
昔いじめられてたんだ

幼稚園の時に
どうしても周りの子となじめなくて
そしたら仲間外れにされたり
物を隠されたりとか色々あって

で、小学校に上がってからも
いじめは続いて、
でも誰も助けてくれなくて、
どうしたらいいかわかんなくて……
梓山 カホ
梓山 カホ
……悩んでたけど
中学に上がる頃には気がついたら
自然といじめが無くなってて、

そのあとは
割と平和な感じが続いてる
梓山 カホ
梓山 カホ
でも
マユコさんの場合は、

中学になっても、
高校になっても
いじめが止まずに
ずっと続いてたなんて……



そんなの……


……そんなの……辛すぎるよ……
梓山 カホ
梓山 カホ
マユコさん


そんな長い間……

……よくがんばったね
怨霊(マユコ)
怨霊(マユコ)
…………


いつの間にかカホの目には涙が浮かんでいた。


何やら思うところがあったのか、
怨霊は黙りこくっている。

メイリ/霊体
メイリ/霊体
……ちなみにですねー
そんなカホさん、

実は “心霊ちゃん” で
幽霊に憑りつかれた被害者の
1人なんですよねぇ……
怨霊(マユコ)
怨霊(マユコ)
ナ……?!
梓山 カホ
梓山 カホ
え……?




(ちょっと待って?!

 なんか
 他人事みたいに言ってるけど、
 私に憑りついたのって
 メイリちゃんなんですけど!
 
 しかも憑りついたの、
 けっこー無理やりだったよ……?)

カホは心の中で思った。


一瞬、口に出しかけたが
メイリが「あたしに任せろ!」とばかりに
軽くウインクを飛ばしてきたのもあって
ぐっと飲み込むことにした。


メイリ/霊体
メイリ/霊体
……ちなみにカホさんの場合
そもそも “心霊ちゃん” を
インストールしたこと自体、
一昨日被害に遭ったクラスメイトの
女子を助けるためだったんだって!

それで “心霊ちゃん” のこと
調べてたら、今度は
自分も幽霊に憑りつかれるって
連鎖に襲われちゃったってわけっ!!
メイリ/霊体
メイリ/霊体
そーだよね・・・・・、カホさん?
梓山 カホ
梓山 カホ
う、うん……


メイリの説明は、間違ってはいない。
間違っているわけではないのだが……

……自分のことを棚に上げているのは否めない。


怨霊(マユコ)
怨霊(マユコ)
  !
メイリ/霊体
メイリ/霊体
マユコさん、
カホさんのことどー思う?

“心霊ちゃん” で復讐したくなるような
悪いヤツかい?
怨霊(マユコ)
怨霊(マユコ)
違ウ……


……カホ…………悪クナイ……!
メイリ/霊体
メイリ/霊体
だよねっ!


でもマユコさんが今のまま
“心霊ちゃん” を使い続けたら?

たぶん……

……カホさんみたいな子・・・・・・・・・
たくさん被害に遭うことに
なっちゃうんじゃないかなぁ……
怨霊(マユコ)
怨霊(マユコ)
 !!!
メイリ/霊体
メイリ/霊体
……そんな状態、
マユコさんの望みじゃないよね?
怨霊(マユコ)
怨霊(マユコ)
望ミジャナイ……

…………違ウ……違ウ


……望ンでナイ…………!
メイリ/霊体
メイリ/霊体
じゃあどーする?
怨霊(マユコ)
怨霊(マユコ)
ヤメル……
メイリ/霊体
メイリ/霊体
何を止めるの??
怨霊(マユコ)
怨霊(マユコ)
…………“心霊……ちャン”……


…モウ………しナイ……


「“心霊ちゃん” を止める」
と宣言した怨霊からは、
どことなくスッキリしたものを感じた。

たぶんこれで一連の事件は解決に向かうはず。
そう思ったカホは、
ほっと静かに胸をなでおろしたのだった。



メイリ/霊体
メイリ/霊体
……あ、そーだ!
せっかくだから記念撮影しよっ♪
梓山 カホ
梓山 カホ
え?!
怨霊(マユコ)
怨霊(マユコ)
……?!


急なメイリの提案に、
びくっとするカホ&怨霊。

メイリ/霊体
メイリ/霊体
だってせっかくなら
マユコさんに知ってほしいんだもん

撮影には、
嫌な撮影だけじゃなくて
素敵な思い出を残す記念撮影も
あるんだよってことをさ♪
メイリ/霊体
メイリ/霊体
ねぇねぇマユコさん、

1枚だけ一緒に撮らない?
怨霊(マユコ)
怨霊(マユコ)
…………

怨霊がうつむく。





じっくり……じっくりと考え込んでから……

怨霊(マユコ)
怨霊(マユコ)
……分カッタ

……彼女は首を縦に振った。


メイリ/霊体
メイリ/霊体
よっし!

じゃハルオミ兄ちゃん、
撮影お願いね――
梓山 カホ
梓山 カホ
!!
怨霊(マユコ)
怨霊(マユコ)
……!!
メイリ/霊体
メイリ/霊体
……あ



一同はすっかり忘れていた。


突入直後のかなり早い段階で、
メイリがハルオミに金縛りをかけたまま
しばらく放置してしまっていたことを。



メイリ/霊体
メイリ/霊体
か、解除ッ!
梓山 カホ
梓山 カホ
お兄さん、大丈夫ですか?!
式峯ハルオミ
式峯ハルオミ
ああ…………




……それより、撮影するんだろ?


金縛りを解除された直後のハルオミは
何か言いたい事がありそうな顔はしていたものの、
まずはカホのスマホで写真を撮ってくれた。





    *****





撮影が完了したところで、

マユコ(怨霊)
マユコ(怨霊)
……ゴメンナサイ……

…………アリガトウ……


怨霊は、すうっと消えていく。





完全に彼女が消え去った後、
ふとカホはスマホの画面へと目をやった。

そこに写っている “怨霊マユコ” の顔は、
とても穏やかで晴れやかな表情に見えたのだった。