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第14話

がすらチャンネル(4)「大炎上っ!」

 ――“本物の幽霊” としか思えない物体

そんなものが映る映像をいきなり見せられ、
やや黙り込んでしまったカホだったが、
落ち着いたところで、1つ気になることがあった。

梓山 カホ
梓山 カホ
ところでメイリちゃんは
「がすらの1人肝試し」
のこと、どこで知ったの?
式峯メイリ
式峯メイリ
だって今、この動画
ネットとかで
すっごく話題になってるよ?
梓山 カホ
梓山 カホ
そうなんだ……

やっぱりどう考えても
あれは本物の幽霊としか思えないし
そりゃ話題になるよね――
式峯メイリ
式峯メイリ
ちがうちがうっ、
話題になってる理由は
幽霊じゃないんだってば!

で、その別の理由のせいで
めちゃくちゃ炎上中なんだよねー
梓山 カホ
梓山 カホ
炎上? どうして?
式峯メイリ
式峯メイリ
だってあの家、
がすらのものじゃないんだよ?

勝手に入ったらじゃん
梓山 カホ
梓山 カホ
あ!

確かに……
式峯メイリ
式峯メイリ
実はね、ライブ配信を
リアルタイムで見てた人ってのは
そんなに多くなかったんだ

でも
「これ、不法侵入だよね?」
ってことで話題になっちゃって
あっという間に大炎上っ!

がすら本人も
「ヤバい」って思ったみたいで
ライブ配信のアーカイブの動画も
すぐに消したみたいなんだけど、
それで余計に炎上して
動画が拡散しまくっちゃってさー
梓山 カホ
梓山 カホ
……あれ?
がすらさんは動画を消したんでしょ?

動画自体は
もう存在しないはずなのに、
拡散されるっておかしくない?
式峯メイリ
式峯メイリ
だって動画って
カンタンにコピーできちゃうじゃん

さっきカホさんに見せたのも
コピーのほうの動画だよ!
式峯メイリ
式峯メイリ
元の動画がなくなってもさ、
あんなにすご~い勢いで
コピー動画がいっぱい拡散されたら
そりゃみんな見ちゃうよねぇ

で、見た人が増えれば増えるほど
どんどん拡散されてくよねぇ……
梓山 カホ
梓山 カホ
……
式峯メイリ
式峯メイリ
……で、炎上を受けて
がすらが謝罪動画出したんだ
梓山 カホ
梓山 カホ
もしかして
さっきメイリちゃんが言ってた
“別の動画” ってそれ?
式峯メイリ
式峯メイリ
そー!

短い動画だからすぐ終わるよっ
メイリは、手元のスマホで
先程とは別の動画を再生した。




    *



場所はどこかの室内。

がすら
………………
白い壁を背にした状態で、
無言のまま、神妙な面持ちで深々と頭を下げる
マスク姿の配信者・がすら。


心労のせいだろうか。

彼の目の下には、
肝試し動画の時には無かったはずの
大きなクマができてしまっている。

彼のトレードマークとも言える
鮮やかな紫色の髪の毛も、
心なしか以前よりボサボサになったようだ。




一呼吸おいて、彼はゆっくり喋り始める。
がすら
……えー、この度は、
私・がすらの軽率な行動により
たくさんの方へご迷惑をおかけし、
申し訳ありませんでした……
と、がすらは再び頭を下げる。


がすら
なお、“あのような形” で
配信が途切れたこともあり、
私を心配する声も多くいただきました


配信が途切れた原因は
ちょうどあのタイミングで
住宅の持ち主様に発見され
慌ててスマホを落としたためです

紛らわしい配信内容により
皆様に余計なご心配をかけてしまい
重ね重ね申し訳ありませんでした。

がすら、深いお辞儀3回目。


がすら
……今になって思えば、
あの時、なぜ
人様の敷地や住宅に
勝手に立ち入ってしまったのか
自分でもよく理解できていません……
がすら
……ですが、私が
ご迷惑をおかけしてしまったのは
まぎれもない事実です

それにも関わらず、
私が勝手に立ち入ってしまった
住宅の持ち主の方は
私の謝罪を受け入れた上で
許してくださいました

その寛大なお心に感謝いたします
がすら
また、私としては
しばらくは配信等の活動を自粛し、
反省をしたいと思います

それと同時に今一度、
自分自身を見つめ直すつもりです……


改めまして、今回は
本当に申し訳ありませんでした
と、4回目に彼が頭を下げたあたりで、
動画は終了したのだった。



    *



式峯メイリ
式峯メイリ
……とまぁ、こんな感じで
謝罪動画が出たわけだけどねー

それも話題になったせいで
さらに炎上が広がっちゃって、
今じゃ日本中から総攻撃で
がすらが叩かれまくりなわけ

しかもなんか
叩き方がけっこーえぐくてさ……
メイリはスマホを操作し、
今度はSNSのタイムラインをカホに見せる。



画面に表示されていたのは、
“#がすら” での検索結果。

そのほぼ全てが、がすらを責める内容だった。

もちろん無断での侵入行為をとがめる投稿が
大半ではあったのだが、
中には、彼の容姿を
ボロクソにけなすような投稿をはじめ
「そこまで言わなくても……」
と思わずカホが言いたくなるような
過激な内容のものも少なくなかったのだ。

梓山 カホ
梓山 カホ
ひ……ひどい
式峯メイリ
式峯メイリ
そーだよねぇ……


……こーゆーのも
”ってやつ?
梓山 カホ
梓山 カホ
…………


カホの場合、
インターネットを使うのは
もっぱらスマホでの調べ物が中心である。

あまり自分から積極的に書き込みをしたり
ましてや動画を上げたりなんて
したいともしようとも思ったことはない。

というわけで今のところ
彼女自身にネット炎上の経験があるわけではない。


だが一応、
ちらっと見たネットニュースか何かで
「ネットの炎上は怖いらしい」
ってことぐらいは知識として持っている。

梓山 カホ
梓山 カホ
(……あんな風に
 不特定多数の知らない人達から
 暴言を吐かれまくるなんて……

 もし私がそんな目にあったら……)
そんな想像をするだけで、
カホはちょっと身震いしてきてしまうのだった。


式峯メイリ
式峯メイリ
……ちょっと
話題が脱線しちゃったねっ

カホさん、
そろそろ話をもどしていい?
梓山 カホ
梓山 カホ
うん


……って、あれ?
何の話してたんだっけ?
式峯メイリ
式峯メイリ
たのみたいことがあるってやつ♪
梓山 カホ
梓山 カホ
あ、そうだった!


がすら炎上話から受ける激烈なインパクトで
カホはすっかり忘れてしまっていた。

今日こうやってメイリが来たのは
「カホに頼みたいことがあるからだ」
ということを。

梓山 カホ
梓山 カホ
そういえばまだ、
肝心の頼み事の内容を
聞いてなかったね……

それで、私に
頼みたいことって何かな?
式峯メイリ
式峯メイリ
あのねっカホさん

あたしといっしょに
幽霊を調べにいってほしいんだ♪
梓山 カホ
梓山 カホ
……?!
メイリの唐突な提案に、
一瞬、カホの思考が止まった。