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第13話

がすらチャンネル(3)「がすらの肝試し」
式峯メイリ
式峯メイリ
この動画はね、
“がすら” っていう配信者が
ちょっと前にやったライブ配信の
アーカイブなんだけど……


……たぶんカホさんも、
見たらびっくりすると思うんだよっ♪
と、メイリがスマホで再生し始めたのは、
動画「がすらの1人肝試し」。




まず画面に映ったのは、
どこかの住宅の玄関前にいる1人の若い男の姿。



おそらく夜だと思われる。

ほぼ暗闇に近い状態であり、
明かりはと言えば
遠くに感じられる街灯らしき淡い照明と、
男が右手に持つ懐中電灯だけ。

自撮りっぽいアングルであることから、
もう片方の手にはスマホを持って
自分で撮影しながら配信しているようだ。



周囲の様子は、正直よく把握できない。

全体的に暗いだけでなく、
しーんと静まり返っていて、
男の声以外ほとんど聞こえないからだ。

声を張り上げず
抑え気味にささやく感じで喋っているあたり、
一応、彼も気を使っているのかもしれない。




    *


がすら
……ハイハイどーも、
毎度おなじみ、色々やっちゃう
チャレンジ系配信者・がすらです

今日の配信では、
リスナーちゃんからのリクエストで
“1人肝試きもだめし” やっちゃうよっ


“がすら” と名乗る男の顔は
そこそこの大きさでは映っているものの、
周囲の暗さに加え、映像の画質が荒いことや
彼がマスクをしていること等もあって
人相はよくわからない。

だが、今時っぽい服装や髪形は
細身の彼によく似合っている。

やや特徴がある喋り方や動きも含めて、
「イケメン系お笑い芸人みたいな感じ」だと
表現すれば、雰囲気が伝わるのではなかろうか。

がすら
……てなわけで、
がすらが来ているのは、
M市某所の住宅街にひっそり建ってる
“幽霊がいそう” なおうち!

一部では
「あそこ心霊スポットらしいわよぉ」
なんて噂もあるとかないとか……

……その噂がホントかどうか、
今日は俺・がすらが
確かめちゃうんだけどな!
がすら
いやぁ……玄関には
蜘蛛の巣が張られまくってるし、
おうちの周りは草ボーボーだしで、
人が住んでる感じは無いねぇ……

状況を細かく実況しつつ、
がすらは家の周りを歩いていく。


色々なところを映しながら
のんびり小声でリポートしているうち。
がすら
あれれれ? 
ここ、開きっぱじゃね?

……ああなるほど、
鍵が壊れちまってんのか
いわゆる “勝手口” と呼ばれる入口のドアが
開いているのを見つけた模様。
がすら
どーしよっかねぇ……



少し迷ったようだが……


がすら
……ま、誰も住んでなさげだし
ちょっとだけ失礼するぜ!
結局、中に入ることに決めたらしい。


彼はドアの隙間から中を伺い
本当に誰もいないかを確認してから、
レンズの向こうの閲覧者達に笑いかけた。
がすら
ちょっとだけだからな……?
そして、
わざとらしいオーバーな抜き足差し足等で
おちゃらけつつ家の中へと入っていく。




家の中は、外以上に暗い。

カーテンの隙間から漏れるわずかな薄明かりは
ほとんど無いに等しいと言ってよい。


がすら
これは……食器棚か?

……お皿もコップも茶碗も
大量に置きっぱなしじゃねぇかよ

まだ使えそうなのに、
こんなにホコリ積もっちまって
もったいねぇよなぁ……

男は、唯一の光源である懐中電灯で
部屋のあちこちをピンポイントで照らしつつ、
さっきと同じように実況していく。



その流れのまま
廊下に足を踏み入れた時だった。





 ――ガラガラッ!!



急に、凄い勢いで重い引き戸を開ける音。
がすら
?!

それまでずっと喋りつづけていた男が
焦ったように黙り込んだと思った次の瞬間。
がすら
ヒギャァアアーーッッ!!!!!
間髪入れずに
断末魔にも思える必死の叫びが響き渡る。

と同時に
画面がぐるぐる激しく乱れ、
プツッと映像が止まってしまったのだった。



    *



梓山 カホ
梓山 カホ
??

ここで終わり……?
式峯メイリ
式峯メイリ
うん、この動画はね……
梓山 カホ
梓山 カホ
ええッ?!

それじゃこの
がすらさんって人、
いったいどうなっちゃったの?!
式峯メイリ
式峯メイリ
いちおー無事ではあるっぽいよ!

がすら、この動画のあとにも
別の動画あげてるからさっ
梓山 カホ
梓山 カホ
そうなんだ……
それなら、よかったけど……



えっと……その……


…………


カホは動画の最後あたりに、
他にも少々 “” があった。


だが、果たして
” を口に出してしまって、
本当によいのだろうか……。


彼女の心には
そんな戸惑いが渦巻いていたのだった。

式峯メイリ
式峯メイリ
……もしかして、

気づいちゃった?
梓山 カホ
梓山 カホ
……え?
式峯メイリ
式峯メイリ
カホさんが気にしてるのって
たぶんあれでしょっ!

ちらっと映った
梓山 カホ
梓山 カホ
あ……うん、そう!

先程の動画には、
がすらが廊下に足を踏み入れた際、
” が映っていたのだ。


とはいえ
それが映ったのは画面の隅に小さく
ごくわずかにうっすら見えるか見えないか
と思うぐらいの感じだったし、
しかも「ガラガラ」という音がすると同時に
スッと消えてしまったため、
ほんの一瞬しか確認することができなかった。


普通だったら、
そんなもの気にも留めないだろう。


……そう、   だったならば。


梓山 カホ
梓山 カホ
白いものが映った時、
何だかがあったんだ

あの感じって、まるで――
式峯メイリ
式峯メイリ
“マユコさん” ?
梓山 カホ
梓山 カホ
…………うん


カホとメイリは、先日、
“どう考えても普通じゃない事件” に
巻き込まれていた。

そして、その事件を引き起こしていた犯人こそ、
“マユコ” という少女の幽霊だった。


映像に映る白いものを見た瞬間の
カホたちの感覚は、まさに
幽霊マユコがいた廃ビルに行った時に感じた
何ともいえない重苦しさや寒気に
限りなく近い雰囲気のものであったのだ。

梓山 カホ
梓山 カホ
ということは、
映像に映ってた “あれ” って……
式峯メイリ
式峯メイリ
……たぶんだけど

あたしも、同じ意見な気がする
梓山 カホ
梓山 カホ
…………



本物の……幽霊……

ためらいがちにつぶやくカホ。

どう考えても、彼女の中では
それ以外の正解が見つかりそうになかったのだ。