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第15話

がすらチャンネル(5)「気にならない?」

「一緒に幽霊を調べに行ってほしい」
とのメイリの言葉に、一瞬固まってしまったカホ。


停止していた彼女の思考が再び動きだした時。

梓山 カホ
梓山 カホ
……えぇッ?!
まず襲ってきたのは、驚きの感情だった。

梓山 カホ
梓山 カホ
ちょ、ちょっと待ってよ!
相手は本物の幽霊なんだよ?!
調べになんか行ったら危ないって!
式峯メイリ
式峯メイリ
へーきへーき♪

“心霊ちゃん” の時だって
なんとかなったじゃんっ
梓山 カホ
梓山 カホ
あれは偶然
どうにかなっただけだから!

よくよく考えてみたら私達、
かなり行き当たりばったりの
結構な危ない橋を渡ってたよ?!
式峯メイリ
式峯メイリ
でも、なんとかなったよね?
梓山 カホ
梓山 カホ
結果的にはそうだけど、
次もうまくいくとは限らないよね?
式峯メイリ
式峯メイリ
だいじょーぶ♪

「ホントに危ない」ってなったら
そこで調べるのやめるもんっ!
梓山 カホ
梓山 カホ
それだったら最初から、
わざわざ危険に首を突っ込む真似
しないほうがいいと思うけど
式峯メイリ
式峯メイリ
え~、たのむよー

もしここでカホさんに断られたら、
あたし1人で調べる感じに
なっちゃうんだよぉ……
梓山 カホ
梓山 カホ
いや、メイリちゃんなら
あたしじゃなくても
誘える友達とかいるんじゃない?
式峯メイリ
式峯メイリ
そりゃ友達はいるけど、
今回はカホさんじゃなきゃダメなの!
梓山 カホ
梓山 カホ
どうして?
式峯メイリ
式峯メイリ
だって他の子とも
いっしょに動画見たけど、
あの “白いの” 見ても
誰も「あれは本物の幽霊だ」って
分かってくれる子いないんだもん

あたしが
「これ、幽霊じゃない?」
って言っても

みんな
「気のせいだから!」
って笑うだけだし……
式峯メイリ
式峯メイリ
……カホさんだけだよっ

あれが幽霊だって
すぐにわかってくれたの!
梓山 カホ
梓山 カホ
!!



先程の映像に映っていた “白いもの”。

それが “幽霊” だとカホが思った理由は、
本物の幽霊マユコと会った時の感覚と
 同じような感じがしたから」
であった。


だが、仮にもし自分が
“心霊ちゃん事件” に関わっていなかったとしたら?

おそらく「気のせい」という意見に
同調していたのだろうとカホは思った。


梓山 カホ
梓山 カホ
……そっか、
あの場にいたのって
私とメイリちゃんとお兄さんの
3人だけだったから――
式峯メイリ
式峯メイリ
あ、
ハルオミ兄ちゃんを
さそうのだけは絶対ないからね?

兄ちゃんに言おうもんなら
いっしょに調べてくれるどころか
「何考えてるんだ!!」
とか怒って、全身全霊で
ジャマしてくるに決まってるもん!
梓山 カホ
梓山 カホ
あぁ……
……なんか、分かる気がする


ハルオミは、妹であるメイリの保護者的存在だ。

彼が、たった1人の家族である妹のことを
すごく大切にしているようだというのは
ちょっと話しただけのカホでもすぐに分かった。


だからこそ、
「幽霊を調べる」なんて言い出されたら……

……そりゃメイリが言う通りの反応になるだろう、
と、カホは思ったのだ。

式峯メイリ
式峯メイリ
ってなると、ほらっ!

やっぱカホさん以外に
いっしょに調べてくれそーな人
他に誰もいないよね??
梓山 カホ
梓山 カホ
確かにそうだけど……
梓山 カホ
梓山 カホ
(……映像見る限り
 なんだか本物の幽霊っぽいし……

 あまり、気は進まないな……)



そもそもカホは、どちらかと言えば
幽霊とかお化けとかいった種類の
いわゆる「ホラー系」は苦手なほうだ。


先日の事件だって、好き好んで
幽霊と対峙する羽目になったわけではない。

色んな事情が重なったため、
結果としてそうなっただけなのである。


式峯メイリ
式峯メイリ
ちなみにカホさんはさー、
さっきの動画
全然まったく気にならないの?
梓山 カホ
梓山 カホ
そ、それは……!
式峯メイリ
式峯メイリ
おっ、やっぱカホさんも
気になってんじゃーん♪
梓山 カホ
梓山 カホ
…………
梓山 カホ
梓山 カホ
……そりゃ、私だって
少しぐらいは気になるよ……

だって、ひどすぎるもの!

いくらなんでも
皆で寄ってたかって
がすらさんのこと
あそこまで叩かなくたって……



――謝罪動画に映る配信者・がすらの
明らかに弱弱しく参ってしまっている姿

――不特定多数の人達が
“#がすら” をつけてSNSに書き込んだ、
見るにえない暴言の数々


先程見せられたそういった光景が
カホの頭の中には、生々しく浮かんでいた。


過剰としか思えないほど叩かれまくっている
がすらの心境を考えると……

……彼女の心はズキズキと痛み出すのだった。


式峯メイリ
式峯メイリ
……あれ?
気になるって、そっち??
きょとんとするメイリ。
梓山 カホ
梓山 カホ
そうだけど……
式峯メイリ
式峯メイリ
いやさー、あたしは
ただ単純に幽霊が気になるだけで
正直、がすらはどーでもいいかなっ
梓山 カホ
梓山 カホ
へ?!
式峯メイリ
式峯メイリ
だってあたしは
がすらのファンでも友達でもなければ
炎上前まで存在すら知らなかったし、
別にそこまでキョーミないもん
梓山 カホ
梓山 カホ
でも、がすらさん、
あんなに叩かれまくってるんだよ?

ちょっとひどすぎると思う!
式峯メイリ
式峯メイリ
確かにひどいけどさ、
自業自得じゃない?

叩かれてるのは
がすらが不法侵入したせいだもんっ
梓山 カホ
梓山 カホ
そうかもしれないけど……

でも……このままじゃ
がすらさんが、あまりにも……
式峯メイリ
式峯メイリ
おや……?

もしかしてカホさん、
がすらのこと
実はけっこー好きだったり?
梓山 カホ
梓山 カホ
そんなんじゃないよっ!
式峯メイリ
式峯メイリ
だよねー!

なんたってカホさんには
ハルオミ兄ちゃんがいるもんねっ♪
梓山 カホ
梓山 カホ
?!
梓山 カホ
梓山 カホ
ど……


……どうしてそこで
お兄さんの名前が出てくるのっ!
式峯メイリ
式峯メイリ
もー、わかってるくせにぃー♪

そんなムリして
とぼけなくてもいいんだぞぉ♪
梓山 カホ
梓山 カホ
えっと……その……


上手い答えが見つからず、カホが困っていると。

式峯メイリ
式峯メイリ
……とまぁ冗談は
これぐらいにしておいて
メイリのほうで話を変えてくれた。
梓山 カホ
梓山 カホ
(……ほっ)
安堵するカホ。

式峯メイリ
式峯メイリ
カホさんはさ、
がすらを助けてあげたい
って気持ちなんだよね?
梓山 カホ
梓山 カホ
うん
式峯メイリ
式峯メイリ
じゃあ具体的に
「何かこーゆーことするぞ!」
って思ってること、なんかある?
梓山 カホ
梓山 カホ
そ、それは……!


――自分にできることなら
炎上に苦しむ配信者・がすらを助けたい


そんなカホの気持ちは、本心から来るものだ。
これは決して、嘘なんかじゃない。

しかし……。


梓山 カホ
梓山 カホ
(……だからといって
 いざ「何ができるか」って
 考えても、何も浮かばない……

 ……というか、私なんかに
 できる事なんてあるのかな……?)
式峯メイリ
式峯メイリ
いまのとこは
特にないって感じ?
梓山 カホ
梓山 カホ
うん…………


黙り込んでしまったカホに向けて、
メイリは言葉を続ける。

式峯メイリ
式峯メイリ
そしたらカホさん、
あたしといっしょに
幽霊を調べてみるって
ことでどーかな?
梓山 カホ
梓山 カホ
えっ? 
なんでそうなるの?
式峯メイリ
式峯メイリ
だって幽霊を調べるんなら
結局は、がすらのことも
調べることになるじゃん!

あの動画を撮影したのは
がすらなんだから、
つまりあいつも
手がかりのひとつってわけでしょ?
式峯メイリ
式峯メイリ
がすらのことを調べてるうちに
もしかしたら
炎上を何とかする方法
思いついちゃうかもよっ♪
梓山 カホ
梓山 カホ
そんなに上手くいくわけない
と思うんだけど……

カホからしてみれば、
メイリの提案は、やや強引な理論のように思えた。

だが他に何かできることがあるかというと、
特に良い考えがあるわけでもない。
梓山 カホ
梓山 カホ
(……メイリちゃんの案にも
 一理あると言えばあるんだよね

 何事にも
 “調べて初めて見える事実”
 が隠れてる可能性が無いとは
 言い切れないものだし……)



少し迷ってから、カホは答えた。


梓山 カホ
梓山 カホ
……とりあえず、
調べるだけ調べてみようかな
式峯メイリ
式峯メイリ
よしきたっ♪

早速2人は
「具体的に何から調べるか?」
ということを話し合い始めるたのだった。





    *****



式峯メイリ
式峯メイリ
……でもね、
正直、カホさんだったら
あの動画も見てるかもなって
思ってたよー
話が軽くまとまったところで、
思い出したようにメイリが言った。

梓山 カホ
梓山 カホ
なんで?
式峯メイリ
式峯メイリ
がすらが侵入した家って
あたしたちが住んでるM市に
あるわけじゃん?
梓山 カホ
梓山 カホ
あぁ……そういえばがすらさん、
動画の頭でそんなこと言ってたね
式峯メイリ
式峯メイリ
そーゆーのもあったから、
ネットだけじゃなく
うちのクラスとかでも
すっごく話題になっててさー

だからてっきり、
うちと同じM市にある
カホさんとこの高校でも
騒がれてるとばかり思ってた!
梓山 カホ
梓山 カホ
?!

人見知りなカホは
学校では基本、1人で静かに過ごしている。


先日の “心霊ちゃん” の事件がきっかけで
クラスメイトらサナやユリエと多少話す機会はあったものの、
決してそこまで仲良くなったわけではない。

事件後、割とすぐに夏休みに突入したが、
特に用事もない以上、
休み中にわざわざ連絡など来るはずもない。

そしていざ夏休みが明けてみれば、
結局クラスでのカホの行動スタイルは
事件前と変わらず単独行動が基本となっていた。



もしかしたら、カホのクラスでも
がすらの動画が話題になっているのかもしれない。

だが、カホとクラスメイトとの距離感が
上記のような状況である以上、
例え周りで非常に話題になっていたとしても
カホ自身の耳に入ってくるなんてことは
決してありえないわけで……。


梓山 カホ
梓山 カホ
あ、あはは……
乾いた笑いをしてごまかす以外、
彼女には取るべき選択肢が浮かばなかった。