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第17話

がすらチャンネル(7)「人違いです……」
式峯メイリ
式峯メイリ
ねぇカホさん、
がすらがどーしたの?
不思議そうにたずねるメイリ。
梓山 カホ
梓山 カホ
えっと、あのね
たぶんこの店員さん、
がすらさんだと思うの
式峯メイリ
式峯メイリ
そーなの?
梓山 カホ
梓山 カホ
ですよね、がすらさん!
定食屋の男性店員
…………


……人違い、です……

店員はやや目を泳がせたものの、
床に落とした伝票ホルダーを拾う形で
わざとらしくカホから顔をそらす。
梓山 カホ
梓山 カホ
人違いじゃないと思います

だってあなたの声、
動画で聞いたがすらさんのと
同じ気がするんです
式峯メイリ
式峯メイリ
なるほどっ、
言われてみたら
確かにそっくりかもー♪
定食屋の男性店員
いや、ですから人違いで――
式峯メイリ
式峯メイリ
あれ??

店員さん、
バンダナの端っこから
が見えちゃってるよ?
定食屋の男性店員
まじかよぉ?!
念入りに隠したはずなのにッ!
店員は慌てて
バンダナと肌の境目を腕で隠した。
梓山 カホ
梓山 カホ
 ! 
式峯メイリ
式峯メイリ
 ! 


カホとメイリは顔を見合わせ、
それから同時にうなずいた。

梓山 カホ
梓山 カホ
あの……やっぱりあなた
がすらさんですよね?
定食屋の男性店員
ち、違いま――
式峯メイリ
式峯メイリ
違わないっ!

“紫色の髪”といえば
がすらのトレードマークだよっ
梓山 カホ
梓山 カホ
今時、
髪を紫に染めてる若者って
あまり多くはないと思います
定食屋の男性店員
た、たまたまだよ!

そりゃ紫って珍しいかもだけど
たまたま偶然選んだカラーリングが
かぶっただけで――
式峯メイリ
式峯メイリ
あ、ごめーん

「紫色の髪が見えた」
ってやつ、うっそでーす♪
定食屋の男性店員
はぁ?!


なんだよまったく、
驚かせやがって……
ほっとした様子で腕をおろす男性店員。
式峯メイリ
式峯メイリ
……カホさん、
これではっきりしちゃったね
梓山 カホ
梓山 カホ
うん、そうだね
定食屋の男性店員
ん?

何がはっきりしたんだよ?
梓山 カホ
梓山 カホ
あなたが
がすらさんだってことです

もしあなたが
がすらさんじゃなかったら、
紫色の髪にそこまで反応するの
おかしくないですか?
式峯メイリ
式峯メイリ
だよねー♪

さっきの店員さんの反応、
むちゃくちゃ不自然だったよ
定食屋の男性店員
うっ、そ れ は……


男性店員は再び目を泳がせ、
そして観念したように、
ハァ……と大きくため息をついた。

がすら
……確かに俺はがすらです
その事実は認めます……

認めますから、
俺が働いてる場所とかを
ネットにさらすのだけは
勘弁してください……
梓山 カホ
梓山 カホ
へ?
式峯メイリ
式峯メイリ
別にあたし達、
ネットにさらす気ないけど?
がすら
いやー、そう言いつつも
いいね稼ぎのために
こっそりSNSにUPしたりとか
するんでしょ?
式峯メイリ
式峯メイリ
えー、なんで
そんなことしなきゃいけないの?

わざわざさらすのめんどい

というかあたし、別に
がすらにはキョーミないもん
がすら
ッ?!

きょ……興味ないとまで言われると
それはそれでショックだなぁ……
式峯メイリ
式峯メイリ
あっでも、
がすらにはちょっと
聞きたいことあるんだよね
がすら
えっ??
俺には興味ないはずなんじゃ?
式峯メイリ
式峯メイリ
うん、キョーミない

あたしが聞きたいのはね――
定食屋の店長
おい須賀平スガヒラ
珍しく若い娘さん達が来たからって
いつまでも
油売ってんじゃねぇぞ!
話し込む男性店員がすらにしびれをきらしたらしい
おじさん店長が、
カウンターの中からやや声を荒げる。

がすら
へい店長っ、
すいません!!
声を張って即答するがすら。

式峯メイリ
式峯メイリ
スガヒラって?
がすら
俺の本名さ、
“がすら” はあくまで
配信する時の名義でね
梓山 カホ
梓山 カホ
なるほど、
本名が “スガヒラ” だから、
もじって “がすら” なんですね
がすら
当たりぃ!
式峯メイリ
式峯メイリ
というかさー、
がすらって配信者なのに
なんで定食屋で働いてるわけ?

あ! 潜入配信とか??
がすら
ちげぇよ、
普通にバイトしてんの
式峯メイリ
式峯メイリ
なんで?
「配信者はもうかる」
ってTVでやってたよ?
がすら
儲かるやつはそうらしいけどよ、
そんなの一握りの
超人気配信者だけだって!
がすら
そりゃ確かに俺にだって
ありがてぇことに
少しはファンもついてるけどさ、

俺ごときの中途半端な人気じゃ
配信の収入だけで食ってくなんて
「絵に描いた餅」状態で、
まだまだそんな段階じゃねぇよ
式峯メイリ
式峯メイリ
そーいうもんなんだ
がすら
というわけで、
いつかは俺も超人気配信者に
仲間入りするのを夢に見ながら

こうやって
朝から昼まで真面目にバイトして
堅実に生活費を稼いで

バイト終了後の
夕方から満を持して本業の活動、
つまりッ!!
配信を行い続ける毎日ってわけよッ
がすら
……まぁ、今は
で配信活動休止中、
再開の目処など一切立たず、
なんだけどなぁ……ハァ……
と、ため息交じりに
明後日の方向を見上げる彼の背中には、
どこか哀愁のようなものが漂っていた。

がすら
……ってか
これ以上無駄話してたら
また店長に怒られちまうよ
がすら
なぁ!

今日は俺
15時で上がりだからよ、
話の続きはその後でどう?

俺の行きつけの喫茶店で
食後のドリンクぐらいだったら
おごるってことでさ!
式峯メイリ
式峯メイリ
おっけー♪
梓山 カホ
梓山 カホ
あ、はい




    *****





カホとメイリは定食屋で
しっかりゆっくり昼食をとりつつ休んだあと、
がすらに指定された喫茶店へと移動する。


彼の行きつけだという喫茶店は、
定食屋を出て徒歩10分ほどの場所にあった。

がすらに言われた通り
2人で先に店内へと入る。

あとでがすらが来ることを考え、
4人掛けテーブルの片側に
カホとメイリが並んで腰かけ、
注文したドリンクを楽しんでいると。


15時を回った頃、
カホ達の席へが現れた。
不審な男
…………
薄手の黒パーカーのフードを目深にかぶり、
目元には妙に大きなサングラスと、
髪と顔の大半がすっぽり隠れてしまっている。
梓山 カホ
梓山 カホ
?!
式峯メイリ
式峯メイリ
?!
“典型的な不審人物” の登場に、
反射的にビクッとしてしまうカホとメイリだが……
不審な男
……よう!

無駄にかっこつけてサングラスをずらし、
フレンドリーに挨拶してきた男の顔を確認し、
一気に肩の力が抜ける。
梓山 カホ
梓山 カホ
ふぅ……
式峯メイリ
式峯メイリ
なんだ、がすらじゃん……
がすら
「なんだ」ってなんだよ?

メイリちゃんとカホちゃんは
俺と待ち合せてたんだから、
他の誰でもなく
俺が来るに決まってるだろ?
あきれ顔のがすらは、
4人掛けテーブルを挟んで
カホ達とは反対側の空いた席へと腰かけた。
梓山 カホ
梓山 カホ
……それはそうなんですけど、
がすらさんの服装に
ちょっとびっくりしちゃって
式峯メイリ
式峯メイリ
そーそー!

あまりにも怪しすぎ
がすら
しょうがないだろ……

炎上真っ只中にいる以上
俺がここにいることを
気づかれるわけにゃいかねぇんだから

用心には用心を重ねるぐらいが
ちょうどいいんだよ!
梓山 カホ
梓山 カホ
(……でも、その服装だと
 逆に目立ってるような気が……)


店内はそこまで混んでいなかったが、
あちらこちらのテーブルから、
ちらり、ちらりと視線を感じてしまう。

その視線は明らかに
“不審な服装のがすら”へと向けられたもの
ではないかと、カホは思ってしまうのだ。

がすら
ってかさ、俺
朝から何も食ってねぇのよ

腹が減ってしょうがねぇから
とりあえず注文だけさせてくれ


店員を呼んだがすらは
メニューを見ることもなくナポリタンを注文。

そのあまりにも慣れた様子こそ
彼が喫茶店を行きつけにしていることの
あらわれだと言ってもよいだろう。



注文を受けた店員が厨房へと戻っていく姿を
見送ったところで、がすらが話を切り出す。
がすら
念には念を入れての確認だけど、
俺の目撃情報とか
ネットにUPしてないよな?
式峯メイリ
式峯メイリ
くどいっ
梓山 カホ
梓山 カホ
UPしてませんから
安心してください
がすら
いやでも、
君たちぐらいの年の子だと
“いいね” がほしくて
しょうがないって聞くからさ、
「もしかしたら」
って思うと心配で心配で――
式峯メイリ
式峯メイリ
あれ? 

そこまでしつこく言うってことは
もしかして逆の意味パターン?
がすら
え……?
式峯メイリ
式峯メイリ
がすらってば実は
「俺のこと、早くさらしてくれー」
とか思ってるの??
がすら
まさかッ!!

お願いですから、
さらすのだけは勘弁ですッ
式峯メイリ
式峯メイリ
よし、だったら
その話はここで終わり!
がすら
はい……
梓山 カホ
梓山 カホ
(……完全にメイリちゃんが
 主導権を握ってるなぁ……
 
 がすらさんって、私たちより
 だいぶ年齢が上っぽいのに……)

年下のメイリが、年上のがすらを
余裕で手のひらの上で転がしていく様子に
カホは苦笑いしてしまう。
がすら
……ところでメイリちゃんは
俺に聞きたいことがあるとか
言ってたよね?
式峯メイリ
式峯メイリ
うんっ

配信で侵入した家のこと
詳しく教えてほしいんだよね!
がすら
いや、それは……
式峯メイリ
式峯メイリ
勘違いしないでよっ

がすらにも炎上騒ぎにも
キョーミないってのはホントだもん

あたしがキョーミあるのは
あくまで幽霊のほうだからね?
がすら
ゆ、幽霊?
なんのことだよ?
式峯メイリ
式峯メイリ
配信に映ってたじゃん
がすら
勘弁してくれよぉ

俺は確かに
「幽霊がいそうだな」
と思った家に侵入しちまったけど、
別に幽霊に会った記憶はねぇよ
梓山 カホ
梓山 カホ
それが、実はいたんです
がすら
カホちゃんまで
何言い出すんだってば……
式峯メイリ
式峯メイリ
ほら、これ、
がすらのこの間の
1人肝試し配信の終わりあたりの
スクリーンショットだよっ
と、がすらにスマホ画面を見せるメイリ。
式峯メイリ
式峯メイリ
画面の端っこに映ってる
この白いやつ、
たぶん本物の幽霊だと思うの
がすら
これ……?

確かに何か映ってるけどさ、
別に幽霊とは限らないんじゃ――
式峯メイリ
式峯メイリ
ううん、本物の幽霊だよ、
あたしたちにはわかるんだ!

ねっカホさん?
梓山 カホ
梓山 カホ
うん!
がすら
はっきり断言してるけど
証明できる根拠でもあんのか?
梓山 カホ
梓山 カホ
そ、それは……
言葉に詰まってしまうカホ。



動画に映っているのが本物だと確信したのは、
ひとえに過去、カホやメイリが
本物の幽霊に遭遇した経験があるからこそ。

だが、それを経験していない人間がすらに対して
どうやったら証明できるというのだろう。

梓山 カホ
梓山 カホ
……説明しても、
信じてもらえるかどうか……

自分達の経験は、
はっきり言って特殊なケースだ。
正直に話したところで
理解してもらえる可能性はほぼ無いのでは……?

カホは、そんなことを考えていた。

式峯メイリ
式峯メイリ
カホさん、
とりあえず説明してみよーよ!
梓山 カホ
梓山 カホ
でも……
式峯メイリ
式峯メイリ
もし説明しても
信じてもらえないってなってもさ、
そのあとどーするかは
あらためて考えればいいじゃん
梓山 カホ
梓山 カホ
え……大丈夫かな……
式峯メイリ
式峯メイリ
だいじょぶだいじょぶ、
なんとかなるって♪
ニカッと笑うメイリ。


その笑顔は自信に満ち溢れていて、
なんだかカホは安心した。
梓山 カホ
梓山 カホ
……うん
式峯メイリ
式峯メイリ
おっし!



メイリが、がすらのほうへと向き直る。
式峯メイリ
式峯メイリ
……ねぇがすら、
ちょっと前に流行ってた
“心霊ちゃん” っていう
アプリのこと、知ってる?
がすら
ああ、知ってる
配信で1回ネタに使ったぜ!

マジもんっぽい心霊写真が
簡単に撮れて盛り上がったし、
配信としては
そこそこ数字取れたんだよなぁ
式峯メイリ
式峯メイリ
じゃーさ、
“心霊ちゃん” の噂話は?
がすら
M市のやつだろ?

「M市で “心霊ちゃん” 使って
 撮影すると、本物の幽霊に
 憑りつかれる~」
とかいう、
どっかで聞いたような話だよな

せっかくだから俺も配信で
便乗しようとしたんだけどよぉ、
別に何も起きなかったぞ!
式峯メイリ
式峯メイリ
実はさっ
あたしもカホさんも
“心霊ちゃん” で本物の幽霊に
憑りつかれちゃった同士なんだよねー
がすら
まっさかぁ~~!!

冗談きついぜ、ハハハハ……
梓山 カホ
梓山 カホ
…………
式峯メイリ
式峯メイリ
…………
カホとメイリは、黙って顔を見合わせる。




笑い飛ばしていたがすらだが……
がすら
って……?


……えっ?! まさか……

女子2人が真剣な表情をしているのに
気づいたらしく、がすらの顔が引きつる。
がすら
それ、冗談とかじゃなくて……

……ほんとにあった話ってやつ?
式峯メイリ
式峯メイリ
そーだよ
梓山 カホ
梓山 カホ
はい……
がすら
…………


カホとメイリは、お互いに補足し合いつつ
先日自分達が巻き込まれてしまった
“心霊ちゃん” の事件について
おもむろに語りはじめた。



元はと言えば “心霊ちゃん” は、
メイリの兄・ハルオミが作ったアプリであること。

だがある日、アプリが忽然と消えたこと。

気が付けば “心霊ちゃん” の噂話が
広まっていたこと。

それを調べ始めたメイリが幽霊に憑りつかれ、
意識不明&幽体離脱状態になってしまったこと。

他にもM市の高校生が何人も憑りつかれ
大変な状況になっていたこと。

カホをおとしれようとしたクラスメイトも
幽霊に憑りつかれ錯乱しまったこと。

カホが “心霊ちゃん” の調査を開始したところ、
レアアイコンの場所でハルオミと遭遇し、
そして幽体状態のメイリに憑りつかれたこと。

メイリの調査結果を元に、
“犯人である怨霊” の本拠地へ乗り込んだこと。

怨霊マユコが消え、それと同時に
アプリ “心霊ちゃん” も完全消滅したほか、
幽霊に憑りつかれていた高校生達が
元の状態に戻ったこと。




2人の話が一区切りついたところで
聞き役に徹していたがすらが
さっきより少し真面目な顔で言った。
がすら
なるほどなぁ……

そんなことがあったんなら
そりゃ、俺の配信に映ってた幽霊
とやらも気になっちまうよなぁ
梓山 カホ
梓山 カホ
え?

がすらさん、私達の話を
信じてくれるんですか?
がすら
俺も配信に使うってなった時、
“心霊ちゃん” については
かなりしっかり調べたからな

色々調べといたほうが、
配信時の話のネタに使えるだろ?

その時に調べた内容と
今のカホちゃん達の話とに
矛盾が無さそうな気がするのさ

しかも俺が配信に使った数日後、
“心霊ちゃん” っていうアプリ自体が
たくさんの人の端末から消滅したって
一部で少し話題になったんだよな……
がすら
……まぁそこまで騒いでるやつも
いなかった気もするけど

完全無料アプリで
課金者もいねぇってのが
やっぱり騒がれにくい要素だろな
式峯メイリ
式峯メイリ
たしかにさー、
無料で使ってるアプリだったら

なんかあっても
「無料だからしょうがない」
ってあきらめられるもんねっ♪
がすら

だろ?
これがもし課金しちまってたら
そうはいかねぇよなぁ!


それに……


……そ、それに……
がすら
…………

がすらは何かを言いかけようとするも、
そのまま言葉を続けるのをためらうかのように
途中でやめてしまった。

梓山 カホ
梓山 カホ
……それに?
がすら
その……

君らが説明してた
「ここに幽霊がいるぞ」
っぽい感覚のことなんだけど……
がすら
……何となく、俺も
分かるような気がすんだよな
梓山 カホ
梓山 カホ
え?
式峯メイリ
式峯メイリ
でもさっき、がすらは
幽霊のこと否定してたじゃん
がすら
さっきはそう思ったんだよ!

一般論としては
「幽霊なんか存在しない」
ってのが、やっぱ普通だからな
がすら
だけど、話を聞きつつ
よくよく考えてみたらさ

今回の1人肝試し配信に関して
いわゆる
“科学とかじゃ説明できない感覚”
ってやつに、
俺も心当たりがあったんだ
梓山 カホ
梓山 カホ
心当たりというのは
具体的にはどんな感覚でしたか?
がすら
そうだなぁ……


……あ、そもそも
あの家で配信をすることに
決めた時からおかしかったんだよ
式峯メイリ
式峯メイリ
1人肝試し配信の
きっかけって何だったの?
がすら
配信を見てくれてる人から
「心霊スポットで1人肝試しして」
というリクエストをいただいてな!

ただ、リクエストの内容自体は
本当にそれぐらいしか無くて、
その段階で
場所の指定だとかが
あったわけじゃねぇんだ

だから基本、配信の詳細は
俺のほうで考える形だったわけ
がすら
だけどさ、
リクエスト受けて
「どっかいい感じの心霊スポット
 あったっけかな?」
って考え始めた瞬間

どういうわけか急に脳内に
パッとのことが浮かんだ瞬間
頭にこびりついて
離れなくなっちまって……
がすら
……あとで思えば、あれが
“科学とかじゃ説明できない感覚”
の始まりってやつな気がする

うまく言えねぇけど、
あの時の俺は
「フラフラっと吸い寄せられて、
 それ以外のことが何も
 考えられなくなっちまった……」
みたいな感じで、
あとから考えたら
おかしかったと思うんだよなぁ
式峯メイリ
式峯メイリ
そーいや謝罪動画でも
「今になって思えば、どうして
 自分がそんなことしたのか
 よくわからない」
的なこと言ってたね

あれってそーゆー意味だったんだ
がすら
で、のこと考えつつ
勢いで軽く企画書書いて、
そのノリのまま
ライブ配信しちまって……

……気が付いた時にゃ
あんなことになっちまってて、
もう全てが手遅れ状態だったわけ
がすら
俺、こう見えても普段は絶対、
人様に迷惑かける配信はしねぇし
しようと思ったことすら
無かったはずなんだぜ?

だけど……あの日は違った

俺が俺じゃねぇというか……

俺じゃねぇ “誰か” が
俺を操ってるとでもいうか……
がすら
……でよぉ、
さっきの君らの話聞いてるうちに
ふと……気づいちまったんだ

あの日の俺、
もしかすると “” に
憑りつかれてたんじゃねぇかって

例えば……
がすら
……そう、“” とかにな……
梓山 カホ
梓山 カホ
…………
思わず絶句してしまうカホ。



がすらの話は正直、突拍子もない内容だ。

しかしカホは、それに負けず劣らずな
不思議な出来事へ遭遇した経験がある以上、
話の内容を頭ごなしに否定することはできない。

そして
彼の話を否定できないということはすなわち、
例の家での配信映像に映りこんでいた
“白い何か=本物の幽霊” という説の信憑性が
一気に高まることをも意味するのである。


喫茶店の店員
おまたせしました、
こちらナポリタンです
絶妙に話のきりがいいタイミングで
喫茶店の店員がナポリタンを運んできた。
がすら
話し中わりぃけど
遠慮なく食わせてもらうぞ!

ここのナポリタンは
出来立てがうめぇからよぉ、
すぐ食わなきゃもったいねぇのよ!
さっきまでの深刻な表情はどこへやら、
がすらは嬉しそうにナポリタンを食べ始める。


式峯メイリ
式峯メイリ
……あ、あたし
ちょっとトイレ行ってくる

カホさんも行こー♪
梓山 カホ
梓山 カホ
え、うん……
メイリに連れられるまま、
カホもは席を外したのだった。