無料ケータイ小説ならプリ小説 byGMO

第5話

心霊ちゃん(5)「……よし、調査開始」



カホは勢いのまま、
通りすがりに見かけたカフェへと入った。

こじんまりと落ち着いた店内には
おしゃれなジャズ系音楽がうっすら流れている。


注文したのは大好きなアイスレモンティー。

軽く一息つきつつ、
同時に気合いも入れていく。



このあと彼女には
大事な調査が待っている。

手を出したが最後、
事故に遭って入院中な鈴野サナのように
なってしまう可能性だってあるのだ。


正直言って……気乗りはしない。


その恐怖を振り払うためにも
カホは黙って目を閉じ、集中力を高めていた。


梓山 カホ
梓山 カホ
(……よし、調査開始!)


ようやく心の準備が整ったカホは
自分のスマホを手に取った。





    *****





 ―― “心霊ちゃん”



高校生を中心に流行している
カメラアプリの名称。

現在のところ課金要素はなく、
全てを無料で遊ぶことが可能だ。


人気の秘密は、
リアルな心霊写真風画像を
簡単に撮影&作成できることにある。

SNSに作成した画像をアップすることで
「いいね」がつきやすいという点も
最近の高校生には外せないポイントであり、

「#心霊ちゃん」でSNS検索をすると
アプリで撮影した心霊写真風画像が
大量に上がっているのを確認することができる。


梓山 カホ
梓山 カホ
(……とりあえずは
 アプリ自体について調べてみたけど

 おおまかなところは
 塚橋さんが言ってた通りだね)



昨日3人でで遊んだ際、
何もしらないカホのために
塚橋ユリエが “心霊ちゃん” について
分かりやすく解説してくれていた。

カホがスマホで検索してみたところ、
見つかる情報はほぼ
ユリエの解説に沿った内容ばかりだったのだ。


梓山 カホ
梓山 カホ
(……で、

 こっからが問題なんだよねぇ……)



アプリ自体は
たくさんの人に遊ばれているし、
決して危険性は無いように思える……

……ただし、M市を除いては・・・・・・・


 ――M市で撮れる幽霊には
   たまに本物が混じっているらしい

 ――色違いの赤いアイコンは、
   本物の幽霊の目印らしい

 ――本物の幽霊を撮影した者は
   幽霊に憑りつかれてしまうらしい


こんな感じの噂話が
カホ達が暮らすM市の高校生達の間で
まことしやかにささやかれているようだ。

【M市 心霊ちゃん】といった感じの
キーワードで検索をすれば、
噂話をまとめたサイトがいくつか見つかる。



ここでカホが1つ気づいた。

梓山 カホ
梓山 カホ
(……あれ?
 
 「幽霊を撮影した人・・・・・
  りつかれる」
 とネットに書かれてるけど

 鈴野さんは
 「幽霊と一緒に写った人・・・・・・・
  りつかれる」
 みたいに言ってなかったっけ……?)


「幽霊を撮影した人」と
「幽霊と一緒に写った人」とでは
全く意味が違ってくる。


そして昨日、
幽霊にりつかれたのは
「鈴野サナ(=幽霊を撮影した人)」
であり
「梓山カホ(=幽霊と一緒に写った人)」
ではなかった。


これらをふまえて考えると……

梓山 カホ
梓山 カホ
(……もしかして鈴野さん、
 噂話を勘違いしてたっぽい?)


撮影直後のサナの様子からして、
「幽霊と一緒に写った人が憑りつかれる」
と本気で信じていたことは
間違いないだろう、とカホは思う。


梓山 カホ
梓山 カホ
(うぅ……

 これ以上の情報は
 出てきそうなにないなぁ……)


サイトによって文面は違うものの、
書かれている内容はそこまで大きく変わらない。

梓山 カホ
梓山 カホ
(……こうなったら
 私も実際に
 アプリを使ってみるしかないか)



ネット検索ではこれ以上の収穫はなさそうだと
判断したカホは、スマホのブラウザを閉じ、
アプリ “心霊ちゃん” のダウンロードを開始。


梓山 カホ
梓山 カホ
(……あ、もう終わった)


ダウンロードもインストールも
あっけないほどすぐに完了し、
ホーム画面にアプリアイコンが追加される。


梓山 カホ
梓山 カホ
ふぅ……


カホはゆっくり呼吸を整えてから、
落ち着いて “心霊ちゃん” を起動した。



数秒の黒い画面を挟み、
見覚えのあるスタート画面に切り替わる。

点滅する「START」という文字をタップ。

今度は白黒のマップ画面が表示された。

梓山 カホ
梓山 カホ
(……さてと

 まずは問題の
 色違いのレア幽霊アイコンを
 発見しなきゃだね)


カホは
マップ上に浮かぶ幽霊アイコンを
ひとつひとつ確認し始めたのだった。





    *****





M市は全国的に見てもかなり広いほうだ。
生まれも育ちもM市であるカホでさえ
行ったことがない場所も市内に多く存在する。

だからひとくちに「M市」といっても
確認すべきエリアは非常に広大。


気合いたっぷりねばり強く
ひたすら画面をスクロールし続けていたカホだが、

半分以上氷が解け
アイスティーが薄くなってしまった頃には
さすがにちょっと……

……心が折れそうになってきた。


梓山 カホ
梓山 カホ
(……う~ん

 幽霊アイコン、
 白いのしか見当たらないや……)


スクロールをすれどもすれども、
色違いのレアアイコンは影も形も見当たらない。

黒と灰色のマップの上に存在するのは
ただただ白い通常版の幽霊アイコンのみ。


梓山 カホ
梓山 カホ
(「レア」っていうぐらいだし
 そんな簡単にひょいっと
 見つかるわけないよね……

 ……今日のとこは
 いったんあきらめようかなぁ……)


と、カホがアプリを終了しようとしたところ。



 ――シュッ




まるで吹き抜ける風のような音と共に、
突然マップ上に現れたのは、

なんと、真っ赤な幽霊アイコン・・・・・・・・・・だった。

梓山 カホ
梓山 カホ


何が起きたか
すぐには理解できなかったカホだったが……

梓山 カホ
梓山 カホ
え゛え゛え゛え゛ッ?!?!

……次の瞬間にはばっと立ち上がり、
力の限り叫んでいた。

客A
……
客B
……
客C
……
客D
……
店員
……

一瞬にして、
店内中から集まる視線・・

梓山 カホ
梓山 カホ
あ……


カフェ店内は比較的静かだった。

そんな中で目一杯絶叫したわけだから、
注目をあびてしまうのも当然といえるだろう。


声を発する者は誰もおらず、
穏やかなジャズBGMだけが場を支配し、
そして客も店員も含め全員が
店中央で立ちあがるカホに不審な目を向けている。


梓山 カホ
梓山 カホ
す、すいません……!


恥ずかしさで頭が真っ白になったカホは、
残ったアイスティーをぐっと一気に飲み干すと
慌てて会計を済ませ、
逃げるように店から出て行った。




    *****



梓山 カホ
梓山 カホ
……はぁ……はぁ……

あ~あ、恥ずかしかった……はぁ……


全力ダッシュで店から遠ざかったカホは、
完全にさっきのカフェが見えなくなったあたりで
止まってしゃがみこみ、息を整える。


梓山 カホ
梓山 カホ
……よし、もう大丈夫

そうだ!
レアアイコン!!


なんとか心を落ち着けたところで、
さっき発見したもののことを思い出したカホは、
急いでポケットからスマホを取り出す。

梓山 カホ
梓山 カホ
……よかった、
まだ消えてない!

“心霊ちゃん” のマップには、
先程の赤いレア幽霊アイコンが残っていた。

梓山 カホ
梓山 カホ
アイコンの場所は……



あれ?
結構近くかも?!
梓山 カホ
梓山 カホ
……


カホが怖くないかといえば嘘である。
というか怖い。

めちゃくちゃ怖い。


……だが、あれだけ探しても
レアアイコンはなかなか見つからなかったのだ。

この機会を逃せば、
次にいつ出会えるかは分からない。
もしかしたらもう2度と出会えないかもしれない。


梓山 カホ
梓山 カホ
……行くしか、ない!


少し迷ったカホだが、
レア幽霊アイコンが示す場所へと
行ってみることにしたのだった。