志麻side
LINEにて
ピコン
俺はグループ通話を開始した。
ほら、こんなに綺麗な顔したうらたさんが隣に写ってるやん。
坂田の声が少し泣きそうな声に変わった。
センラが坂田の口を塞ごうとしてるのが電話越しだかわかる。
坂田の言葉が一瞬詰まったが、次の一言を聞いて、俺の視界が真っ暗になった。
〜1年前〜
それから直ぐに、俺に睡魔が襲った。
ウトウトとし始めた時、リビングから何か壊れるような音がした。
寝室の戸を開けてリビングを見る。
一気に眠気が吹き飛んだ。
頭から血を流して倒れるうらたさん。そしてその上に馬乗りなってる黒ずくめの男。
男の手には、紫のバラが入っていた花瓶が握られていた。
うらたさんから離れた男は、ポケットからナイフを取り出して俺に近づく。
そしてそのナイフで俺の腕を切った。
男が俺にナイフを振り下ろすまさにその瞬間…
うらたさんが男に体当たりした。
うらたさんに庇われながら、俺はリビングから玄関までの逃亡を試みる。
が…
男のナイフが俺の背にかすった。
男の手に光るナイフを見て、俺はぎゅっと目をつぶった。
が、いつまでたっても、俺に痛みは現れなかった。
代わりに、いつも感じていた温もりが俺を包んでいた。
あぁ…もうダメだ。背中と腕が痛くて動けない。
俺の腕を男が掴んだ時…
ウ〜ウ〜
男が外へ出ていった。
そうだ…1年前の…あの夜…
うらたさんは…うらたさんは…!
嘘だ…嘘だ!!!!
だって、今日だって一緒にいて…話してた…綺麗な笑顔を俺に向けてくれてた…!!!!
苦しい…頭が…痛い…
意識が遠のいていく中、最後に聞いたのは…
ドア越しのうらたさんの声だった。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。