第9話

記憶の片隅に
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2020/04/10 21:02
記憶の片隅に


「僕とそらるさん」

「どこかで会ったことありませんか?」






「え、、、?」

まふがその話をするのは何回目なんだろう。
ずっと昔からその話は聞いてきた。

おれは、まふに昔あった覚えはない。

「そんなわけないだろ」

「いや、どこかで会ったと思うんです.....」

「何でそう思うんだよ」

「そらるさんを見てるとなんか、苦しくなります、、、昔、なにか約束したような気がして」


そう言われても俺は本当にまふにあった覚えなんてないから、どうすることも出来ない。


「あっ!ごめんなさいっ!」

「分からないのに、何回も聞いちゃって.....」

「んーん。こっちこそ、力になれなくてごめんな」

「すみません、、、本当」

「大丈夫だって。まふ」





色々悩んでいるうちにもう、8月。

まふと行く約束をしている夏祭りの日となった。

毎年、浴衣を着て2人で歩くのが俺たち。


「そらるさんっ!来ましたよ!」

「あっ!まふ!!浴衣変えたの?」

「えへへ!そうなんです!」

「かっこいいでしょ!?」

「自分で言わなきゃもっと、かっこよかったのに!w」

「も〜っ!!!」

めちゃくちゃかっこいいんだけど。
まふにこんなん来て欲しいなって思ってたやつだし。







「りんご飴!食べたいです!!」

「食べればいいじゃん。俺待ってるから〜」

なんだかんだ、めちゃくちゃ楽しんだ。

りんご飴も焼きそばも食べたし
射的もしたし、、、

悩み事なんて一瞬で忘れられた。

「はい!そらるさん」

「っ!冷たっ」

「うひひ!びっくりしました?」

「そりゃ、するよw」

まふが持ってきたのはサイダー。

花火が始まる前に買って少し先の山に登る。
すごく花火が綺麗に見える場所。
最近、2人で見つけた。


「今年も綺麗」

「あぁ。ほんとだな」

一言いってサイダーを一気に飲む。

炭酸がものすごく強いから喉がピリピリする


『あ、、!、、い、な、!』

ん?

「まふ、誰か喋んなかった?」

「え?ここには僕達しか居ないはずなんですけど、、、、」

「そっか、、、ごめん」

「いいえ。大丈夫です!」



残ったサイダーを飲んだ。

その瞬間、景色が歪んだ。

「そらるさんっ!!!」


あれ?まふまふが焦ってる?

もしかして俺、



倒れちゃった?










「っ!!」

「ここどこ?」

「なーんだ。祭りの会場か」

まふが運んで来てくれたのだろうか。
重いのに、、、


でも、様子がちょっとちがった。
なんというか、昔な感じ。

なんだろう。変に感じる。

「まふ探さなきゃ」

まふが居ないことに気づいた。
早く見つけなければ。


「まふまふー」

「どこなの〜」


ずっと呼んでるのに気づかない。
いつものまふならすぐに来てくれるんだけど



『どこいったのぉ、、、』

「は?」

目の前に子供がいた。小さい頃の俺が。

訳が分からない。ここはいつなんだ?
もしかして、タイムスリップ?
いやいや、そんな事はありえない、、、
過去に行けるはずないだろう、、、

『あっ!どうしたんですか?』

「えぇ?!」

そこには、まふがいた。

「なんだ!お前もいたのか〜」

まふに触れようとするとその手は、まふの体をすり抜けた。

「なんで?」

「俺の事、見えてないの?」

「な、なんで、、、」




『あのね、、、お母さんがどっか行っちゃったの、、、』

『!!そーなんですか!?』

『それは、大変ですね、、、僕も一緒に探します!!』

『ほんと!?ありがと!お兄ちゃん!!』


ん?これ、俺の過去?
こんな奴に出会ってたら覚えてるし。
でも、おれはこの頃の記憶が正直薄れている。思い出そうとすると頭が痛くなるから、アルバムとかも見れなかった。

『りんご飴とサイダーあげます!!』

『これで、元気だして?』

『お兄ちゃんいいの?』

『うん。いいですよ〜』

『うわぁ!!頂きます!!』

なんとも美味しそうに食べるな昔の俺。
って!!
それよりもまふに似たあいつは誰なんだ!?


『花火、見に行きませんか?』

『うんっ!!』

『ちょっと先に特等席があるんです!』

『何それ!行きたい!!』






『すごく、、、きれい、、、』

『でしょ?この前、たまたま見つけたんです』


ここは、俺たちが行く場所と全く同じだ。
もしかしておれは、むかしからこの場所を知っていた??



『そういえば、お兄ちゃん』

『なんですか?』

『お名前教えてください!』

『え?』

『お兄ちゃんのお名前!教えて!!』

『うん。いいよ。』

『まふまふです。』


やっぱり、まふじゃん。
でも、どうしてまふはここに居るのだろう。


『まふまふ??』

『はい』

『なんか、ふわふわしててかわいいね!』

『お兄ちゃんの髪の色にそっくりだ!』

『なんだか、雲みたい!!』


え、、、?

『ど、どうしたの!?お兄ちゃん』

『いやっ、、、!その』

泣いてるの?まふまふが?

『名前も髪も褒められたこと無くって』

『ありがとうございます。』

『君の名前は?おしえて?』

『ぼくは!そらる!!』

『そらるさん、ありがとう』

『ぼく、ほんとに幸せだよっ、、、』


胸がズキズキする。
あっちのまふが言うみたいに何かを
なにかを忘れている気がする。









『あっ!お母さん!!』

『見つかりましたか?よかった、、、』

『うんっ!ありがとう!まふにぃ!』

『まふにぃ?』

『うん!お兄ちゃんじゃなくて!まふにぃ!名前教えてもらったから!!』

『あはは!可愛いなぁ、、』

『ありがとう。そらるさん』

『それじゃぁね!まふにぃ!!』

『まって!!そらるさん!!!』

『なぁに?』

『僕のこと、覚えててくれる?』

『忘れないでくれる?』

『うん』

『わすれないよ』

『まふにぃのお願い事ななら、ぼく聞くよ!』





俺は、その先も見た。見てしまった。

交通事故で亡くなった。俺を庇って。
夏祭りから2週間後。


見たくなかった。まふが死んでいく姿を。

『ううっ!まふにいっ!!』

『あははっ、、、そらるさん泣いちゃダメですよ?』

『だって!!ちがでてるよぉっ』

『大丈夫ですから。大丈夫』

『そらるさん守って死ねるならぼくは、それでいいんです、、、』

『死ぬなんて!!死ぬなんて言わないで!』

『いなくならないでよっ、、、、』

『大丈夫。また会えます。』

『その時は、ぼくとっ、、』

『おんがっく、、や、っ、、、てく、だ、さいっ、』










辛すぎて忘れたの?
まふが消えていくのが辛くて、、、


















「そらるさんっ!!」

「んっ、、」

「まふにぃ?」

「まふにぃですよ?ってまふまふですって!!!」

「そらるさん大丈夫ですか!?」

あ。俺、戻ってこれたんだ。

「大丈夫だよっ、、まふにぃ、、、」

「ちょっ!そらるさんっ、、、」

俺はまた意識を失った。








「そらるさん?ねぇ、、」

「大丈夫なの?」


そらるさんがおかしいです。
まふにぃって誰!?

ぼく、まふまふなのに、、、

2回も気を失っているそらるさんなのです。
連れて帰りたいのですが、、、

服を離してくれません。
なので、動けないんです。

そらるさんが起きるまで待つしかないのかな

花火も終わっちゃったし。暇なんです。


「まふにぃって誰のことですか〜?」

「そらるさーん、起きてくださーい」

「そらるさんっ!!」

「聞いてます!?」

ほんとに起きない。やばい、、、


「、、、まふ?」

「そらるさん!!」

「ごめ、、倒れちゃった」

「大丈夫ですよ」

「何かあったんですか?」

「、、、」

「え、なんなんですかそれ!?教えてよ!!まふにぃって誰なんです?それを答えてください!!」




まふまふは、俺があの時の少年だと知っているのだろうか。

きっとあのまふの生まれ変わりが
俺の隣にいるまふまふ。

前世の記憶なんて持ってるはずないよな

「白髪のかっこいいやつの事だよ」

「へぇ、、、」

「なんか、その人羨ましいですね.....」

「え?」

「そらるさんにかっこいいなんて言われて」

お前のことを言ってんだけどな、、、
まぁ、気づかれなくていいや。

「まふまふ」

「はい?」

「ふわふわしててかわいいね」

「その名前」

「えっ?いやぁう、!そらるさ!?」

「どうしたのれすか?!きゅうに!」

「髪も。白が1番似合ってる。」

「この世界で1番」

「うぅ///」

「そらるさんのばかっ」

「そ、、、そんなこと言ったって何もいいものあげませんよ!?」

「大丈夫、大丈夫」

「お前が俺の隣にいてくれるだけで十分だから。」

「あぁっ!もう!!」

「すきです!」

「しってる」

「なっ!!」

「wwwばーか」

「俺もお前のこと、すきだよ」

「ね?まふにぃ」

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁ///////」


お前の言ってることは正しかったよ。
まふまふ












「これからもよろしくね。まふ」

「もうっ!何改まってんですか?」

「こちらこそ、よろしくお願いします!
そらるさん!!」


この日初めて俺たちは手を繋いだ。

また、まふを失わないために。
離さないように。






end




まだつきあってないんだぞ!

付き合うまでのお話はまた次回ぐらいに!

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