🎲side
苦しい程に抱き締められるのは、普段なら鬱陶しいと振り払うところだ。
否、そもそもコイツが抱き締めてくることがない。
俺の気持ちが伝わったなら、それで喜んで貰えるなら嬉しかった。
太陽の光が当たると金にも見える、太陽を透かすような髪色、少しところどころ痛むがするすると俺の指は毛先まで流れる。
「…ビー玉、取ってください。」
少し落ち着いたのか先よりもハッキリとした声でそう要求されれば、軽く返事をして幻太郎の頭を撫でてやりながら窓際に光るそれを取ってやる。
ついでにずっと立っていては疲れるから、幻太郎を巻き込みながら畳に座り込む。
やっと見えたその顔は、
驚きに目を見開いていたが
次には柔らかく、儚いほどの息をついて笑った。
俺がとったビー玉を幻太郎の手に乗せてやると、
窓から差し込む光に翳す
「綺麗なものは、食べてしまいたくなります」
「口に含んで、噛まないように」
「飲み込んで、体内に取り込んで」
「自分の一部として」
「それだけで、自分が浄化されたような心地になる」
そんな奇妙な言葉を吐くその姿は
酷く奇麗だった。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!