第2話

嘘 ー 壱
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2019/11/12 03:59
窓から差し込む光が
閉じられた瞼の上に降り注ぐ

眩しさを感じながらゆっくりと瞼を開けると
何も無い、いつもの朝。

小説の原稿が散らばった部屋。
所々に茶色く変色したそれが見える。

片付けなければいけない憂鬱に襲われながらも
重い腰をあげて散らかるそれらを雑にまとめ、
全てゴミ箱に放り投げた。


昨晩は彼が来なかった
野宿したのだろうか、奇抜な髪色をした彼の家へ行ったのだろうか

その辺の女でも捕まえて寝泊まりしたのか

そんなことを考えながら、2人分の食事を作り、
手を合わせ「いただきます」と呟くように挨拶してから
味噌汁を啜る。

無論自身の向かいには誰もいない

朝に彼が来ることは中々ないが、
前に何度かあったが故に
毎日2人分の食事を作っておけば
問題ないだろうと。

彼がいなければ味もそこまで感じないものを
よくも噛まずに流し込んでいく。

自分の食事を食べきる頃には向かいに置いてある
もう一人分の食事は冷めていて

彼が食べなければ意味が無い

捨てた。






そう言えばそろそろ締切だったか。

色味のない街中を窓越しに見詰めながら
そんなことを思い出した


また憂鬱なものが増えた

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