第11話

緊張
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2019/04/01 23:44
しんどい合宿も終わり今日から予選が始まる。

皆の緊張が伝わって私まで緊張してきたよー

私はベンチに怪我をした人のケアやストレッチをする係で入らせてもらう。スコア係は先輩がやってくれるから、少し安心してる。

こういう大会にはめっぽう弱かったなぁ。試合が始まるまでずっと、手が震えてたから震えを止めるのに必死だったなぁ。

ひとり思い出しながら震えだしてる手を止めようとする。

試合には出ないのになんだかいつもより震えが止まらない。

なんでだろ。私は試合に出ないのに。何をまだ、怖がってるの?

負けないよ。このチームなら。どこにだって!

そう念じても手の震えは一向に止まらない。


どんだけ頭に残ってるの。あの時の試合が
沢村栄純
沢村栄純
あなたー!!会場向かう前に受けてくれよー!!
あなた

待ってね!今行く!!

沢村くんは不思議そうな顔をして私に近づく
沢村栄純
沢村栄純
あなた震えてんじゃん!なーに緊張してんのー?俺のボールがそんなに怖いか!ワハハ!!
あなた

そ、そんなわけ!

沢村栄純
沢村栄純
大丈夫だって。俺ら負けねーから!
そう言って私の手を取り顔に持っていく。
手に力を込められ少し手に痛みがくる。
あなた

ちょっ、痛い

沢村栄純
沢村栄純
あ。ごめん。ちょっと力込めすぎた。俺も緊張してるから
今度は優しくなった沢村くんの手が私の手を包み込むように掴む。

手には豆だらけ。触っただけで分かる。長くて綺麗な指。ピッチャーの手だなって思う。
沢村栄純
沢村栄純
震え止まったな。
そう言って笑いかける沢村くん。

ドキンと胸が鳴る音がする。

こんな笑い方もするんだ
沢村栄純
沢村栄純
よォし。俺のボール受けてくれよー!!
あなた

うん!

御幸一也
御幸一也
俺じゃなくてあなたかぁ。
沢村栄純
沢村栄純
うわ!御幸先輩!降谷は!!
御幸一也
御幸一也
あいつは夏バテするからだーめ
あなた。こいつのボールどうだ?
あなた

はい。いつも以上にキレてると思います

御幸一也
御幸一也
あなたさ、ほんとに顔変わるよな、野球になると
あなた

そうですか?そんな意識したことないですけど

御幸一也
御幸一也
キャッチャーの顔になってる‪w
あなた

なんですかそれ‪!

沢村栄純
沢村栄純
投げてもいいすか??!!!
あなた

あ。忘れてた!

沢村栄純
沢村栄純
え。ひど!
あなた

あはは、

沢村栄純
沢村栄純
うわ!あなたが笑った!
そっちの方がひどいと思うけどね、私は。

でも、確かに声を出して本気で笑ったのはいつぶりだろう。入部して以来そんなに声を出して笑うことは無かったからなぁ。入部する前もだけど
片岡監督
片岡監督
移動するぞ!バスに乗り込め!
沢村栄純
沢村栄純
はい!ボス!!!
片岡監督
片岡監督
俺はボスじゃない
沢村栄純
沢村栄純
すみません!ボス!
片岡監督にこんなこと言えるの沢村くんだけだよ。
御幸一也
御幸一也
いこーぜ。甲子園をかけた1戦に
あなた

はい!お供します

御幸一也
御幸一也
俺は桃太郎か!‪w
小湊春市
小湊春市
栄純くん!!これ忘れてる!
沢村栄純
沢村栄純
春っち!!これ忘れたらダメなやつだ!助かったぞー!
あなた

なにそれ??

沢村くんの手元を見るとボールのようなものを持っていた。
沢村栄純
沢村栄純
いつも、ブルペンで投げるボール。決めてんだよなぁ。だから、それ持ってきた
あなた

そんなの決めてるんだ。マメだねー

バスに乗り込み、試合会場に向かう。

みんなの顔に緊張の色が見える。

もちろん私も緊張してるけどさっきの沢村くんの顔が頭から離れない。

試合前なのに!!皆で一丸となって戦わないといけないのに!

そんなこと思ってたらダメじゃん!

私は車酔いするタイプだから窓側に乗った。隣は春乃かなぁ。そう思ってたら隣に来たのは春乃じゃなくて沢村くんだった。
あなた

はるのは!?!

沢村栄純
沢村栄純
吉川か??あいつは車酔いするから前にいるぞ
吉川春乃
吉川春乃
ごめんねあなたちゃん!私どうしてもバスとか酔っちゃうの。私も隣がよかったんだけどね。ごめんね
あなた

全然いいんだよ

良くない良くない。

どうしてこのタイミングで沢村くんなの!?
あなた

御幸先輩と話さなくて良かったの?

沢村栄純
沢村栄純
俺と話すことは無いってノリ先輩と丹波さんと話してる
確かに話すことはないかもだけど!!
あなた

小湊くんは?

沢村栄純
沢村栄純
春っちは降谷と座ってる
沢村くんが不機嫌そうな顔をする。

なんか怒らせちゃった感じ??
あなた

ど、どうしたのその顔

沢村栄純
沢村栄純
何もないし
何もないわけないでしょその顔
あなた

うそじゃん、

沢村栄純
沢村栄純
うそじゃない
あなた

そう。じゃあ。いいや

沢村栄純
沢村栄純
俺が隣は嫌かよ!普段あんだけ喋ってたのに!!なんかショックです!!
あなた

そ、それは

なんて答えるのがいいの!?

緊張するとか言えないし!ましてやちょっと意識してるとかほんとに言えない!

どーしよどーしよ。
沢村栄純
沢村栄純
それは??
沢村くんは私に答えを求めてくる。

そんなに気になる!?ってぐらいに
小湊亮介
小湊亮介
沢村が隣だとバカがうつりそうだしねー
後ろからの助け舟に、ホッとため息をつく。

その手があったか!
あなた

そうですよねー

沢村栄純
沢村栄純
は!?ひど!!
小湊亮介
小湊亮介
でも、あなたはそれだけじゃないよねー
まさかの裏切り!?!!やばい、隣に座ってるだけでテンションがおかしくなってくるよ。
沢村栄純
沢村栄純
どーゆうことっすかー??
小湊亮介
小湊亮介
聞きたいー?
あなた

聞きたくないです

倉持洋一
倉持洋一
ひゃっは!!俺も聞きたいっすねニヤニヤ
あなた

ちょ!倉持先輩まで!!

沢村栄純
沢村栄純
みんな何でか知ってるんすか!!
やばいやばい、みんなが怖い!

そのうち沢村くんに気づかれそうだなぁ。

でも、気になるだけだし。ていうか頑張って欲しいだけだし!!!
片岡監督
片岡監督
立っているものは全員席につけ!出発するぞ。気持ちを引き締めて行くぞ!!!
はい!!!


一気にみんなが試合モードに変わる。

一流ってこーゆうことなのかな。切り替えがすごい早い。さっきまであんなに周りでごちゃごちゃしてたのに、今は隣の人と今日の試合について話してる。

沢村くんはボールを見つめてくるくる回したり感触を確かめたりしている。

真剣だ。

まだ試合は始まってないのに。
でも、もうみんなの中では始まってるんだ。


私も切り替えなきゃ。


ここにみんな野球をしに来てる。

そんな子の邪魔をしてはダメだ




あと2時間で試合が始まる。

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