ーーーーーーーーーーーーー北門にてーーーーーーーーーーーーー
ドタドタドタ
目を凝らしてみる。
すると…
走ってきたのはあなたの下の名前だった。
飛びつかれ、緊張のあまり、一瞬時間が止まった。
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こくはく
そう、俺が処方できない原因はここにもある。
それは"あなたの下の名前が少女漫画のような恋がしたい"と言っているからだ。
少女漫画のようにコイツを幸せにできるか自信はない。
だから告白して仲が気まずくなるのがいやなのだ。
言うかは迷った。
でも、ここで言わなければ俺は一生、恋煩いを治せないと思った。
俺は恥ずかしさで思考回路が停止し、岩石と化した。
デートだと浮かれていた自分の惨めさで話す言葉が出てこない。
すいたい
恋煩い処方の進展ではなく衰退した気分だ。
そう言いかけたとき、被せるようにあなたの下の名前が笑った。
そんな俺の言葉も聞かずにあなたの下の名前は俺の手をつかんだ。
こんな風にリードしてくれるあなたの下の名前はやっぱり俺の最高の薬だ。
"病気"を言うのはまただ先かもしんねぇけど、俺の気持ちが変わることはないだろう。
きゃしゃ
隣で歩くあなたの下の名前の華奢な体。
そして、俺の左手に包まれたあなたの下の名前の小さな手。
それは過去1の効果があったような気がした。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。