「 お兄さん私バイト始めたの 」
『 そうなの ? 』
「 嘘 」
『 何それ 』
「 私身長伸びた 」
『 良かったじゃん 』
「 嘘 」
『 何それ 』
「 私宝くじ当たった 」
『 俺にも分けて 』
「 それも嘘 」
『 なにそれ 』
「 私嘘吐き 」
『 知ってる 』
「 それも嘘 」
『 それは嘘だよ 』
「 それも嘘だね 」
そんな事言ってたら何が本当か分からなくなっちゃうよ。と頭を撫でるお兄さん。この世の物全てが嘘だったらどうする?『どうするかな』目に見えてる物が全て真実とは限らないんだよ。『ドラマの見過ぎだね』1+1は3なのかも知れないよ?『それは無いね』分からないさ、1+1は?『2』ぶっぶー。田んぼの田です。『面白くないね、残念』なーんだ、つまないの。『じゃあ俺の存在も嘘なのかもね』例えば?『あなたちゃんが作り出した架空の人物とか?』なーんてね、と私に向けられた視線を携帯に落とすお兄さん。
愛も嘘なのかも知れない、そう思ったら結婚なんて馬鹿馬鹿しい。知ってた?キリスト教では一口に愛と言っても四種類の愛があるんだって。でもその“ 愛 ”が存在せずにどこかの誰かが勝手に作った概念だとしたら逆に感動的だね。愛って歌や絵や物語が生まれたきっかけでもあるけどそれが全部作り物だったなら 、お兄さんはどう思う?
『 難しい質問だね 』
「 世界で一番優しい嘘だと思わない ? 」
『 優しいか ? 』
「 物凄くね 」
お兄さんが私へ向ける愛も嘘。全部嘘。お兄さんが作り上げたただの愛。それも愛に入るのかな?んー、やっぱり難しいね。だってお兄さんは奥さんを愛しているんだもの。私の事は少しも見てくれやしない。私はこんなにも染まって居るのに。とことん狡いね、お兄さんは。
「 お兄さんお兄さん 。」
『 なーに 。 』
「 私達に愛なんて存在するのかな? 」
『 急になーに 。』
「 偽りの愛とか? 」
『 俺達は “ 誰よりも強い愛 ” で結ばれてるよ 』
やっぱりお兄さんの愛は世界で一番優しい嘘だね。
………… ep .????
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。