第64話

48話
4,213
2020/02/02 08:40
莉犬side




『もう、さよならか……』


空っぽの家に向かってそう呟いた。

自然と目に涙がたまる。


『あれ?……たくさん、泣いたのにな……』

そう言って、1粒1粒こぼれ落ちる涙を拭いた。



今日で


大事な友達とも、

先生とも、




里美くんとも、


みんなともう会えなくなる。




いや、会えるけど…………会いたくないだけなのかもね



特に里美くんとは……



母『莉犬、そろそろ行くわよ』

荷物を入れ終わり、車に乗り込んだ母と父。



『……うん』


俺も乗ろうと、車のドアに手をかけた時だった。












里美『……莉犬っ!!』











『さ、里美くん……』




服も髪も乱れ、息を切らした里美くんが立っていた。


俺にとって1番会いたくない人。




『どうして……学校は?』


里美『…抜けてきた』



『抜けてきたって……』



里美くんは、俺の前にやってきて言った。



里美『莉犬、ちょっとだけ話せるか……?』


話すって……何を?

別れた今……何を話すわけ?


俺にとって忘れたいことなのに……




『ご、ごめ『莉犬?』』

母『……莉犬、何してるの?』


『か、母さん……』


すると、里美くんは、頭を下げて言った。



里美『あの……少しだけ……ほんの、少しだけっ……話させてくれませんか……?』


『か、勝手に何言って……!』



母『……いいわよ』

『か、母さん!?』


母『最後なんだし……いいわよ』



『…………。』





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『なんで、公園……?』


連れてこられたのは近くの公園。

ちょうど、時間は余ってたから遅れることはないけど…



里美『人いないし……2人になれるだろ?』



2人って……

別れたのになんでそういうこと言うの?



『……で、話ってなんなの?』



里美くんは、急に止まり、俺の顔を見た。






里美『莉犬……俺は、お前のこと好きだよ?』


『な、何言って……』



なんで今になって……

忘れたいのに…っ……!!


『言いたいことって……それだけ?』


冷たく返す俺に対して、里美くんは、

俺の小さな両手を握りしめて



里美『……莉犬は……俺の事……嫌いなの?』

心配そうに、悲しそうに言う里美くん。






『好きだよ……』


忘れたくても忘れられないほどに。

大好きだ。


人生の中で1番好きだよ


でもね



もう、無理なんだよ……



『……でもっ……もう、さよなら……なん、だよ……』


今日で、もうさよならだ。

辛い思いをしないために


別れたのに


なのに


なのにっ……





里美『遠くに行くことは、別れることなの……?』


『……えっ?』



里美『遠くに行ったら、別れないといけないの?』




『……それはっ……』




里美『莉犬……俺は、好きなのに……離れたら好きは消えちゃうの?』


『き、消えない……』




そう、別れても忘れられるわけがない。

特に、里美くんは



『俺……不安なんだよ』

里美『不安……?』



『触れられないのも……会えなくなったら里美くんは、





俺から離れちゃいそうで……』



゛不安 ゛で、仕方がないんだよ

俺を忘れるんじゃないかって


好きが消えちゃうんじゃないかって


信じているけど……

怖いんだよ





里美『莉犬っ…………!』

『さ、里美くん!?』


勢いよく抱きしめる里美くん。



里美『……付き合って……お願い、別れないで……

絶対に……不安にさせないから……』


『里美くん…』


泣き叫ぶ里美くん、

好きな人に泣かれると俺まで泣きそうだ。



『うん……付き合う……ずっと、好き……』


里美『莉犬っ……』



『離れても……ずっと……好きだから……』


俺は、安心させるかのように里美くんの背中を撫でた。




その時だった。







瑠雨『……莉犬っ!!』


『る、瑠雨くん!?』



公園の入口で叫ぶ瑠雨くん。

と、後ろにいる誅先輩。



瑠雨くんは、走って僕の前に来て


瑠雨『僕、莉犬が行っても……ずっと、親友ですから…!!!!』

そう言って、手を握る

『瑠雨くん……』


瑠雨『毎日、メールします……!電話もします……莉犬は、僕の大事な1番の友達ですから……!』


『うんっ……』



里美『俺も、毎日電話するし……休みの日には会いにいく……絶対に…必ず……』

力強く言う里美くん、俺は嬉しくて笑った


『……みんなのこと、忘れないから……ずっと……永遠に…』




そして、俺は、故郷を出た。


手には、携帯を握りしめる


画面にある




里美くんとの思い出の写真を見て。




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ハイ、遠距離恋愛……ですね

遠距離恋愛にしようか迷ったんですけど……

珍しいかなと思って、しました。


これからの遠距離恋愛にご期待をっ!!


(桃赤と黄青の話に橙紫がほとんど出なくてすみません……)
mano
mano
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