第58話

44話
4,437
2020/01/25 01:49
莉犬side





『ちょ、里美くんっ!!』


引っ張られる手首が痛くなってきた

それでも、里美くんは走り続ける


『どこ行くのっ!!』


里美くんは何も答えてくれない



そのまま階段を上がり

1つのドアを開けた


『なんで……屋上…?』


温かいこの時期、眩しい太陽が俺たちを照らす




里美『なぁ、莉犬……』

手首を離して、俺と向かい合う


『ん?』

里美『莉犬のお母さんとたまたま会って聞いたんだけどさ……』


お母さんと……?


『うん?』























里美『引っ越すって……どういうこと……?』



………………え?













『……バレちゃったか……』


そう言い、無理に作った笑顔を里美くんに向ける


里美『なんで、黙ってたんだよ……!!』


俺を抱きしめる里美くん

その体温が温かくて


好きが溢れて……




我慢していた涙が

次々に目から溢れてくる







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『ただいまぁ……』

元気よく言い、ドアを開けた俺


母『莉犬、来なさい……』


直ぐに母の声が聞こえた

玄関にはいつもこの時間なら仕事に行っている父の靴もあって、


只事ではないと思った俺は、カバンをその場に置いて、靴を急いで脱いだ



『父さんっ!』


父と母は、机の向かい同士に座っていた

電気もつけずに


窓から少しだけ差し込む光。


静寂したその空間


父『莉犬、おかえり……』

静かに言う父


『何があったの……?』

恐る恐る聞いた俺


母『実はね……』





父『引っ越すことになったんだ…』


……な、何言っているの?



『冗談……だよね?』



引っ越すって……

里美くんとはどうなっちゃうの?


もう会えないの……?



瑠雨くんとは?誅先輩や、なーくんやしえる先輩は?


母『福井に……引っ越すのよ……』

『福井……?』


父『仕事が転勤になったんだよ……』







『……嘘でしょ……』


全身の力が抜けて、その場に座り込んだ

涙が静かに零れ落ちてきて


母『莉犬……』


母がそっと泣いている俺の背中を撫でる



『俺……付き合っている人がいて……』

母『…………。』


『もう…会えないの……?』


母『…………。』



離れるなんて……

毎日のように見えていた顔も


大好きな声も



何もかもが近くで感じることが出来ないの?










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『母と父と話し合って、俺……引っ越すことに決めたんだよ……』

里美『莉犬……』


『だからさ……





……別れよう?』



里美『…………え?』


『別れれば、お互い悲しむことも寂しい思いなんてしなくていい』



里美『……でも、俺はっ!!』


『もう、明後日には引っ越すから……』


そう言って、抱きしめる里美くんを剥がした

里美くんの顔はショックを受けたような顔で


その顔を見るだけで

胸が苦しくなった


だから



















『じゃあね……!!』


そう一言だけ言って、

その場を去った





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次回か、

莉犬くん視点の話に



ご期待を!!!!
mano
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