あなたside
店を出て、とにかく走った。
早くこの場から離れたくて…。
「川西さん、好きでした。」
「ずっと前から好きでした。」
ほんまは川西さんに伝えたかった言葉、でも、伝えることができひんかった言葉。
こう思えば思う程、涙は止まらない。
気がつけば、家の近くの公園まで来ていた。
一人で、ブランコに座る。
ブランコをこぐのは、何年ぶりやろう…。
でも、冷たい風が火照った体に当たって気持ちよかった。
独り言を呟くと、知らない男二人が近づいてきた。
何この人達…。
そう言って、帰ろうとすると…
腕を掴んできた。
めっちゃ力強いし…。
そう言って男は笑って、腰に手を回してきた。
それでも、男二人の力には敵わなくて…
連れて行かれそうになる。
男が拳を振り上げる。
でも、その拳が私に落ちることはなかった。
顔を上げると、そこには
ゆずるさんがおった。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!